第20話 苦悩
「おい…誰と話してるんだ?」とパパが真っ青な顔をしながら言った。
「イヤだなぁ、パパ。あずきと話してるに決まってるじゃない」と笑顔で返した。
「パパって…。ウチは、父と母と呼ばせてるじゃないか?なんで急にパパなんだよ」
「ん?初めからパパはパパじゃない」
「ホントにどうしたんだ?離婚なんて言ったから嫌がらせでもしてるのか?」
「あずきが亡くなったら離婚っていう話?でも、あずきは生きてるから、その話はなしですよね?あずぎ、一人でお留守番ありがとうね」
(うん!一人でお留守番できた!スゴイ?)
「うん!スゴイよ。どんどんお姉さんになってるね」
「そこに…あずきがいるのか?」
「当たり前じゃない。パパって変なことばかり言ってるね」とあずきと2人で大笑いした。
「何を笑ってるんだ!止めろ!」
ドン!バン!バシッ!
「目を覚ませよ!そこにあずきはいないんだぞ!」
「何を言ってるの?優しいパパと可愛いあずき、私たち幸せな家族でしょ?」
「お、おい…痛くないのか?」
「痛い?何が?」
「何かバタバタしてて夕飯を食べ損なってましたね。すぐに作りますね。あずきも待っててね」
「離婚の話はなしで良いから、そんな嫌がらせは止めてくれ!」
***
「どうしたら良いんだ。あいつを病院へ連れて行くか?でも何ていうんだ?死んだ娘と話をしているなんて医者が信じるのか?」
「俺が何をしたっていうんだ。離婚どころか一生、頭のおかしい嫁と一緒に暮らさなければいけないのか?」
ピコン!とLINEの通知が来た。
〈まーくん、愛してる。今から会いたいなぁ〉
「くっそー、こんな時に…」
〈愛してる。今日はバタバタしてるからまた今度にしよう〉
〈え〜!やだ!今会いたい〉
〈ごめん。子どもが亡くなったんだ。でも、妻が生きてるって言い張ってて大変なんだ。落ち着いたら連絡するから…〉
「パパ、誰から?」
「仕事の連絡だった」
「そう…」
「あずきー、ご飯できたから運ぶのを手伝って〜」
(はは、今おえかきしてるから、お手伝いできない)
「じゃあ、今度手伝ってね。みんなでご飯を食べましょう」
「三人で食卓を囲むなんて久しぶりだね!パパと食べられて楽しいね」
(うん!パパ、今日はお仕事早く終わったの?)
「……」
「パパ?あずきが、お仕事早く終わったの?って聞いてるよ?」
「あー、そうだ。早く終わったんだ」
***
元はといえば、あついがちゃんと妻と母親の仕事をしないからいけないんだ。口を開けば体調が悪いとか言い訳ばかりで、何もしないから俺がこんなに苦労してるんじゃないか!
言葉づかいもなってないし、直せと言っても、何一つ直らない。
だから、俺の幸せを外に求めたのは当然のことだった。
子どもが居なくなれば離婚しやすくなると思ったのに何なんだよ。やっと幸せを手に入れられる所だったのに…。
あいつ、演技してるのか?ホントに見えてるのか?どちらにしても俺に対する当てつけなんだろな…。
嫌がらせを受けていると言えば離婚ができなくもないか…。早く離婚してやる!こんな生活はまっぴらだ!
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