主従懲罰者 3
「……どうしてそれほどの力がありながらその少女に従う?」
「どうして、だと。この世界に来て、何一つ分からぬまま魔物に襲われていたこの私を幼いお嬢様は命をかけて私を助けてくれた。ただそれだけで私には仕える恩があるッ!」
そう言ってヴォルターは細剣を横に薙ぐ。
なるほど。
そうか、それが、その出逢いこそがシュペーテ家の隆盛のきっかけか。
だがそのせいで、突如現れたこの男のせいで、本来はただの冒険者であるはずのシャルロッテは財宝を集め、莫大な富を築き上げた。
しかしそれは、本来この世界に起こり得なかった事だ。
他の者が手にしたはずの富を、独占する。
それを許していいはずがない。
そうして、およそ十数回ほど、ヴォルターによる攻撃を凌いだときであった。
奴の放つプレッシャーと、もう僅かにでも圧されれば崩れ去る攻防の均衡が、俺の身体に異様な疲労感をもたらしていた。
それはレイムも同じようで、ぼたぼたと大粒の汗を流している。
状況は、一見するとほとんど変わらない。俺たちの圧倒的な劣勢。
しかし、ここが最大の好機であり、もはや光明は他には見えない。
ヴォルターは剣を突き出し、俺へと飛びかかる。
風を斬り、炎を薙ぎ倒し俺へと向かう、まともに食らえば致死の剣だ。
ただ俺はそれを横へ思い切り飛び込み、避ける。
次のことなど、まったく考えない、ただ少しでも離れるため全力で避けた。
転生の女神は世界を汚す。たとえたった一人になろうとも、理想郷を取り戻すため叛逆の狼煙を上げ続けよう。 おはよう計画 @ohayoukeikaku
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