緩やかな歩み
話は戻り、俺は目の前の集められた冒険者たちに問いかけた。
「ところで、シュペーテ家令嬢シャルロッテを見かけた奴はいるか」
俺の言葉に一同は首を横に振った。
しかし。
「お嬢様に……何か御用がおありで?」
と、先ほどまでの温和な声色を一変させ、突き刺すようにヴォルターは言う。
その気迫に、俺でさえ僅かに背筋に冷たいものを感じた。
「いや、特に深い意味はない。ただ名家シュペーテの令嬢がどのような方なのか…知りたかっただけだ」
「……そういうことなら、オークションの時には警備の最中とはいえそのお姿にかなえるでしょう」
重い声色をで言い残し、彼は俺たちのいる大部屋から出て行った。
それからいくらかの間を開けて、
「怖い人〜〜」
とレイムが俺を茶化す。
「しかし、どうなんだろうな」
と俺は周りにいる冒険者には悟られないように、レイムに話す。
「もう、”あれ”をやってもいいけど」
と、レイムは言うが、それはあまりにもリスクが高い提案であった。
転生者が至近にいれば確実に見つけ出すことは、彼女にはできる。
しかしそれは、あまりに目立つ。
そのため、ここでやってしまえば目撃者全て皆殺しにしなくてはならない。
死人に口なし、ある意味では1番楽ではあるが、俺たちは自らを悪と解りながらも、
理想のために殺しをやる。
つまるところ、この世界の出自者をやたらに殺すようではただの快楽殺人にしかならないのだ。
俺たちはそうではない。
「なに、時は来る。今はただ待てばいい」
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