第11話 霊力?宇宙力?魔法!?
「あー疲れた。ちょっと遅くなっちゃったなぁ。でも、お腹も減ったし、コンビニに寄って帰ろう」
そう言って、少し寄り道をすることにした。仕事帰りにコンビニスイーツをチェックするのが日課で、それがストレス発散になっていた。今日も新しいスイーツを見つけて、1人でこっそり食べるつもりである。ウキウキしながら、原付バイクで帰路についた。
住宅街で平日の昼間ということもあり、他に走っている車はなく、真っ直ぐな道をストレスなく進んでいく。信号のない交差点を3つ通過して、信号のある交差点に来た。ちょうど赤信号に変わり、停止線で止まった。頭の中は、さっき買ったスイーツの事でいっぱいだった。早く食べたくて、青信号が待ち遠しかった。
ようやく、赤信号から青信号に変わり、原付バイクのスロットルを回すのと同時に瞬きをした。
目を閉じて開いた瞬間、スロットルを回して前進しようとしたが、慌ててスロットルを戻した。
なぜなら、瞬きをする前の景色と瞬きをした後の景色が全く違ったからだ。自分の記憶では、信号待ちの為、停止線の1番前で停止していたはずなのだ。しかし、
あれ?っと思った瞬間、さっきまで信号待ちをしていた交差点に猛スピードで走ってきた車が信号無視をして通り過ぎていった。頭が混乱していたが、信号から普通に前進していたら、確実にぶつかっていたことだけは直感的に認識できた。あのスピードで跳ねられていたら、きっと即死だった。そう思うとゾッとした。
寝起きのようなぼんやりとした視界が少しずつはっきりしてくる。ここで何分止まっていたのだろうか?頭も気持ちも整理がつかない。
私は、原付バイクごと瞬間移動したのか?それとも、ここでずっと停止していたのか?
いや、それよりも今日で寿命を終えるところだったが『生かされた』?
そう、生かされたのだ。助かったというよりも生かされたという感覚の方が強く働いた。何の力が働いた?瞬間移動って現実にあるの?いや、記憶上では、確実に瞬間移動だった。だか、そんな摩訶不思議なことがあるのだろうか?でも、どうやって?魔法?それとも記憶操作?物質移動?宇宙的な力か何か?これは、何なの?自分でも何が起こったのか理解が出来ない…。そして、何の為に生かされたのだろう?
混乱と混乱でパニック寸前である。
すると、後ろから下校中の中学生が何人か歩いてきたのがバックミラー越しに見えた。友達同士で楽しそうに会話をしている。その声でハッと我に返った。停止線のない場所でガッツリ停止している自分が急に恥ずかしくなってきた。何事もなかったように、ゆっくりとスロットルを回して原付バイクを前進させた。
信号は、ちょうど青信号でそのまま通過できた。いつもより慎重に運転をして帰った。
家に無事に着いたが、頭と気持ちは混乱したままである。出窓で気持ち良さそうに寝ているキナコにさっきの話をしてみたが、ぐっすり寝ていて反応がなかった。
だよね…。キナコが瞬間移動させて命を救う、なんて事ができる訳がない。そう思った時、視界の片隅に黒いスーツの人影が映った。びっくりして振り返ったが、誰も居なかった。リビングは、結界の中だ。その中に現れるということは、悪いものではない…と言うことだろうか?黒いスーツの人…何処かで会った事があるような…ないようなと、記憶を辿ろうとした時、あずきが学校から帰ってきた。もう、一人では抱えきれない状況だったので、パパの事と今日の出来事をあずきに話をした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます