第31話 2002/6 [時間、愛、記憶の遺伝子を求めて]


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<今週の一冊>



[時間、愛、記憶の遺伝子を求めて]

(Time,Love,Memory〜 A Great

biologist and His Quest for the Origins of Behavior)

Jonathan Weiner /垂水雄二 翻訳

2001/12 早川書房


著者は科学ジャーナリスト、ハーバード大をちゃんと卒業して「サイエンス」でエディター/ライター。

翻訳者は京大大学院卒、出版社勤務の後、ジャーナリスト...とある。

生物学者シーモア・ベンザー・の研究の記録をもとに綴られたドキュメンタリーで、

ハエの遺伝的、分子生物学的研究、についての内容が主。

その研究の目的は表題のような時間、愛、記憶という事柄が遺伝子に存在するか、という

仮説の検証をする目的で、結論からすると


*時間感覚は遺伝子で情報が伝達されている。

*その他は不明。

*ただし、物証とするには議論の余地あり。


....というような結果に終るのだが、生態の研究の困難さについての見聞、というだけでも

興味深い読み物であるように思えました。

例えば、ある行動様式について遺伝的要素を発見した、としても、本当にそうか、という物証としては

例えば遺伝子を解析した、としてもなかなか物証にはつながらないでありましょうし

その意味でも困難な研究だ、と思えます。

これまでの定説では、そのような行動については遺伝子の影響下になく、主に

学習行動でそれが習慣化される、と言われておりましたので

実証されればとても貴重な研究になる、と言えますね。


時間感覚、愛、記憶、が遺伝子伝達される。

なんとも不思議な事ですね。


付記しますと、ハエ、この研究ではショウジョウハエですが、この生き物については

時間感覚(いわゆる慨日リズム)については遺伝伝達される、と結論づけられています。

実験の方法としては、ヒトへの実験と同じようで、

外界から遮断された空間での検体の行動パターンを観測し、

覚醒-睡眠、というサイクルの時間間隔をリズムとする、というおなじみの方法です。

ヒトの場合と異なるのは、繁殖のサイクルが早いので、

有意差の認められたグループとそうでない対象を混合して生活させた場合のサイクル差

を伝承の理由とした、という部分です。


しかし、厳密な意味では遺伝子伝達、とは言いますが、このレポートで明らかになっているのは

観察結果の有意差、であって実際のゲノム解析結果ではない、という点、また、遺伝情報が

どのように作用して行動の違いにつながるか、という点などがいささか不十分な感もあります。



------:*----------



さて、ヒトにとってもこの所ゲノム解析であるとか、それまで神秘であるとされた部分

についての解析が試みられておりますね。

面白い研究であります。

おそらく、ハエと比較する事はそれほど意味のある事ではないと考えられますが

その理由としては、ヒト、霊長類のたぐいは知性による支配力が大きいから、と言えます。

それだけに、行動様式-文化、という関連性について考えると、例えば大衆芸能とか娯楽、という

存在について一定のモラールが存在しないと危険である、とも考えられますね。

愛の遺伝子が存在しない、それ故に愛という概念が時として流行にも左右されてしまう可能性。

このような状況を仮定した場合、現在の日本のように大衆の接する伝達媒体が

その制作意図について放任されているという現状は憂慮すべき点であるとも考えられます。


実のところ、小子化、晩婚化の傾向でありますとか、とかく世の中に争いが多い、などという

状況もほんの少し、隣人を愛するこころがあれば問題は少なくなる...かもしれないな。

などとは思います。


大東亜戦争に負けた事から、今度は経済戦争に目的を変えた

というあたりが火種になってしまい、カネになりさえすれば、と倫理も情も

放り投げてしまったので子供たちは心がすさんでしまい、大人たちは進む道を失ってしまい

ただ周囲の人間と争う策だけが増悪した..と。

それ以前は、国のため、という目的があったのでとりあえず国民はみんな仲間だったのに

敵になった。と。


自然界で言えば、天敵のいない生物が増えすぎて種内で相互に淘汰を始めた..

とこんな感じにも見えます。


愛がもし、遺伝として伝達されるのであれば、ヒトたちもこんなに争わずに済むのにな

などと思ったりもします。

まあ、そもそも「愛」という状況の定義が難しいですし、もっぱらこれまでは文科系の言葉で

語られていましたから、難解で、門外漢にはちょっと判りにくかったりもします(笑)

まあ、アレですね、難しい方が有り難い、とする向きも多いですし....

ほとんどお経みたいな文章をひねりだすのがインテリ、という生物の恒ですから^^;

それはシカタナイにしても

..そのあたり、読む人への愛はあまり感じられず...

やっぱり、エゴイズム、というかエリート主義ファシズムのような病気にかかっていては

学問はダメかな、なんて。


時間感覚については、以前お話ししましたように慨日リズムはヒトでも25時間周期で起きている

とされ、これは持って生まれるものだ、と言われていますね。

それで、一日は24時間なので、1時間の誤差を朝日を浴びる、という事で較正してる、とか。

あんまり大きく狂うとストレスになって心が病んだりしますし、今、

IT時代などと言われて夜更かししてインターネット、とかやるとこのリズムを狂わせるもとですし

また、コンピューター作業は精神的ストレスを強くヒトに掛けますので、従前のように8時間睡眠

では復調しない、とも言われています。



さあ、時間の感覚が遺伝的継承だ、とすれば、環境の変化に適応して慨日リズムも

変化するでしょうか?

...今の所不明ですが、どうやらこの時間感覚については

学習行動によって変化していないようにも思えますね。

(PCを日常的に使用されている方、ストレスフル、な感じの方が多いようですし)。


そんなわけで、時間感覚が遺伝的継承、というのは

すこーし厄介な状況になってきましたね。最近は。


記憶、についてはこれもヒト種では遺伝子が継承しない、と

今まではそう言われてましたから、この研究の成果がフィードバックされてヒト種

についての同様な研究が進めば面白いですね。



霊長類という見地では、京大霊長研の類人猿、アイちゃんとアユムくんの観察の成果

が出れば参考にはなるかな、などとも思えますね。

同類の子と比較して、アユムくんはとっても利口で、ニンゲンの言語の理解力も高い

などと言われているようですから、今度、アユムくんの子、孫、と世代が移ればより

データーとしては面白い研究になりそうです。


....そういえば、ニンゲンでもヤンキーママの子供はやっぱり

それっぽい子が多いですけど(笑)

これも遺伝継承かな?なーんて。


.....おあとがよろしいようで。


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項 バンダリズム考 64




本稿で今の所議題にしておりますところのバンダリズム傾向について言えば

遺伝的継承、という観点では「攻撃性」が関連と言えましょう。

それに対する抑止要素が実のところ弱い、というか文化的な要素に多く依存するために

最近のようにヒトの個体数が増えますと、いろいろ争いが絶えず....

本稿のようなマガジンが読み物として成立する訳です(笑)。


かつては社会、とかが「恥」という概念でそれを抑止していました。

と、いうか、一人一人の中に内的な父権として「恥」があったので、

「他人に意地悪するの恥かしい」とか、「国民の税金を私物化して、自分の競馬ウマ買ったり、

自分に媚びる建設業者だけに工事をやらせて、見返りを要求したりするのは恥かしい」とか、

更には「国会で国の仕事をせずに、他人のスキャンダル漁りをしているのは恥ずかしい」...


