契約 3

「さて、それでは早速。現在あなた方と同じように契約させていただいたほかに冒険者の方が6名、この屋敷の大部屋にお泊まりになられ、すでにオークションの警護に関する準備をされています」



「へぇ…、それなりに集まっているのね」



「ええ。ありがたいことに。その方たちへの紹介を含め、このまま大部屋へと案内させていただきます」



 ヴォルターは立ち上がり、俺たちを連れて部屋を出る。



 この部屋に来るまでに通った経路を戻るような形で、彼に連れられて、その大部屋へと辿り着く。



 警護をする俺たちにさえ、館の構造を最低限しかわからないようにするヴォルターの警戒心は並外れていると言える。



 その警戒心は、オークション自体から来るものか。それともシュペーテ家令嬢の身を案じてなのか。



 どちらにせよ、シャルロッテという少女がリーティアにより転生していることは、この建物が物言わずとも語っている。



 この世界のあるがままを維持するためには、殺さなくてはならない。



 そのためにはこのヴォルターの、警戒心が妨げになる。



 さて、俺たちは案内された部屋に入る。



 そこには6人の男女がいる。それぞれの装いを見るに皆、冒険者であろう。



 冒険者、というのはその大抵が一癖も二癖もある人物が多いがここにいる者に限っては、形式ばかりのものに感じたヴォルターの面接が機能しているのかは不明だが、どうやら気さくで有り体に言えば話しやすい人といったところだろうか。



 彼らは俺たちに名前とギルドランクを述べてきた。



 彼らは皆Cランク、Dランクの冒険者であり、ひとりはBランク冒険者であったが、その立ち方、仕草を見れば、Bランクの者を除けば到底目的の支障になるほどの実力者だとは思えなかった。


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