火種を擦る 3


「あの少女がシャルロッテ。……あの年齢でこれほどの富を築くとは」



 俺が言うと、レイムは



「怪しいけど、やっぱり直接確かめるのがいちばんだね」



 といった。



 会場では主催者への驚きと、出品されている物への欲望。そして大金を使うときに感じる独特の興奮が渦巻くなかオークションは始まり、進行されていく。



 時間が流れるにつれ、次第に100万シリング、200万シリングははした金。



 まるでそう言わんばかりの大金が何度も動き、会場の興奮は極まっていく。



 100万シリングもあれば下手したら家を持つことも出来るのではないか。それほどの額だ。



 俺とレイムはゆっくりと、大広間の奥の方、壇上にいるシャルロッテの近くへと、ある程度向かっていた。



 あまり寄りすぎず、かといって遠すぎない。



 そんな位置へと。



 自然に、ごく自然に動き、オークションに釘付けの貴族たちに訝しまれることのないように。



そうして理想の位置へとたどり着いた瞬間であった。



―――火種は弾ける。



「う、うあがあっあぎぎぎああががあああッッ!!!!」



 オークションがさらに盛り上がり見せようとするその時、突如、あたりにまるで喉を引き裂くかのようなけたたましい叫び声が響いた。



 ある者は驚き、ある者は不審に思い、ある者は騒々しいと怒り、皆、同じ方へと向く。

 


 その声の方を見れば、肩を異様なまでにがたがた震わせながらイースが叫んでいるのがわかった。



 俺とレイムは目を合わせ、他には悟られないようにちいさく合図を交わす。



 イースは血走った目でシャルロッテをじいっと睨みつけ、そのまま魔法を放った。



「っふ…はぁぁ…い…がっ、や…ぐっがあああああ!」



 その魔法は、到底彼の魔力では発生させられないほどの炎となり、シャルロッテを襲う。



「っ!」



 表情を強張らせるシャルロッテを俺は、彼女の身が焼かれる、ただそのまで傍観していた。



 その炎は寸でのところまで進み、シャルロッテは避けることも、魔法を打ち消すこともせずに、動くことのない彼女を前に、俺は駆け出した。


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