第28話 2001/12 [茶の香り研究ノート]


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<座 読書>



[茶の香り研究ノート]

川上美智子 著 光生社 刊 2000/11



茶という飲料の香り分析、かなり詳細な化学的分析に始まり

文化的見地よりの茶という嗜好飲料の存在

さらにはヒトという生物への薬理的効用などにわたる

研究が記されている。


著者は食物科学、人間文化学、環境毒性学などの研究者である

という履歴からも本書の内容はうかがわれるが

実の所、茶、という飲料の嗜好性、カフェイン含有であるそれの薬理、

最近は躊躇なく赤ん坊に飲ませたりするので、その向精神作用などについての

資料としてこの本を手に取ったのですが、この著者によれば

長い期間に渡り文化として定着した飲料には

たいていこういった精神作用があるという。


つまり、その向精神作用を嗜好するという側面は否定できないようである。


この著者によれば、コーヒー三杯程度の摂取量(3〜6mg/kg)で不安、呼吸器興奮

などが発生し、その理由はアデノシンとの生化学的相互作用...というから、

喫煙、飲酒などとの関連性も高い、ということになる。

長期に渡り摂取すれば脳内のアデノシン感受性が高まり

アデノシン受容体が増加する。

それ故常習者には禁断症状(頭痛、疲労感)が見られるが

これは慢性的アデノシン阻害の影響である...という。

つまり、カフェインの摂取が常習化している個体では

不安、抑鬱、覚醒、というような不安定な精神状態がその摂取を巡り

常に変化する、という事....になる。


やはり、乳幼児などに与えるのは害であるし

成人であったとしても常習は控えるべきであるようであるが

現状ではこれらの薬物の摂取は「薬物」であるとは認識されていない。




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項 バンダリズム考 その 61




さて、今回は茶、その他嗜好品などと向精神作用.

というとオーバーな気もしますから、脳という物体の化学的環境と情動

について、とでもしましょうか。



最近はよくこういう傾向でのTV番組を見かけたりもしますが

結構いい加減(笑)


それはさておき、今回のテーマである茶という飲料は例えば浪曲の


♪〜旅ゆけば、駿河の国に茶の香り..

などという一節にもあるように

古来、日本では親しまれている飲料でありますが

実の所カフェインは興奮性の作用がある薬物でもありますし

いくらかは習慣性があるようだ、という事が言われておりました。

そこで、このような本を資料として見、実体に把握に努めよう、と

思ったりした訳でもあります。


この本では、主にアジア諸国でのフィールドワーク(と言っていいものか)

からの報告が多数記されておりまして、その目的は果たせる事、となりましたが。



僕なども日常的に茶、飲んだりもしますが

まあ和食に合う飲料ではこれが最適でしょうし

また、どこの料理屋にいっても出てきますね。

(実際、寿司に茶無しではトロなんぞは食えたものではないですし)

しかし、問題はこの興奮性を示す、という部分でであり

口当たりのさっぱり感は、カフェインとはあまり相関性がないだろう

とも思われますので、そのようなノン・カフェインの飲料も

幾らかは市販されてはいるようではありますね。

しかし、あまり支持されないというあたり、この著者のいうように

カフェイン嗜好が慣習化しているのでしょうか。



最近では乳児の離乳食に与えたりする母親も居て

「子供が腹壊した」とあわてていたり。

(茶には緩下作用もあります。)

てな事に驚いたりもしますが、この「茶の香り研究ノート」

にもありますように常用しますと脳にあるレセプタの数が変わる

(すなわち、その化学的環境に脳が適応する=離脱症状がある)

ので、ちょっと怖いのではないかとも思えます。


以前お話したと思いますが、僕が自分で試してみましたところでは

茶、その他カフェイン含有の飲料、食料などをすべて断ちますと

最初の数時間はどことなく物足りない、刺激が足りない、

というような感覚を覚えるものです。

多分、カフェインがもたらす爽快感に対して精神依存が生じているのではないか

と思われますが反面、日常生活でいらだつような時でも直情的に反応する事は

少なくなるようです。

例えば、駅の切符売り場で、長蛇の列が出来て居るときにいらいらする

(いらだってもしかたないのですが)などというな時でも、やたらと前の人を

急かしたり、腹立てたり、なんて事は少なくなるようです。



このような時、理論的ではなく直情的に行動判断に走りやすいものですが

行動判断、というか行動を起こすスレッショルド・ポイントは

もともと脳が外からの薬物によって興奮状態な場合ですと

直情的な行動を取る可能性が高いのではないか?とも考えられます。


また、煙草を吸う方は大抵、コーヒー、茶なども飲む方が多いですが

その相互作用にも一考を用するとも思えます。茶、とアデノシン受容体との

関連についてもこの研究では述べられていますが

これら薬物、例えば煙草との相関においても、概ね興奮性、の傾向と考えて良いと

思われます(つまり、相互強調される、という方向性でしょうね)


大人が自己責任で嗜好するのは自由ですが

それと同時に自らの精神の健康を薬物から守るというのもまた

自己責任の範疇において自由であります。

その前提として、自制する事が前提でありますが、これがまた困難でありますから

日常的に存在する薬物について正しい認識を持つことも

現在では必要な事だとも思えます、特に、育児などに望む場合では選択権が養育者に

ありますから、より、重要であります。


0.5LITREのペットボトルを持ち、飲み歩くような情景は珍しくない現在では

それら興奮性薬物に始終、影響を受ける比率が高い、かもしれませんね。

精神的にナチュラルな状態を保つためには、あまり好ましくないようにも思います。

いわゆる「幼稚」な人々を本稿では何例か紹介して来、彼等についてネオテニーと

揶揄される状況を報告して来たのですが、例外なく彼等は飲酒、喫煙常習で

更に珈琲、茶などを多飲する、という状況を見ると、

やや、関連が深いようにも思えます。

彼等は短絡的、衝動的に悪事を繰り返す、というような状況を薬物が幇助している

とすると、少々危険に思えたり、もします。


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