...などという風にフツウは考えたハズなのですが、

それがマッタク無くなってしまったように見えるのは、実の所無秩序な競争が悪い、のですね、

ほとんどの場合では。


競争を無秩序に行う、というのはヒトの所行ではなく、

ほとんど動物的なレベルでの行動になってしまいますから

攻撃的になってしまいますね、必然的に。


以前、お話しした異常行動を取るサラリーマンたちのE、Mなどもそうで、禁止されても抜け道を

探して恥知らずな行為を繰り返しているらしい、と聞きました。


良く言われる事ですが、一度ヒトの道を踏み外すと、元には戻れないものなのかもしれません。

それはおそらく、攻撃が動物的快楽を呼ぶからでありますが、しかし同時に、動物的快楽、

というのは知性を麻痺させます。

禁止薬物に似た作用があるからですが、それ故に

こうした行動様式に浸る人物は、自滅の道を歩んでいる

、という事なのでまあ...放っておけばいい、という結論になります。


何故か、と言えば、常に攻撃的な状況、というのは人間的な幸せからは程遠い状態でありますから

して、彼らがいかに地位や名誉を欲した、としてもそれらは単なる欲の現れにしか過ぎず、

永久に地位、名誉、といわれるような他者の評価は得られる事なく終るでしょうし、

物欲を発した、としても物が与える充足感も一時で、攻撃的になった精神、

というのは次の欲の対象を求めて行動をする、からこれもまた永久に終る事のない攻撃行動

にはいってしまう事になるからです。


ですから古来より、「恥」という概念でそれを抑止していたのですね。


「恥知らずは人間にあらず」というのは真理であります。



ヒトにおいても遺伝子ベースの研究が進んでおりますが、いくつかの疾病について

遺伝が一因ではあるが、その遺伝情報が発病に至るプロセスには環境要因が関連するという

説がある、といわれております。こころに関連する異常もそうで、ある種の精神疾患は通常

遺伝的要因、発病に至るトリガーがあるそうです。

この説に基づいて先の異常行動を取るサラリーマン(今は派遣社員だそうですが^^)E,Mについて

考察しますと、出生前後の貧困、被差別環境、社会人となってからの抑圧的環境、と要因はあり、

更には彼らは遺伝的に見ても特殊環境に存在している可能性が高い、と思われる外観的特徴が

存在している事から、発病の条件をそろえている、という事になり

異常行動はどうやら精神的基盤そのものに問題があるようだ、という事になります。

行動分析的に見ても、激しい対外攻撃を見せる個体、というのはそれなりに攻撃の理由が精神の

基盤に存在しているのですが(充足している者は他者を攻撃しよう、とは思わない筈でしょうし)

その意味からも異常行動を取る事自体が歪んだ精神の叫びである、と考えられます。

その歪みが、この例ではサラリーマン、会社、という組織がこれまでの日本では利益を得る、

という目的の為に個人の幸福を阻害しても良い、とするような危険思想に侵されていたため

かれら、E,Mのような精神を侵された個体がその環境にはびこってしまい、「異常」のスイッチが入る、

というような状況だ、と言えそうです。この例では。

(ですから、サラリーマン社会で狡猾に勝とう、とする事は無意味に近いですね。幸せは遠くなり、仮に

勝った、と思っても、自分の周りにはこのような精神を侵された個体が存在するのみ、で

結局、歪んだ精神の者に自分の周囲環境を侵される事、になります)

しかし、日本の経済がダウンした事で、ようやくこの体制にも終わりが見えてきました。

一部にはまだ、旧い体制にしがみつこうとする向きもあるようですが

(E,Mなどもそうで、"自称"管理職、と肩書きを詐称して周囲の失笑を買っている、とか。

<派遣社員であるにも関わらず。>

もはや末期症状、社内でも癌細胞扱いで、刺激しないよう周囲は避けている、との事です)

もうおしまい、です。戦争ごっこは(^^)。


これからは新しい時代です。


今、新しい船を動かすのは古い水夫じゃないだろう、というフォークソングがありましたが、

「古い」というのは「思考」の事だろう、と思いますね。

若くたって姑息な奴は一杯いますから、機会を均等にする、という意味では

ある体制が壊れるのはとても良い事だ、と思います。


今、滅び行く会社というのは淘汰、でしょうね。

古い会社であっても、トヨタ自動車のように収益を上げる会社もありますから。

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