喜ぶタカエと計画の狂う長男
とうとうデートの日となった。俺はフランツがこっそりと売らずに取っておいた自分の服を渡された。
「フランツ!お前っ!俺に隠れて取っておくなんて!我が家の今までの財政を…。家計を圧迫…売れるものは全て売れ…。これも売る…」
と病的に質屋に持って行こうとする俺を何とか止めるフランツ。
「兄上にいい人ができた時そんなボロ服ばかり着回したのじゃモテないから!持っていたんだよ!!同情する弟の身にもなってよ!!」
「いい人ねぇ…」
「兄上…タカエのこと嫌い?」
と聞かれる。
「いや…別に…普通。普通に良い裏表のない良い娘だ。血もくれるし。器用だし。美少女だと思うよ」
痩せて来たタカエは美少女だ。
きっと良い妻になってくれるだろう。
「兄上は家の為にタカエとの結婚をするの?自分に気持ちはないの?」
「俺の…気持ち…?」
今まで借金苦で帳簿と睨めっこ。しつこい取り立てにとりあえず来月ちまちま返すからとブン殴って追い返し色々と家のモノを売り払い凌いできた俺に恋する暇は一切なかった!!
金持ちの女を娶るのも無理だ!出会いに金がかかる。服も買えない…。しかしフランツが1着この服を隠していたならチャンスはあったのかもしれないが…。
そんな時タカエがやってきて…大金が手に入り家を建て替えることさえできた。タカエは家事や石鹸作りやいろいろ器用な異世界人で話を聞くだけで面白かった。
運動して努力してもう一人の聖女は今どうしてるのかも気になっているようだ。
だがおいおい魔族が人間の地に足を踏み入れたりはできない。変身して買い物に行くぐらいで何とかしてるが。
「恋…とかしなきゃいけないものなのだろうか?どうしてもそれが必要なのだろうか?そりゃあ幸せになって子を成した方がいいと思うが…、子を成せばまた赤ん坊の為に金がかかるかもしれない…。ましてやタカエは人間だし。赤ん坊の餌代もこれから必要かも…」
「いや、恋の話してたのになんでいきなり子供の話にぶっ飛んで行くんですか!兄上!!早いよ!!」
「何だと!?恋する→キスする→プロポーズする→子作りするだろーが!!合ってるだろ!?」
「ええ!?な、なんか違うよ…兄上なんか違う!!合ってるけどそんな…工程ばかり気にしておかしいよ」
弟におかしいと言われてしまった!!
「しかも金のことばかり考えているよ!!一旦金を頭から切り離してタカエのことだけ考えたら?」
「タカエのことだけか…」
「そうだよ!今日のデートはタカエのことだけ考えて!!絶対にお金のこと考えちゃダメだからねっ!判ったらさっさと着替えろよボケ兄上!!」
と弟に急かされた。
仕方ないから俺は渡された服を着た。
これなぁ…確か母上のお祖父様の所にお金借りようと思って一応母上の実家金持ちだからちゃんとしないといけないと思って更に少し借金して買ったというちょっとトラウマになった服だ。
結局お祖父様には門前払いだ。そりゃ金を集りに来た孫なんか愛してもらえるはずもないし母上の妹の方の孫を可愛がってるぽいからもう無理だ。
基本的に父上のことをお祖父様は嫌いだから父上似の俺は更に嫌われているだろう。
諦めてすごすご帰ったのが泣ける。
浸っていると巣穴の奥から余計な飾りも何もないスラッとしたワンピースで足先が少し見えたモノをタカエは着ている。首も見えていたから血が吸いたくなるからそこは隠すように言うとぐるりとタカエは首元を隠すようにショールとか言って巻きつけた。
この世界のお洒落さではないが俺は着飾る貴族女よりもマシだと思った。頭には余った布で作ったリボンも飾っている。タカエは器用だ。
「タカエ…やっぱり可愛いね!!ふふっ!ほらほら兄上もなんか言いなよー!」
とフランツが足を蹴る。痛え!流石吸血鬼だ。骨折れるかと思った!
「スッキリしてていいな。タカエ」
と言うとタカエはそれでも照れた。ああ、魅了か。またしても。
「ありがとうございます!ギルベルトさんも凄い素敵ですね!!いつもと少し違う服だし!」
と喜ぶタカエ」
父上達も出てきて
「タカエ、ギルベルト!それでは気を付けて行っておいで!」
と言う。母上は
「頑張ってね!ギルちゃん!」
と手を振る。
俺はタカエを肩に担いだ。
そしたらお祖母様にスパンと頭を叩かれた。
「ギル坊!違う!!そんな荷物みたいに抱えるんじゃない!!」
「そうだよ!兄上!お姫様抱っこというやつだ!!」
とフランツ。お前だってタカエ連れてきた時、荷物みたいに担いでたのに!しかし皆の目が怖いのでお姫様抱っこみたいなのして飛び上がった。
タカエは驚いてしがみついた。
「じゃあ行ってくるよ!!」
と言って月夜に飛び上がった。
タカエは騒いだ!
「きゃあ!!わあっ!!高い!!わあああ怖い!ひええ!!」
「?そうか人間は自力で空飛べなかったな!」
「ええっ!?気付くの遅い!!ギルベルトさんはどこかズレてますね!!」
とタカエにまで言われた。
「むーん、すまんなぁ。で、どこに行く?」
「ひえええ!下なんか怖くて見れないいい!!何か静かで落ち着いてるとこは無いですか?」
「えっ?」
と慌てて辺りを見回す。人間の地とかの方がいいのかな?でも人間に見つかると厄介だ。キョロキョロと見渡し、そう言えば花をやれって誰か言ってたと思い出して花畑を探すことにした。
すると向こうの人間の森に花が咲いてる所があった!!辺りに人間の気配は無いし大丈夫かも。
そこへ飛び降り立つ。
タカエは目を開け花畑をみると
「うわあ!綺麗!!凄い!!」
と今度ははしゃいだ!!
小さい子を遊ばせている気分だ。
さてしかしこれからプロポーズだっけ?いや、キスが先だった。その前に花を摘んであげるんだった。
と俺は何か良さげな花を摘もうとキョロキョロしているとタカエが何か花で作り始めた。
「ん?何をしているんだタカエ?」
どうやら花を編んでいる!!?
流石器用なタカエ!!
そしてあっという間に花冠を作り上げ俺の頭に乗せた。ヤバイ!俺が花を貰った!
あれ?どうしよう?これどうしよう?
け、計算が狂う!!
「違う!タカエ!そうじゃないんだ!!俺が花をあげないとなのに!」
と言うとタカエは嬉しそうに
「ああ!デートしてこんな綺麗な所に連れてきて貰ったからもうご褒美はいいんですよー!満足です!」
と言うから完全に終了した。
もうタカエは満足したと言う。
ええ、こんなんで満足してもらっちゃ困るんだが!?
あれ?結婚…どうしようかなぁ……。
計画が早くも狂った。
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