第24話 2001/5 <伸びる子伸びない子は親の愛で変わる>
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<座 読書>
<伸びる子伸びない子は親の愛で変わる>
著 加藤諦三
発行 青春出版社 2001/1/25 ¥1400
「いじめに負けない心理学」「テレホン人生相談」などが著名な。
本誌でも何度かご紹介いたしましたね。
(その時は民間の研究者だと思っていたのですが、著者略歴をみると
東大をちゃんと卒業して、社会学で大学院、修士過程終了、
その後心理学を専攻、現、早稲田大教授...とあり、
あまりに立派な経歴に驚いてしまいました^^;
いや、秀でた方というのは飾らない、肩ひじ張らない方が多いのですが、
やはり..という印象でした。)
[まあ、肩で風切ってちゃ学問はできませんわね、確かに。]
本書は、雑誌連載の編集版のような趣で、難解な用語はなく、たとえ話と
実例を多数紹介し、実践的に「子供の成長と、親の愛の関連」について
熱意のこもった文章で綴る、という体裁。
特に興味深い部分として、「よい子がキレル」という最近の傾向についての
著者の分析のユニークさが一読みに値する。
たとえば、以下のような。
良い子とは(親にとって都合の)良い子となりやすい ->子供らしい「自然な」子でなく、
無理をしているために心が歪み、感情を失い、攻撃性のやり場なく、
そして、監督者のいないところでその精神的ストレスが暴走する。
要するに、「キレル良い子」を作るのは親が子供を愛さずに、親の都合で
子供を支配しようとするからだ、という論旨。
絶対的な親の支配構造の中で、親にきらわれまい、と
自らの感情すら押し殺し、(あたかも、前回お話したMPDのようですが)
そして、やがて肉体的に親の能力を超えた時に、それまでのUppunが爆発し、
家庭内暴力や非行、いじめになったりする、という.....。
(こないだお話した、温泉旅館での親子の情景、などもちょっと似ていますかね)
実に思い当たる節があるのは、本稿でも幼児の暴力を取材している最中、子供を
やつあたりの対象として小突きまわったりしている若い母親などの情景であり、
以前、私も子供への愛情が無い親が問題行動を示す子の背後に存在する、と
報告した、という記憶などでもありました。
この著者自身、こうした親のエゴのために失感情的であった青年期の
心情を吐露しており、そのためかこの書物はやや傾向的であるとはいうものの
いつになくこの著者としては熱気のある一編となっている。
ページを繰ってゆくたびに、著者の心の叫びが伝わるような思いでありました。
これから子供を育てる、という方には良い参考書となると思われますね。
僕個人は、こうした(親のとって都合の)良い子、という「都合」を決定する
要素にやはり行きすぎた競争、無秩序的な市場経済の影響があるようにも思えたの
です。
最近の若い方とお話すると、目上、規範に否定的な方がとても多いのですけれど、
その背景にはこんな状況があるのかもしれないな、などとも思いました。
<子供の健全な脳と心は、親の愛情が育てる>
著 高田明和
発行 PHP研究所 2001/2/7
さて、先の加藤氏の著作について、脳生理学的、構造主義的な裏づけ、
ともいえるのが本書であります。
著者は、浜松医大の教授であり、これまでもこの分野の著作も数多く、
「唯脳論」的な感覚に近い、しかしもう少し研究者イメージのある、という印象。
やはり「キレル」子供の問題について分析を試みており、
動物のパニック回避行動と神経回路、それと「キレル」状態のヒトの神経の興奮状況の
相似性、などをMRIの画像などを用いて物証し、簡潔に説明するあたりは
明快でわかりやすく。やはり「よくわかっている方」という印象をうけます。
これらの書物で「親の愛」が重要であることはよく理解できる...んですが。
はて、現代の無軌道な大人たちへのよい対策は?と聞かれると
返答に窮するところでもありますね.....。
そして、この論旨からすると、すでに歪んでしまった人格への
対策は困難だ、ということであり、そうした大人たちが
また歪んだ子供を作る、という悪循環に陥りがちになる...ことですね。
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項 バンダリズム考 その 57
5)ネオテニー現象との関連性?
さて、この「ネオテニー」。
どうやら、流行しているのは日本だけ、のようであります。
まあ諸外国では、ミドルティーンの頃から職業訓練であるとか、学業であるとか
とにかく大人並みに扱われるので、それなりに責任を問われる、という
望ましい状況であるからですね。
しかし、現状のような「ネオテニー」少年が増えてきた原因には、今回ご紹介したような
「親、大人」の愛のなさがあるようにも思えます。
言い換えれば、その大人たちが自己愛的であり、子供の自我を
認めずに "支配"しようとする、ということですね。
この間新聞を見ていたら、「男女平等、女性の社会進出」という討論の場で、これに関して
とても興味深い投稿が多かったのです。
まあ、大体ご想像の通り「男性側意見」「女性側意見」に分かれるのですが、
どちらにせよ、言えるのは<社会、仕事と女性、男性>という観点で論じており、
主役であるはずの<子供>の視点、子供の為にこうしたほうがよい、という意見が皆無な
ことでした。
曰く、「子供を託児所に預けて、女性が働ける社会保障を!」とか、
「男性が育児をしても良い」とか。
別に男性が育児、家事をしてもいいと思いますが、さて、乳児期から「母親の愛」を覚えずに
育った子供がどうなるのでしょうか?その後。
このような意見の持ち主の方は、子供の頃、母親不在の寂しさを味わったことがない
のかな、などと私は思ってしまいました。
こんな疑問に、先の高田氏や加藤氏は、明快に答えています。
例えば、高田氏は、ローレンツ説を引用し、「匂い、刷り込み」という観点から
次の事例を紹介します。
--最近、父親の入った風呂を「汚い」といい、湯を抜いた後、完全に洗い流した後でないと
入浴できないという病的な女性がいるそうですが、これは子供の頃に父親の匂いを覚えていない
から「異物」と感じるため。
---アトピー性皮膚炎の原因の一つには「清潔過剰」がある、統計的に見ると、アトピーの
患者は長男など第一子が多い、これは、外部の「異物」を持ち込んでくる兄、姉、などが存在しない
ため?である。
さて、これから連想すると、母親が託児して育った子供がその後どうなることでしょう?
二章でも述べましたが、この状況、単純ではないのですが ....
何故、そこまでして働くか? --->概ね、貧困のためではなく贅沢がしたい、会社での立場を維持したい
即ちは子供よりも自分の欲、または世間体といったものを重視。つまりは自己愛が勝っている。
このような状況は、社会、消費欲求を刺激する媒体、などの影響もある、のですね。
しかし、言えることは、もしこれが本当だとすると、人としての根源的な「幸せ」は社会が壊している
とも言える、ことになりますね......
人間としては、次世代を担う人間を作ることが一番重要な仕事のように思えるのですが。
ナチュラリスト的見地では。
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