第21話 苦悩2

「ねー、まーくん、奥さんといつ別れるの?」

「そのうちな…」

「そのうちっていつ?」


 こんな話をベットでするのが日常になってた。俺は何をしてるんだ。どうしたいんだ。浮気がバレたら離婚はできるかもしれないが、慰謝料を払わないとダメだろ?そんなのはイヤだ。あいつが浮気をしてくれれば、こっちが慰謝料を取れるのに…。

 こっちが何をしても献身的なのか病的なのか…俺に尽してくる。何なんだ…。

 好きはわかるが愛はわからない。愛ってなんだ?


「まーくん、愛してるよ」

「大好きだよ」

「またぁ。愛してるって言ってよ」


 そう言って頬を膨らませる彼女は可愛いと思う。だが…愛してるとはなんだ?わからないことは言えはない。あいつにも愛してると言ったことはないのに…。好きか嫌いかの方がわかりやすいのに…。


        ***


「おかえりなさい」

「毎日、毎日、玄関まで来て同じことを言うなよ!」

「あいさつは大事だよ…」

「鬱陶しいんだよ!」


「コートかけといて!」

「はい」


 なんでいつも笑ってるんだよ。怒れよ!泣けよ!くそっ!


        ***

「あずきの兄弟がそろそろ欲しいな…」

「そうね!」

「でもさ…子作りの為の行為はしたくないんだ」

「そう…」

「俺がしたいときにする」

「うん」

「それで良いよな?」

「…いいよ」


 テレビを観ながら、あいつの顔を見ることなく言った。どんな顔をしてたのかわからないが良いなら良いか…。


        ***

 あいつが浮気をしてくれれば慰謝料を取れてあずきも俺が引き取れるなぁ…。


「暗くなったら外出はするな!」

「食事は、5品以上作れ!」

「口ごたえするな!」

「俺が言ったことは全部守れ!」

「思い出は、何一つ忘れるな!」

「あずきの教育はちゃんとしろ!」

「習い事は、金がかかるからダメだ!」

「お前は、いつも体調が悪いというが、家事や育児をやらないで良い理由にはならない!」


「たくさんあるんだね」とお前は少し困った顔をしてたな。

「何かあったら言ってね。直すからね。頑張るね」と何事もなく笑顔で答えたっけ。


「じゃあ、もう一つ言うけどさ。その、最後に『ね』ってつけるの止めろ!鬱陶しい!」

「はい…ごめんなさい」


 どうせ俺がいないと困るのはあいつだもんな。仕事もしてなくて金も持ってないから出て行くこともないか…。

 ん?

 俺は、あいつと居たいのか?

 よくわからない…。浮気のこともバレてないようだし、今は、このままでいいか。

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