主従懲罰者 2
いっそ逃げるか?
いや。逃げてはだめだ。
戦っているからこそ、今も対等にある。
―――逃げると、もしも心に決めてしまったならその瞬間から、それは戦闘とは狩りへと姿を変え、俺たちは追われる側となる。
命のやりとりに置いて、撤退とは即ち敗北を意味する。敗北してなお五体満足で帰る可能性は、限りなく低くなってしまうだろう。
ならば、どうやって戦い、どうすれば勝てる。
頭を使え。
俺たちは契約を破り、シャルロッテと契約を結ぶというヴォルターはさらにギフトによって力を増した。
俺とレイムがともに戦い、ひとつの力とするように、形は違えどもやつらも共に戦っているのだ。
……ということはそうか、綻びが生じるなら同じところ、か。
あるじゃないか。
たったひとつ、勝ち筋が…。
それも邪道中の邪道。俺たちが忌避するやり方だが、しかし、最も効果的だと言えるだろう。
「レイム。……やるしかない」
その勝ち筋を言葉で伝えることはできない。
ただ、レイムも同じ答えに辿り着き、決断してくれると祈るのみだ。
ヴォルターは剣を構え、跳んだ。
「レイム! 下がれぇっ!」
まるで消えたかと思ってしまうほどの超高速の攻撃は、怒涛の勢いでレイムへと向かう。
レイムは後ろへと跳ね、その間になんとか、本当にぎりぎりのところでギフトを発動させ、盾を作り出し間に割って入ることによってレイムを護る。
「ッ!」
受け止めた攻撃は、とても軽かった。
いや、その表現は正しくはない。実際にはまったく受け止められてなどいないかった。
まるでバターに熱いナイフを押し付けたかのように、俺の盾は容易く十字に切り裂かれる。
あと一度でもあの細剣を振られてしまえば俺は死ぬ。
だが、その窮地を救ったのは背後にいるレイムだった。
「くらええっ!」
レイムが魔法を唱えると、あたりの炎が掌のように型取り、ヴォルターを叩きつけた。
続けて、レイムが発動させたのは風の魔法。
あたりの炎を巻き込み、床や天井などを巻き込み、歪な形に抉り取りながら襲いかかる。
危うく俺も巻き込んでしまいそうな攻撃でひやりとしたが、そこはしっかりとコントロールしてくれている。
が、これだけの攻撃であるにも関わらず、俺の前に立つ男にはただひとつの傷もつけられてはいない。
荒れ狂う暴風でさえ、まるで何事もなかったかのように振るった剣で掻き消してしまった。
まるでその姿は化物だ。
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