第16話 2000/10  <河合隼雄のカウンセリング講座>


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[座 読書]




<河合隼雄のカウンセリング講座>


創元社 2000/8


さて、著者は有名な心理学者であり、ユングに師事された方でもあります。

この本は講演の内容をまとめたものでありますから、難解なところもなく

とても読みやすい、口当たりのいい本です。


内容は、日本的な環境の西洋との対比、宗教的背景、カウンセリングの心得、

また実情、行動療法との相違、などについての講演です。



<場>

河合教授はこのように述べておられます。

日本では、「場」が力を持っている、リーダーを言えども、

強制的に物事を進行させることは出来ない。

例えば、酒宴などで、さあお酒、というときに一番偉い人に聞きますね、

「日本酒ですか、ビールですか?」

こんな時、普通のリーダーは周りの顔色、みながら

「お酒...いや、ビールかな?」

と様子を伺います。


これがまあ、日本的な「場」であって、その「場」

自体が強制力を持つ、という事で、

外国ではこうではなく、それぞれに主張しあって決める、と。


ところが、日本ではこのところ西洋の「民主主義」が入ってきて、

この「場」と対立している。

自分は主張していても、どこか周囲から支持されないと不安だ、とか。

これはやっぱり、今までの「場」のパターンが体に染み付いているから、と言えますね。


議論とか、インターネットでも掲示板とかでも、ある意見を述べる。

そうすると、反対意見を持つ人が、主張するのではなく、「傷つけられた」と怒る。

配慮を要求したりする、無言のうちに。

感情的になって、「場」に同意を求め、それは大抵圧力につながる。

これじゃぁ議論は出来ない、のですね。



まあ、ちょっと脱線しましたが、この「場」がいじめにつながりやすいわけでして。

正しく主張をしても、「場」が受け入れない。

そうすると、その案は使えないわけですね。


だから、周りが全部いい加減で、正しい意見を受け入れない、とすれば....

最近のバンダリズムのようになるわけです。

ですから、彼らは日本的な集団である、ともいえますね。



その「場」の使い方などを見ていると、あたかも官僚の閣僚いびりにも似て。

青島前都知事が骨抜きにされた経緯のようにも見えてくる(のは考えすぎかな?)



ですから、この「場」のある限り、「父権」などと言っても

全体の雰囲気が変わらなくては無意味だ、という事になりますね。

かつては、この「場」は、正義という意味合い、共存というイメージを持っていました。

それがいつ頃からか、「利己」「排他」というイメージを持ち始めたので

現在の世相が生まれた、と、この「場」からはそう言う事ができますね。


----------[以下、次号へ続く]---------------------------------


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項 バンダリズム考 その 48



?Dネオテニー現象との関連性?





さて、前々回からの流れで申しますと、現在の情報の過密状態は

ヒトの代謝機能の限界を越えていることになります。


その理由としては、先に述べた通り、8時間のVDT作業の後、

8時間の睡眠では血中の乳酸値が作業前の状態に戻らない

という事実などが挙げられ、本来のヒトの情報処理能力を超えている場合

疲労感、ストレスなどに晒されやすいということが言えそうです。


まあ、平たく言いますと、脳という臓器は糖代謝のみでエネルギを得ており、

その代謝機能が満足でない、ということになるわけです。


また、前回の流れで言いますと、ヒトの持つ知的好奇心は

無尽蔵とも言えるインターネット・コンテンツなどを前に際限無く

こうした疲労状態を続けるという可能性が高い、わけですね。


さて、最近世間を騒がせる事件、事故の当事者たちがコンピューターに触れている、

またはこれを趣味としている状況が割と多く認められており、主に文化面から

この精神的影響が多々論ぜられている事は読者諸氏もご存知のこと、と思います。

文化的問題を別にしても、実際的にこの「疲労感」、いらいら、短気、怒りっぽい、

などという状況を起こしやすい事は経験則的に皆さんもご経験のことと思われますが、

現代、情報爛熟時代、とされていますが、そろそろ情報に振り回されるのは止めて

必要な時、必要なだけ情報に触れる事が健康にもよろしいのでは、などと思ったりもします。



僕は温泉宿などで、なにもせずにぼーっとしているのがとても好きなのですが、

自然に、休息を体が求めているのかな?などと思ったりもします。

(と...ばかりに今日も。^^;)


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