第4話 現実 or 死後?
ちょっとだけ!?変な出来事が起こったりしているけど、その度に私は『たまには、こんな事もあるよ』で済ましている。しかし、家の中では頻繁にドタバタという音が聞こえてくる。人間は大したもので慣れてくるのだ。音がしても『誰かいるね~』の一言で終わってしまう始末。ファブリーズが効いてたのかどうかは全くわからないままだが、あれからファブリーズを撒くのが定番になった。
そして、霊の仕業なのか、ただの偶然なのか、このタイミングでリビングのLED電球が寿命を迎えた。もう日が暮れそうな時間だったので急いで家電量販店に駆け込む。何故か、あずきもスマホ用のイヤホンを買いたいとかで珍しく着いてきた。
家電量販店に向う車の中であずきがぼそっと言った。
「LED電球って切れることあるんだね。まだ1年くらいしか経ってないよね!?」
「長く保つって聞いてたけど、そういう事もあるんじゃない?実際に点かなくなったんだし…」
「そうだね…」とあずきは何か言いたそうな顔をしていたけれど、見て見ぬ振りをした。
家電量販店では、それぞれ分かれて買い物をして30分くらいで合流した。
「急いで帰るよ!夕飯の準備もこれからだからね。のんびりしてたらパパが帰って来ちゃうよ」
「母、歩くの速すぎ!待って!」
あずきの声を後ろに聞いた次の瞬間、ガンっ!という音とともに動けなくなった。そして、またあずきの叫ぶ声が聞えた。
「え!?嘘でしょ!?母…」
一瞬で周りの空気が凍りついたのがわかった。しかし、次の瞬間、また空気が変わった。
「母…自動ドアに挟まるとかウケるんですけどー」とゲラゲラと大笑いしている。
自動ドアに挟まったと認識した時には、もう時既に遅しで、周りで見ていた人も笑いを堪えているのが手に取るようにわかった。自動ドアが肩に当たって、それまで無機質だった自動ドアが急に生命を得たように『ごめんなさい。人がいたんですね。すぐ開けますね』と言わんばかりに静かに開いた。恥ずかしさのあまり、何事もなかったように通り過ぎるしかなかった。そして、あずきは大笑いしながら後を着いてきた。
帰り道であずきはずっと笑っていた。それもそうだろう。人が自動ドアに挟まる瞬間を目の当たりにするなんて、人生で一度あるかないかの確率だろうから…。
「母、なんで挟まったの?」
「知らないよ!なんでセンサーが反応してくれなかったんだろう。挟まるとか恥ずかしすぎ!」
「母、人として認識してもらえなかったんだね」
「155cm小太りのハハがわからなかったとか…信じられないんだけど。こんなに存在感があるのに何でだろう…」
落ち込む私を尻目にあずきはずっとお腹を抱えて笑っている。
「あずき、ハハは生きてるよね!?実は存在してなかったとかないよね?何か変な感覚になってきちゃった」
「大丈夫だよ!ちゃんと生きてるよ。母が生きてなかったら私も幽霊じゃん」
「家族で亡くなったことに気が付かないで生活してるとか…ない…よ…ね?」
「変なこと言わないでよ!ちゃんと生きてます!」
ここ最近、変な事が続いていたけど、流石にコレは怪奇現象ではない…はず…。あずきの中では怪奇現象というより『オモシロ伝説』として記憶にインプットされたみたいだが…。しかし『生きている』と『死んでいる』の確認なんて本当に出来るのだろうか?死後の世界は誰も知らないのに…。死後の世界も現実と同じような世界だったら、死んだことに気が付かないで生活しちゃってるのでは?現実と死後の世界が交わりあった結果、自動ドアに挟まるという現象が起きていたとしたら?もしそれが現実だったら、死後の世界の私が自動ドアに認識されなかったのも説明がつきそうで不安が大きくなってくる。
だが、どちらの世界であってもそれを確かめる術はない。認識している世界を信じるしかないのだ。
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