朝が見れた日

 数ヶ月したらタカエにとうとう子供ができて家族が増えることに皆喜んだ。

 子供の費用にも頭を悩まされたことは秘密だ。


 それに俺の領地の村もついに完成して続々と魔族の村人が移住してくる。あのフクロウベアもいて…


「旦那様…いや、伯爵様…もう俺の家を乗っ取らないでください!」

 と泣いていた。

 流石に取らないよ!あの時は悪かったな!


 それと魔族に嫁ぐ人間や妖精族も増えてきて一層賑やかさは増した。モーリッツも頑張って魔道具や魔力を注ぎ、何と異世界の映像を映し出すことに成功した!


 サオリとタカエは喜び、お祖母様も家族達も皆で集まりタカエの世界を映像を通して眺めた。


「凄い世界だなぁ……」

 それしか出てこなかった。映像の太陽の光は俺たちを灰にしなかったので1番驚いたのは昼の世界を知れたことだった。明るい…。


「朝だ……俺達朝を見たのは初めてだ…映像だから灰にならない!」

 フランツやお祖母様たちも感動した。


「これが…昼かい…タカエの世界も凄いが…昼がこの目で見れる日が来ようとはね…」


「吸血鬼だから一生見れないと思ってた…」

 フランツは泣いていた。皆も。

 弱点であるはずなのに映像の昼間はとても明るく人々の症状は明るい。服装も様々で、箱のようなものに乗り皆忙しなくそれにぎゅうぎゅう詰になり乗っていく。


「あれは電車。皆。仕事や学校に行くのに乗るの。時間が決まっていて乗り遅れたら遅刻して怒られるんですよ。だから皆んな朝は急いでるんですよ」

 とタカエが教えてくれた。

 ふーん、大変だなぁ。タカエの世界の人間て。よく見たら5、6歳くらいの子供とかも何人か同じような服を着て箱に乗ったりしていた!凄い…。


 タカエの世界…子供も仕事してるのか!?


 そして…タカエが教えてくれたラジオタイソウを朝からやっている人たちの映像が映った!!


「あら!ラジオタイソウだわ!!まぁ!あの音楽ってこんなに軽快だったのね!!すごいわ!皆真剣にやってる人もいれば怠そうにやってる人もいる!!」

 と母上は嬉しそうだ。


「モーリッツさんこれからも時々見せてくれます?」


「当たり前だ。サオリンの家族も見たいしな…俺の魔術に感謝しろ!魔族ども!」

 と威張った。だが消耗は激しいようだ。

 リッちゃんはゼェハァ言っていた。


 それからもリッちゃんは時々映像を見せてくれた。


 フジヤマなるものから太陽が顔を出す瞬間を見たときには心臓が止まりかけたがこれが本物の太陽なんだ!と思った。

 いやタカエの世界のだけど。


 リッちゃんによると変わらないのは太陽月、空とか自然物だけのようだ。もちろん地形は違う。


「太陽って映像で見るとこんなに光って綺麗なのね!」

 と母上はまた感動した。

 噂を聞きつけたフーベルト公爵様や叔母さんもやってきて映像を見て興奮した。1番興奮していたのは元々興味のあったフーベルト公爵だった。


「おいギルベルト凄えなぁ!!モーリッツやるじゃん!!初めてお前のこと見直したぞ!!」


「今までが役立たずみたいな言い方はやめろ!!」

 とリッちゃんは公爵様相手でも睨む。やめろや。仮にも第三王子なんだからな。


 すると今度はパッと映像が切り替わる。派手なキラキラした服を着て踊って歌う女達が出た。どれも美少女だった。


「うわー!すげー!!可愛い!!何あれなんのショー!?」

 案の定食いついたフーベルト公爵を叔母さんはつねった。


「ああ、ごめんよハニー!ちょっと珍しかっただけさ!あんなに足を出しているしさ」

 と言う。確かに皆凄え足だしてる!


「アイドルグループのナキバ48だ…。新曲かな」

 とサオリが言った。

 アイドル…グループ…?


「まぁ…なんというか、一般人普通の庶民より目立って国の若者とかに知れ渡るくらいには有名

 な子達かな。そんなのがゴロゴロいるよ。皆好きなアイドルやアーティストのファンになってコンサートやライブに行くんだ。それでお金取って見せる、エンターテイメントよ」

 と言った。お祖母様が


「タカエゆっくり説明してくれるかい?」

 と混乱した。まぁ訳わからん単語とか多かったしな。ともかく人気者ということが大体伝わった。


 そこで小さな家が現れタカエは息を飲む。


「うちです…。小さいでしょ…」

 映像は家の中を見せてくれた。誰もいなかったがなんだかドレッサーのようなものの上にごちゃごちゃと飾ってある中に太ったタカエがいた。

「ふふ…仏壇が無いもんね…。私は死んだことになっているもんね」

 もう時間が経ちすぎたしタカエは寂しそうだ。

 するとガチャっと音がして細いタカエに少し似た中年のおばさんが現れタカエは


「お母さん…」

 と言い、ポロリと涙した。

 俺たちはタカエを囲んだ。


「タカエ…大丈夫か?」

 必死に涙を拭き、タカエは


「はい…私…会えなくても母さんか生きているだけで幸せです。今の皆さんと幸せに暮らしてることが判ったし…私には皆さんがいるから…」


「綺麗なタカエに似た人だね。タカエは私達がしっかりお預かりしていますよ…」

 お祖母様は映像に向い頭を下げた。俺も皆もそうした。


 その朝…タカエはしばらく棺桶ベッドで俺にしがみつき泣いた。よしよしと慰め赤い目と少し腫れた目でタカエは言う。


「ギルくん…結婚してくれてありがとう。母さんの映像を見れて良かった。……ギルくん好き。早く子供の顔が見たいね」


「タカエ…俺も好きだ…。よし…寂しくないようこれからもたくさん…作ろう!あ…で、でもそんなにたくさんだと家計が……」


「どれだけ作る気ですか!!も、もう!ギルくんたら…」

 と照れて身を寄せ2人で手を繋ぎお腹に手を置いて眠った。

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