ギルド管轄区域
同じメルロディンとはいえギルド管轄区域では、他の区域と比べてかなり人通りは少ない。
基本的に政庁層であるこの地域には余程のことがない限りこの街の住民の大多数である商人たちは訪れない。
そんなギルド管轄区域に多く見えるのは、赤を基調とし金糸をあつらえた鎧を着けるギルド直属の騎士、ギルドナイト。
彼らは、教会や各街に雇われた騎士たちの中から名を挙げた者のみからスカウトされた選りすぐりの者たちだ。
そんなギルドナイトが監視の目を光らせるギルド管轄区域内である場所のみが、一定の賑わいを見せている。その場所の名前はギルドハウス。
俺たちのような旅人や、職を持たないアウトローが食い扶持を稼ぐために、ギルドハウスのすぐ前にあるギルドリーヴの張り出される掲示板に群がっていた。
この掲示板にはいくつもの木板が乱雑に打ち付けてある。
「何か良さそうなもの、あるか?」
木板にはそれぞれ、さまざまな依頼が書き込まれており、それを大抵はギルドを通した民間からの依頼であり、それをギルドリーヴという。
俺の反対側から目を通しているレイムに、手早く稼げるものはないかと問い掛けるも、彼女は首を横に振っている。
「まぁ、おいしいものはだれかがやっちゃうよね…」
このギルドリーヴというものは、受注性ではない。つまり張り出されていればだれにでも達成するチャンスはあるということになる。
納品依頼などであれば、依頼物を偶然持っていたとすれば、他の者と比べてどれだけ遅れていても、ギルドリーヴを達成し報酬を受け取れる。
が、逆にいざ挑もうとするときに、達成報告をする者とすれ違い無駄足に終わることもある。
いわば
依頼書には張り出された日時も書かれており、報酬のいい物があったからといって、あまりに時刻が経過している物に挑んでは徒労に終わる可能性が高い。
そういった点を加味して、おいしいギルドリーヴを探していくが、今日はどうもハズレのようだ。
そんななか、
「……おや」
俺はある依頼書を目に止めた。
それは報酬も依頼内容も、いたって普通で、むしろ拘束時間でみれば長めで普段なら受けようなどとは思わないもの。
しかし、今回に限ってのみそうではなかった。
俺の視線に気づいたらしいレイムも、同じ依頼書を眺めていた。
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