第32話 2002/8 [2ちゃんねる宣言]



−−−−−−−−−−−結−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


<座 読書>


夏休みなので、ちょっと軽い目のものでも....



[2ちゃんねる宣言]


井上トシユキ+神宮前.org /文芸春秋刊 2001/12


掲示板サイトとして有名な 2ch という個人サイトについてのルポ、インタビュー、対談、

などのドキュメンタリー記事主体の軽い読み物。


一般的には落書きサイトなどと呼ばれるこの2ch、管理者は割と冷静な策士で、20代前半

という若さのエネルギー感ある男子である事がやや意外な印象。

後半、一般的な大人の、いわゆる知的職業の人たちとの対談などがあるが、どの対談者も

この西村、という若者に見劣りがするのがとても興味深いのですが^^;

その理由を考えてみると、この若者は[面白い/否] という非常に単純な体感覚が

基底になっていて、対する大人たちは[損/得]という二次的な価値感が基底になっている

という事が理由になるのではないか、と思われるのです。



それはまた 2ch というサイトが人気になる理由にもつながっているようでもあります。

特に面白いのはある大学助教授が、政治的なかけひきにこの若者をとりこもうとして

「キョーミない」(笑)と一蹴されるあたり。

「そういう事じゃ困る、君は社会的影響力があるのだから」とこの助教授は(以前より胡散臭いと

言われてはおりましたが)ある法案の成立阻止の為、仲間を増やそう、とこの若者をアジるのです。

でも、軽くこの若者は「困ったら、その時考える、俺にあんまり関係ある、って感じがしない」

とあくまで自然にきっぱりと、否定する....とか。

こんな感じに、若い方が安定していて、年食った方が惑っている、というのは逆転的でとても愉快

ですが、言ってみれば若者の方は絶対的価値感で動いていて、年寄りは相対的なそれ

であるので最初から勝負は見えている、のですね。

もとより、乱世でありますから、若者は始めから体制には興味無い、年寄りはそれでもなんとか

体制を作って支配しようとする(笑)ので、これは噛みあう筈もなく(笑)

(ですから、自称エリートが脱サラしても、こういう若者中心の消費社会では成功せず、また

このような若者が増えてくると体制、なんてのはイミ無いですから....

ごまかしごまかしで実力の無いサラリーマン社会の"自称"管理者

(その実、管理能力など無いのですが)などは滅びる他はない、のですね。

いえ、その実、こうした若者が増えた、というのはつまり、社会適応なのですね。

環境変化に適応できるのは、すなわち前世代では非適応種である、という理論通りです。

これからの世の中は、こんな風に動いてゆくのだろうな、とか思ったりもして

興味深い読み物でありました。



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項 バンダリズム考 65


バンダリズムという観点からこの2ch、という掲示板サイトが人気になる理由を考えますと

それはやはり各方面で指摘されているような問題点がある事は否めない印象です。

特に2chに限った事ではありませんので、匿名行動、インコグニート、という状況について、

ですけれど。

この2chというサイトは、完全に匿名制で、誰がなにを発言したかという記録もないそうです。

それで悪口、暴言、誹謗中傷なんでもあり、という雰囲気であります。


まあ、エンターテインメント、というものは昔から攻撃性は否定できないもので

娯楽としてのインターネット掲示板ですから人気になるのでしょうね。


現代、ストレスフル社会とか言い訳されてはいますが、つまり他の者に対して攻撃したい、

という動物的な欲求を抑制する事が出来ない個体が多い、という事ですし、

インターネット、という媒体を介してはいても、ネットの向こうには人間がいる、という意識を

実感する事がないですから攻撃的にもなれる訳です...


視点を代えて眺めてみると、この構造はいじめと同じで、いじめ対象に肉体的なダメージがなければ

何をしても良い、法に触れなければ良い、と利己的な行動を取るというあたりはそのまんま

いじめ、でありますね。


以前から言われているように、日本では長いこといじめ、嫌がらせが社会に横行していました。

ですから、こうした若者たちはそれを行う事に躊躇しません。

罪にはならない、とは言うものの、実際、攻撃的な思考というのは要するに動物的な感情であり

生物が本質的に持っている排他性に沿った情動です。

ヒトには社会があり、友人、恋人、夫婦、家族、といったつながりもすべて社会行動です。

このような社会構造も、攻撃性をもって対すればたやすく壊れてしまいます。

それ故、攻撃性を社会において発揮する事は禁忌行為でありますし、いかなる理由をもっても

認めてはならない領域です。

で、こういう構造を利用しよう、と為政者は企みます。

攻撃性はヒトに根ざした感情であるので、それを行う事をある一部のグループに認めて特権とする

事でそのグループのステータス、としたのですね。

旧くは武士などの暴力性などもそうですし、明治以降の軍部もそうです。

また、差別などもある意味では暴力性の発揮といえますし、大東亜戦争に敗れたあとの

官僚主導体制などもそうです。

こうした無法が公然と存在する世の中なので、日本にはモラルは存在しませんでしたし

周囲の様子見、で結論を出そうとする傾向も、いわばそうした無法地帯では絶対的な価値感が存在

しないから、様子を見なくては困るから、ですね。

こんな状況ですから、社会に属すると否応なしに服従するか、反発するか、の二択を強いられ

そうしたストレスからのこころの歪みが、弱者へのいじめとなって行ったようです。

文化的国家といわれる西側の諸国で、唯一、日本だけが精神科病棟のベッド数が目立って増えて

いる、という原因のひとつにはこうした構造もあるようで、以前お話ししたA君の周囲の者たち

のような精神異常なサラリーマンたちは、実のところ会社、という組織に隷属する事が

自身の動物的な攻撃性を満たす事になるので会社に埋没するのですし

あそこまで精神そ侵されていても、それに気付かない、という環境がそれを作った、といえます。

しかし、その構造はこれまでの日本ではどうやらあたりまえに存在していたようです。

要するに国家主導で国民の心を侵していた、という側面があるのが

これまでの日本という国の政治の持っていたある一面であるとも言えます。


しかし、この傾向にもどうやら終止符が打たれようとしています。

A君の会社でも、無能ないじめ課長、係長などは実務能力に則してみんなそろって人材派遣会社

に飛ばされて、でもまだ課長だ係長だ、などと自称して周囲に嘲笑されているそうですし(笑)

実のA君は、いじめに打ち勝ち、勝利者として仕事の実権を掌握している、とか。

(まあ当然の結果、で、官僚主導がなくなれば仕事そのものの効率が重視されますので

実務能力のない、ごますり男やうそつき男の出る幕はない訳です。

ムネオ事件の発覚、などもそうです。

そのようない傾向の中でこの2chサイト、の状況を鑑みますと

若者が他者を言葉で攻撃する事は好ましくはない行為ですが、彼らをそこま追いこんだものは

日本という国それ自体でありますし、これは大人の責任でもあります。

大人がまだ無責任に景気回復、などと言っている間に若者たちはたくましく自分たちのルール

を作っていて絶対的な体感覚で動いている。

これ自体は好ましい傾向であると言えますし、大人に頼らずに、変な連中に利用されないように

この先も生きていってほしいものだ、と思います。

攻撃性がヒト種、動物として否定出来ないのなら、かつての正義がそれであったように

生き物としての絶対的体感覚に基づいて、よこしまな人間に対して攻撃性を発露してくれる

ように望むのみ、ですね。

規範となる人物が皆無な状況では。

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