第23話 [多重人格性障害-その診断と治療-]
<座 読書>
[多重人格性障害-その診断と治療-]
(Diagnosis and treatment of multiple personality disorder)
by Frank W. Patnam
訳 安 克昌
中井 久夫
岩崎学術出版社 2000/11/
MPDと通称される、精神障害の一症例を詳細に、その診断の簡便な
マニュアルから、治療の実際、臨床の報告、発生原因、その背景などの
専門的な、しかし平易に書かれた書物。
実際的な著述は、訳者がこの症例についての見識が深い、という証明でもあろう。
特に医師でなくても、読みやすく理解しやすい内容は特筆に値する。
.. しかし、高いのが難点。8000円である。....図書館で借りましょう(笑)
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項 バンダリズム考 その 56
5)ネオテニー現象との関連性?
さて、このMPD、本稿との関連で私が注目したのは、以下の2点。
1)MPDには大抵、子供人格が存在する。
2)MPDの発生原因に、子供時代の虐待等の心傷がある。
通常、ひどく幼稚に見える故「ネオテニー」と揶揄される状況との関連、
また、発生原因に虐待(すなわち、いじめ体験との関連)。
また、MPDの患者は、しばし嘘つきで、自己主張が強く、みえっぱりで
暴力的、粗暴。という点。
これらに本稿の主題との近似点がある、と思ったのです。
転換性同一性障害と混同しやすいようですが、相違点としては
MPDの場合と異なり、人格そのものには同一性がある(同じ人間だ、との意識が
本人にもあり、周囲からも見分けることができる)という点。ですか。
どちらのケースにしても、背景には「愛のない家庭、幼児期の被虐経験」
からの逃避で人格が分離したり、または転換的に同一性を欠く
(古い表現では Hysteric になる、という ...
最近のJ-popとやらに、奇妙な「こぶし」をつける歌唱なんかもありますね。
あれも一種、そうしたヒステリックな自己主張の代弁であるようにも思えます。
「君が代」を、崩して歌ったりする、という行為の意識には
そういった規範的なものへの反発とか、->ひいては、被虐経験への怒り。
みたいな意識があるようにもおもえますね、ああいうものを支持する層、には。
...おっと、だいぶ脱線しました。)
つまるところ、こういう精神的な障害が生まれる背景には「愛」のなさ、
が存在するようでありまして。
まあしかし「愛」などといっても「自己愛」ではない愛のことですが、
愛他精神、などというものは社会、家族が無くては存在し得ないものでもあります。
->何ゆえ、そう述べるか、というと、「他者を愛する」という行為は
損得で言えば「自分は損する」行為だからですね。
しかし、自分の家族、共同体、社会の中で相互に「他者を愛する」という行為は
かつての日本ではごくあたりまえに存在していたわけでもありまして.....
これが「損」だとして、住みにくい社会に進んでしまった現在、があるわけですね。
実に、「損得勘定」は、ヒトの生態を脅かす存在であったりもするわけです。
自己愛型パーソナリティの持ち主は、根本から「愛」を渇望していますから、
他者を愛しませんし、また他者からの思いやりを理解できません。
(この現象は、以前もお話した通り、「幼児期の満たされない愛の記憶からの
反発、即ち親権者への攻撃」行動を無意識に行っている->退行現象、幼稚、
...これの度合いが異なったものが「多重人格の中に必ず存在する幼児人格」。
必ず存在する、というところがキー・ポイントですね。 )
故に、こういったヒトたちに「愛」を説いたり、思いやっても無駄ですから、
対策は困難で、むしろ隔離した方が結果は良くなる場合が多いですね。
まあ、この状況の個体は、心理的には「幼児」になっているので
論理的に説得するのは無駄、です。
このような個体群について「ネオテニー」と揶揄されるのではない、と思います。
これまで幾つか挙げた具体例、についても概ね当てはまりますね。
お金欲しさに、夫に過重労働をさせ、保険金をせしめて喜ぶ妻、とか。
支配欲に駆られて、公私混同が絶えないどっかのエライひと、とか。
周囲を無視し、自分達だけ楽しければ、と公衆環境で大騒ぎする、とか。
...これは、言ってしまえば昔でいう「不良」の数が増えた。というだけのこと
であるようにも思えますね。
かつて、「箸に棒にかからない」といわれたような「不良」が増えて、
多数派になった、という感じですか。ね。
当時と異なり、最近の不良は一見普通そうで、裏表があることも特徴のひとつで、
むしろ昔でいう「不良っぽい」格好の連中のほうが健康的であることもまた
興味深い事実でありますね。
これすなわち、「多重的」であるようでして(笑)
いや、冗談ですけれど。
問題のある人格の背景には、やはり「幼児期の被虐経験」が存在している、
というあたり、本稿との関連は深いように思えました、
このMPDという現象には。
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