第2話 それって誰にでもあるよね!?

 今日は、ファミレスでママ友とランチの日。丸ちゃんと里美さんの3人で、チーズinハンバーグを食べながら、あーでもないこーでもないと話をしている。丸ちゃんと里美さんは、あずきが幼稚園の時に知り合ったママ友である。もうかれこれ10年くらいの付き合いになる。

 ふと、この前の前世の夢の事を思い出したので2人に話してみることにした。


 話終えると、丸ちゃんは「よくわからないけど、前世の記憶って思う方が面白い!」と言った。里美さんも「私もよくわかりません。霊感とか全くありませんし…。丸ちゃんの意見に賛成です」と控えめな感じである。


「まあ、そうだよね~」

「じゃあさ、人混みを歩いていてぶつかりそうになったから、すみませんと声を掛けようと振り返ったら誰も居なかったとかはよくあるよね?」


 2人は、揃って首を横に振った。


「え?よくある事じゃないの?」

「それなら、自分の前を誰かが通り過ぎて、危ないなと思って見たら誰も居なかったとかは?」


 2人は、苦笑いしながら首を横に振る。


「やっぱり、あずきママは霊感があるだよ」と丸ちゃんが真剣な顔をして言った。


「あるって言ってもねー。普通の人みたいに見えたのに居ないとか視界の隅に…って感じだよ?ハッキリ霊です!と認識できないからなぁ」と苦笑いで答える。


「普通は、それすらもないからね。ねー里美さん!」と丸ちゃんはますます真剣な顔で言う。


「そうなんだ。誰にでもあるんだと思ってたよ」

「…と言いつつ、2人もあるでしょ!?」と恐るおそる聞いてみた。


 しかし2人は、声を揃えて『ない』と言い切るのだ。


 マジか…。やっぱり、ちょっとだけ霊感があるんだ、私。中途半端すぎて何の役にも立たないけど…と考えていたら丸ちゃんが続けてこう言った。


「あずきママさ、はっきり見え過ぎてて区別がついてないだけじゃないの?見分け方がわかったら良いのにね」


「え!?まさかの霊感が強かったパターンですか!?そんな事あるかなぁ。丸ちゃん、それは流石にないんじゃ…」と、一応否定してみる。しかし、丸ちゃんに言われると不思議とそんな気になってくる。考えはじめると霊感が弱いのか強いのかよくわからなくなってくる。そもそも霊感ってなんだろう?霊が見えること?霊と話せること?そこに誰か居たような気がすること?どこからが霊感があるって事になるんだろう…?


 記憶を辿ってみる。自分で奇妙な体験だったなと記憶している思い出がいくつかある。例えば、祖父のお葬式の日の早朝にキッチンで祖父に会ったこと。祖父は、ダイニングテーブルの椅子に座り笑顔でこっちを見ているのだ。中学生だった私はびっくりして、手に持っていたタオルで顔を覆ってしまった。あまりの恐怖に声も出せなかった。勇気を振り絞り、おそるおそるタオルを取ると誰もおらずダイニングテーブルがあるだけだった。それから、日常的によくあることでは、明らかに人が近づいてきた音がして振り向いたら誰もいなかったこととか…。よく考えたら最近は、霊が見えるというよりは『音』に関しての不思議体験の方が増えてきたような気がする。

 それから、これはなんだろうと思っていることがある。心霊現象のテレビ番組をみていたり、霊の話をしていると、自分の視点が少し後ろにいくことである。まるで自分という器の奥に追いやられたような…。これを憑依というのだろうか?それでも霊や霊感のことは半信半疑だった。


 そして、この時の私は何もわかっていなかった。この先、思いもよらない出来事に巻き込まれることになろうとは…。

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