タカエにご褒美を
俺のスタンプもタカエの描いた兎マークで埋まった。なんだかんだタカエが来て半年くらいは経ったような気がする。
毎夜皆でラジオタイソウをしてるおかげだ。タカエには内緒で家族会議が行われていた。
花束の渡し方やキスの仕方など。
俺がまだ童貞だからと両親のキスを参考にしてる身にもなってくれ。恥ずかしいからやめろ。
エミ叔母さんとお祖母様に至ってはもう慣れている。フランツはもう飽きて本読み始めた。
「ああ、コルネリア…花よりも君はいつでも美しい!吸血鬼の中で1番素敵だよ!一生離さないよ!」
「ファビアン!貴方こそ魔族一素敵!一生私を愛してねぇ?」
とラブラブな二人は手本だとも言うべくさっきからブチュブチュとキスしているが日課だ。
この後は二人で棺桶に入る。
ああ…どうでもいいもの見た。
「ギルベルト…このようにガッツいてはならんぞ。こいつらはバカだから参考にもならんがな」
とお祖母様が言う。なら見せんな!!エミ叔母さんは震えだし
「うう…おのれ!うちの旦那もこんなガッツいては相手の女と浮気してたのかしら?ムカつく!ぶっ殺したい!!」
と不穏だった。旦那何やってんだ!?何故迎えに来ない!?もしや叔母さんやはり捨てられたのか!?叔母さんは変にプライドが高く相手が謝るまで絶対に許さない所がある。
「フランツや。お前が手本を見せてみなさい」
と言う。
「いやいや、フランツはまだ幼いのに無理ですよ、お祖母様」
と言うとフランツは本を閉じてお祖母様の所に来る。お祖母様は見た目だけは美少女だからなぁ。
「失礼ながらギル兄上。僕…兄上よりはマシだよ。モテるから」
「何だと?予算が足りなくて夜会にも参加できないのに出会いがないだろう!?そもそも!」
「別に夜会に出なくても森で迷子になった妖精とか助けてあげた事あるもん。皆僕の姿を見てボーッとするんだ」
と言う。こいつ!森で一人で遊ぶことあるよな。こんな魔族の森でもたまに妖精族が迷子になってしまうこともあるからとりあえず出口まで案内する事はある。お礼に血を少しいただく約束で。
流石に俺たち吸血鬼は美しく、魅了の力も勝手に発動するから相手が女の妖精族ならグラグラと惚れられるのも解る。
「フランツそれは魅了の力のせいだ」
「ふんだ!判っているよ!」
とフランツは拗ねていたが
「まぁフランツ…ギル坊に手本をしてやりな。私を恋人と思い」
と孫とお祖母様の恋愛劇も中々観れたものじゃないけどフランツは心得たとばかりに幻術の花を取り出して
「愛しの我がマルレーン様!貴方はこの花の妖精のように美しい!僕の妻となり共に生きましょう!心より愛してます!」
と頰にチュッとキスしお祖母様は無表情で
「はい。70点じゃな。フランツは女たらしの素質がある!」
「わーい!これで女の子に声かけてたら血を貰えるかな?」
と弟がいつの間にか女ったらし方向に行っている!!よく見たら持っている本のタイトルが
【女性に言うべき愛の言葉集】
と書いてある父上の秘蔵本だった。
うわぁ!!こんな恥ずかしい台詞とても俺には無理だ。
しかしまずタカエをデートに誘わなければならない。
お祖母様は
「ギル坊…デート場所ならあそこがいい。西に廃墟の村があるだろう?かつて人間達が山賊か何かに襲われて惨殺され壁には血の染み込んだものや気持ちの悪い人形が落ちていたり魔族にとって雰囲気抜群だよ!」
とお祖母様は若い頃お祖父様に口説かれた場所を言う。確かに魔族はそういうおぞましい場所を好むが…確か人間は怯えて叫ぶと聞いたことがある。
タカエが人間だから流石に無理だろう。
しかし皆人間の好みなどが判らないのでもう直接タカエに聞けばいいとタカエを呼び出す。ジャージ姿で現れたタカエは半年前より痩せて美少女に戻りかけている。頑張った証だ。
俺は言った。
「タカエ。この表の兎が貯まったから皆で話し合ってタカエにご褒美を上げることにした。俺とデートさせてやろう。どこに行きたい?」
と聞くとタカエは
「えええ!?」
と真っ赤になった!!
チラチラこちらを見る。ああ、魅了が働いてるのかも。
「タカエ…俺とが嫌なら父上は無理だがフランツでもいいのだぞ」
と言ってやるとタカエは
「えっ!?どっちでもいいの!?…まぁそうだよね。私なんて…」
と少し落ち込んでいるが
「タカエ…で、人間はどんな所が好きなんだ?因みに魔族は寂れた恐ろしい所が好きなんだ。廃村とか、ゴーストが棲みやすそうな所とか」
と言うと
「いや、そんな所絶対嫌です。怖いです。この世界のことを私あまり知らないし…そうだ!吸血鬼は空を飛べたりするんでしょ?私少しは痩せたし空の散歩とか?」
と言うと拍子抜けする。
「えっ!?そんなことでいいのか?タカエ遠慮しなくても行きたい所ないのか?ああ、でも空から探すと言うのもあるな。タカエの体重とか気にしなくてもいいぞ?吸血鬼は力があるから」
と言うと
「で、でも…ちょっと待ってください。私、折角初めてデートするんだから綺麗にしないとギルベルトさんに失礼だから!な、何か服をこしらえてからでもいいですか?」
「ああ…別に構わないぞ?何か布がいるなら言ってくれ。手伝おうか?」
「いえ、手伝ったら意味ないですよ!デートの日まで見ちゃダメです!」
と釘を刺された。
フランツは
「兄上も…デート初めてだよね?兄上はいつも書類と格闘しかしてないし…借金取りをぶっ飛ばして追い払うことしかしてこなかったんだから!
お金さえあれば夜会に出て女の子にモテるだろうけど」
とフランツが言う。そして
「タカエはきっとギル兄上のこと好きだよ!いつも頰を染めるし可愛いね!」
と言う。
「それは魅了が発動してるからだろう。きっと女性には効きやすいんだよ…」
と言うとフランツは
「何でもいいよ。とにかくプロポーズは頑張ってね?一応タカエが元の世界に戻りたいかも聞いて」
とフランツは心配した。プロポーズしてもタカエが元の世界に戻りたいならこの話は終わる。
そうなったら勇者とか倒す為に俺達もちょっと頑張らないとなぁ。
とか思いつつ、タカエの服ができるのを待った。
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