第2話 2000/2


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[column] <科学の眼>


最近、「科学」をネタにした物を良く見かけます。

曰く、**は科学的に証明されたから、良い!とか。

   ××は、科学的に立証されているから、こうせねば!とか


     アジテーション。


大事なことは、我々がそれぞれ、科学の“眼”を持つことで、

アジりの道具に使うことではない、と思うのだけどなぁ。


「科学」なんて物は、絶対的価値じゃないのだけど。


最近は、殆ど「科学」=「信仰の一種」ですね^^;。


不気味。



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最近発行された参考文献・資料


[食べる速さの生態学〜サルたちの摂食戦略〜]


中川尚史 著   京都大学学術出版会 発行 1999/6


「食べる速さ」に着目し、その観点から、サルの生態、社会への影響、

ひいては文明へと考察を進めるといった内容であり、一見脈絡がなさそうである

が著者によれば「例として、毛つくろい行動といったコミュニケーションは

群れの絶対数が増えれば時間を多く要する。従って、劣位の個体であるほどに

摂食に時間を掛けることが出来ない」とある。これは

ヒトの現代社会において、情報処理等に時間を費やした場合の食事時間が

満足に取れないような状況と類似であり、このことから、「摂食」に関する

観測結果とその個体が属する群れの社会、文化などの関連性データは

ヒト社会の現状と対比した場合、面白い考察といえるのではないかと思える。


著者は、そこまでは言及してはいないが、ヒトの場合でも劣位の個体は一般的に

摂食速度が速い(?)ようであるが...。





[自己愛の構造]


和田秀樹 著   講談社 発行 1999/10


これは「外れ」でした。

内容としては、一般的なフロイト・コフートの概論と、著者の推論。

表現が難解なのは、この手の個人書物にはありがち。

インテリゲンチャが書きそうな本の典型で、そのサンプルとしては面白い。

内容として、特に見るべき部分はない。

著者のプロフィールに「東大医学部卒〜留学」とかあり、「やっぱりな」^_^;

と思ってしまう。

私はいつも本を見るときに著者経歴と、顔写真を見るけれど、

大抵、いい本の著者はいい顔をしている。





[キムラ式音の作り方]


木村哲人 著   筑摩書房 発行 1999/10


これは、学問の本ではなく、映画の擬音効果に一生をささげた著者のノウハウ、

映画人生の実録である。

先の例とは好対照で、理論より実踏。頭より体。というなんとも説得力に富んだ

持論が繰り広げられる。

中でも、面白いエピソードとしては。「ディズニー映画の音を盗んだ後輩が

『音には著作権がない』と開き直っているのを見て、殴ってやろうかと思った」

という下りであるとか、「技術が進歩すると、ヒトは怠惰になる」というあたり。

実在する父権のサンプル・データである。

人生は学問じゃない。

真実は人の心を動かす力があるな。と思ってしまいました。





[井深 大]


鹿嶋 海馬 著  三一書房 発行 1999/10


正直なところ「海馬」という著者名に惹かれて(笑)読んだのであるが。

まあ、内容はありがちなのだど、井深大という人物が余りに大人物であるので

如何な書き方をしても本にはなるのだが、面白いポイントとしては、技術者と

しての彼の最善は、商業的には失敗例が多い。ということ、

digital-audioなどは、当初反対していたというのであるから。

このあたり、ヒトの感性の非論理性を思わせ、興味深い。

(因みに、ウチにはベータマックスが3台。そのうち1台はEDです。^_^;)



[いじめに負けない心理学]


加藤 諦三 著 PHP研究所 発行 1999/11


“テレフォン人生相談”の回答者であり、早稲田大学の現役教授である著者による

経験則に基づく「処世術」の薦め。

しかし、論理的裏付けをきちんと解説しており、難解にならないあたりはやはり

実践での経験を生かす技量をこの著者が持っているため、と思われる。

偶然、私も一月号で「処世術」について書いたので、これを読んでから書けば

もう少し気の利いた内容になっただろう、とやや後悔。

問題点としては、こうした処世術は両刃の剣であり、防御にはなるが、自分も常に攻撃的で

あらねばならず、結果として心労につながる、という事。

それと、こうした技術を公開することで、苛め側の技術が増長しないか、という点。

ヴィルスとワクチンの生存競争のような。

しかし、これは、困っているヒトにとっては、有用な本だと思えます。



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項 バンダリズム考 その 34



?Dネオテニー現象との関連性?



