第25話 退院

 意識が回復してから順調に体力も回復し、今日無事に退院してきた。独り暮らしのアパートは、とても広く感じた。私が意識を失ってからキナコの世話を母がしててくれたようだ。すっかり仲良しになっていた。


「無事に退院できて良かったよ」

「何から何までお世話になりました。ありがとう」

「また夜にお父さんと来るよ!今日は、一緒に夕飯を食べよう!」

「うん」


 病院から帰ってきただけなのに疲れたなぁ。少し横になろう…。そう思ってウトウトしかけたら…。


(退院おめでとう!)とたくさんの人の声がした。びっくりして飛び起きると、祖父とあずき、小さな女の子とあの時の女性が立っていた。

(母、元気になって良かったね!)

(よかったねぇ)

(無事でなにより…)

(退院おめでとうございます。あなたが無事で安心しました)


「みんな、ありがとう!」


(今日は、みんなでパーティーだね!)とあずきがはしゃいでいる。それを見たキナコがニャーと返事をした。

 そして、女性が話しかけてきた。


(ご挨拶が遅くなりました。はじめまして、私、リカと申します。実は、あなたに会って欲しい人がいるんです。)


「そう言えば、ずっとそう仰っていましたね。何故ですか?私がその人にあって何をすれば良いんですか?」


(説明しなくても、きっと会えばわかりますよ。それ…)と私の右手を指した。


「何これ!?」

 私の右手の小指に赤い糸が巻き付いていた。だが、数十センチで切れていた。


(いわゆる、運命の赤い糸です)


「そういうのって精神論じゃないの?それに私のは切れてるし…」


(今は見えていないだけなんです。私は、その糸を辿ってここまで来ました。最初は、いろいろショックでしたけど…ある人に幸せになってもらいたくて…。糸を辿ってきたら、あなたは生命を狙われてるし、事故で生命を落としそうになる事が度々あるし…。あなたを守るのも大変でした…)


「うんうん…わかる。私も早く死ぬ運命な気がしてたのに、その度に助かってきて、何かの力で生かされてるなぁ…とは思っていたんですけど、あなたにご迷惑をおかけしていたとは申し訳ございません」


(いえいえ…。それでなんですけど、このチャットアプリにその人がいます。出会ってあげてください)と言って消えてしまった。


 両親が来るまで、まだ時間がたっぷりあったので、言われたとおりのチャットアプリをインストールしてみた。

 プロフィール登録をして、つぶやき部屋を覗いてみた。先生に怒られたとか彼氏募集中とか不倫しませんかとか…今だけお話ししてくださいとか…何かつぶやきたいことを呟いている部屋のようだった。

 その他、趣味の部屋とか討論の部屋とか…いろんな部屋を覗いて、またつぶやき部屋を何となく見ていた。


 そこに、食べたい物を呟いてる人がいた。

 〈たけのこの里〉

 〈きのこの山〉

 〈コアラのマーチ〉

チョコ好きの私は思わず

〈アルフォートも美味しいですよね〉とコメントをしていた。

 その日は、チョコレートの話で花が咲いて、久しぶりに楽しかった。

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