火種を擦る

「下準備は整ったわ」



先ほどまで大広間から離れていたレイムがふらりと戻ってきた。



「そうか」



彼女の言葉に俺は一言だけ返し、ぼんやりと大広間に集まる貴族たちを眺めていた。



本当に、様々なところから集まっている。



レイムと旅をしている上で、彼らの名を聞き、または姿を見た。



東方の豪商に、砂漠地帯の領主。北方の軍政官に南方の思想家など、貴族としての肩書きは様々だ。



だが、彼らにはひとつ、共通点が存在する。



それは知識があり”冴えている”ということだ。



転生者ではないからと言って侮れないまごうことなき事実。



彼らの眼前で、間抜けにもだれかを殺せば、当たり前のように捉えられ、極刑も免れないだろう。



「やりにくいな」



と、俺は思わず小言を漏らす。



それにレイムは特に反応はせずに、懐に隠した短刀を握っていた。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る