熱下血戦 4
ギフトというのは、不思議なもので、それはリーティアの遊び心なのかもしれないが、超常の力を引き出せるものには、たとえばレイムの<<ソウルサーチ>>のように何か対価を要求するものが多い。
もしも、ギフトの使用に対価を要求されているのであるとするならば、その対価を支払えなくするなど、やつにつけ入る隙はそこにあるといえる。
俺はひび割れた剣を捨て、ギフトによって新たな剣を作り出し、備える。
今度はより強固に、幾重にも鋼をいい鍛えたブロードソードだ。重さこそ増えたがこれならばあの細剣に押し負けるということはないはずだ。
「うおおおッ!」
レイムが雷撃を放ち、それに合わせてヴォルターへと斬りかかる。そして同時に彼も剣を振るい、それは一進一退の撃ち合いとなる。
レイムからの援護があって、やっと互角。
生死を賭けた極限の集中の中でも頬に汗が流れるのがわかる。
戦いにおいて、疲労とはそれほど勝敗を握るものではない。なぜならそれとは比べ物にならないほど重要な要素があるからだ。
それは痛み。
痛みというのは身体を硬直させ、そして戦意を奪い、その程度によっては恐怖を産み植え付ける。
どれだけ浅くてもいい。
奴にひとつ傷をつける。
そのために俺は幾度となく剣を振るい、レイムは魔法を操った。
難しいことでは、ないはずだ。
しかし、届かない。
刃も魔法も。
それどころか二人掛かりというのに、幾度かの受け攻めを経て俺たちが僅かに劣勢と押されつつある。
この男と俺たちの間にそれほどまでに力量に差があるというのか。
奴のギフトの隙をつかねば…このままではいずれ…。
……どうにか、二人掛かりの利点を活かし…。
……二人掛かりで……。
……二人。
……。
……!
いや、まさか。もしかすると、やつは一人というのは、そうではないのかもしれない。そう思い込んでいただけで、実際は違うのかもしれない。
たしかに、俺とレイムは二人でヴォルターと相対している。
しかし、この空間に、まだひとりいるではないか。
家が焼かれ、自らも炎に包まれようとしている今もなお、表情ひとつ崩すことなく凛として闘いの行く末を見ている者が。
初めは、ヴォルターへの信頼から逃げ出すことがなかったのかと思っていたが、まさか。
……ならば、考えつくのはふたつ。
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