まず、“ネオテニー”という概念を持ちこむことが可能であるか、という根拠から考えてみます。


*推論の根拠




a)幼稚な行為である。

b)通常の「少年」としては大人に同化しようとする方が自然であり、しかし彼らは幼児の

ように我侭な行動を押し通そうとする。

c)自然生物学での概念「ネオテニー」=進化の過程で、旧世代種から見た場合、新世代種

の外見等は旧世代種の幼生に類似。転じて、文化人類学などへの引用。


関連事項


d)ヒト長寿化の影響、青年期の長期化

e)危険の少ない環境->内在する攻撃性の捌け口がない。

f)“ペット化”傾向。狼->犬、猪->豚等g)カルト、宗教、アジテーションに弱い現代人。

h)「おたく」人口の増加。->仮想空間、コンピュータ・ゲーム、現実の認識困難。

i)インターネット文化、メールマガジンなどのアングラ系の台頭による偽情報の氾濫。

->無責任、無自覚な情報発信者->喜んでいる受信者、攻撃性の捌け口。

差別意識の助長。

j)テレビ文化による現実感の侵食。

k)大人を「憎んでいる?」子供。その反乱行動?




さっと見ても、これだけの関連事項があります。


以上のような状況を根拠として、推論を行ってみた、というわけです。

今回より、これらについて進行していきたいと思います。


まず、


a)幼稚な行為については、前章までに記していますので、詳細はそちらを参照してく

ださい。


要約しますと、「自我が当然確立している筈の年代になって、規則を守れないという状況

は故意に行っているのでなければ、幼稚な行動である。」といえる、との論旨です。


*ネオテニー。


かなり前「ウーパールーパー」という俗名で流行した奇妙な生き物を記憶されている方も

多いかと思えます。


あの生物は、幼生状態のまま、成熟せず生殖機能が備わったため、別種の生き物とされて

いるわけですが、(環境要因により、成熟不要となった、とされています。)


これを他の動物に転用して考えた場合に、例えば類人猿->ヒト、なども同様なのでは無い

か?との類推が成立するといわれています。


この概念を文化環境にそのまま転用し、社会文化の成熟がヒトの「智」を幼稚化した。

との主張がそちら方面で語られています(真偽は不明です。)。

一つの考え方の提示として、ご紹介したいと思います。


環境要因が生態を変化させる。


進化論的な立場では、こうした考えの方が多数であるかとも思います。

ダーウィニズムか否かを問わずとも。


例えば、サルの類が樹上生活を行ったことにより、外敵からの防御が容易となったため、

余った時間が「プロトカルチュア」の発生につながり、

知能が発達した。とかの推論などを連想されるのも良いでしょう。


余談ではありますが、ヒトの祖先は水棲哺乳類である、との見解をもたれる方もおられ、

その根拠として、下肢の結合構造などを挙げ、論が成立しているようです。

面白い話です。


そこからの引用で、アザラシなどの群れ文化と現代「新」人類文化の類似点を

指摘している方もおられ、興味深く思えます。

ちょっと脱線がすぎましたか。




*ヒト長寿化、青年期の長期化。


実態としての長寿化についての根拠をあえて示す必然性はあまりないか、と思います。

平均寿命は伸びつづけているようであり、今後の福祉対策に行政は苦慮している、という

情報は皆さんも小耳にはさんだことがあるか、と思います。

通常の生物は、成体に至る時間のほぼ三倍が寿命であるといわれることは

前回までにお話した通りであります。

まあ、ヒト社会では、生物学的な加齢よりも、社会的な状況が「成熟」を要求する場合

が往々にしてあり、このあたりの観点より現状の日本を観察しますと、やはり「幼稚」

な人間が増加していると個人的には思えるのです。

詳細については後述しますが、これをもって「ネオテニー」と仮定することも

不自然ではないか、と思えます。



ともあれ、「文化」というものは、元来は生活のknow-howであったはずであり、

根源的に攻撃性があるヒトという種に関して言えば、人口が増えればそれだけ摩擦も増

え、不要な争いが増えるというのも当然であると考えられます。

また、日本という国の現状でいえば、古来より相対的にやりすごすことが美徳とされて

いたような好い加減な価値感の影響で、著しく規範を逸脱する者に対する絶対的な「罰」

が発生せず、これが結果的に全体としてのモラールの低下につながったこともまた事実で

あります。

「文化的環境」と考えれば、このような状況が

「幼稚化」であるともいえるかもしれません。





<危険の少ない>


表面的にはとりあえず“民主主義”ということになっている日本では、日常生活をしてい

特別苦心して自己防衛に努める。ということは少なくなってきています。

それゆえ、成熟している個体であったとしても、「社会的」スタンスを意識する必然は

特に感じることは少ないようです。

一見、どうでもいいようなこの状況が、実のところ大きな問題を孕んでおり、

本来であれば「外敵」から守護するべく存在していた攻撃性の捌け口がなくなり、

無為な対象を求めて暴走するといった背景がどうやら「いじめ」の原因であるようです。

実際、子供たちを取材したレポートなどを読んでも「誰でも良いから、自分以外なら」

という発言が目立ちます。

何かを仮想敵国としておけば良い。という発想。

利己主義、ここに極まれり。


しかし、この状況は別段子供に限ったことではないようです。


なんでも良いから、他者を攻撃したい。

井上陽水の歌みたいですが、実際に良く見かけますね、こういうヒト。

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