魔王城に行く前に
ようやく目を覚ます4人。
アユカとか言う茶髪美少女がタカエとサオリを見た。
「沙織!それにあ、あんた貴恵!?何で痩せてるのよ?前は豚だったのに!」
と叫ぶ。
「…安優香…私ここに来て痩せたわ。努力したの。貴方は聖女なんかじゃない!私はもう貴方を友達だなんて思ってないわ」
「私もよ!安優香!」
とサオリが初めて睨んだ。
モーリッツもサオリの前に立ち気付いた王子達と話した。
「モーリッツ貴様!逃げ出しやがって!サオリ様とよろしくやったのか?」
するとモーリッツは
「お前らと一緒にするな!俺とサオリはキス以上はしてない!」
と言った。
「へえ、サオリ様はまだ処女かよ!」
といやらしい顔で笑いタカエのことも舐め回すように見たので俺は王子を睨んだ。
「そっちのがまさかあの追放したオーク女とは!女とは化けるもんだな!!」
と失礼なことを言う。
お祖母様が前に出た。
「お前らは明日魔王様の元へ連れていく!観念するんだね!」
4人はキッと睨んだが縛られて抵抗出来ないのが悔しくてモーリッツに当たった。
「おいモーリッツ!この裏切り者が!さっさとこの縄を解け!俺は王子だぞ!それに勇者だ!」
と言うとモーリッツは長い黒髪の間の目を鋭く向け
「ヒルデブレヒト王子…俺はもう貴方の家来でも仲間でもありません!サオリと結婚して魔族の地で生きていくことを決めたのです!今更人間の世界に未練もない!」
とモーリッツが初めてカッコいい事を言った!
「くっ!この長髪童貞ウジウジクソ野郎め!昔からお前みたいなぼっちに声をかけ宮廷魔術師の地位まで与えてやったのに!」
とモーリッツの立場を判らせるように王子は言うがモーリッツは冷静に
「ふ…俺の魔力に興味があっただけの話でしょう?大体俺はお前みたいな熱いやつが嫌いなんだよ!」
とモーリッツは床から大蛇を召喚した。
「ぎゃっ!」
「きゃーー!」
「おんや可愛い」
「言ってる場合か!こいつ!毒を持ってる!?」
と4人は真っ青になる。
「こいつに4人が変なことをしようとしたら直ぐに俺に判るようになっている。さぁ、こいつらはもうほっとこう。皆でスゴロクしよう」
とモーリッツはニヤリと4人に目をむけ、勇者が
「おい!何だスゴロクって!!」
「ふ…先日俺はサオリから教わって新しいスゴロクを作成したのだ」
とビロンと紙を広げた。そこには勇者一行痛めつけスゴロクと書かれていた。
「モーリッツ!おめぇ!おもしれーもん作っただな!」
「これでサイコロを振り出た目のマスに止まったらそこに書かれていることを実行するのだ!アユカ様は多分スゴロクを知ってるだろう?サオリ達と同じ世界の遊び道具と聞いたからな」
とモーリッツはニヤリとした。アユカは大層震えて
「お、お願い!モーリッツさん!ゆ、許して?ほ、本当は安優香…モーリッツさんのことす、好きなの!」
「何!?こいつの事も好き!?アユカ!君は俺を愛してると!!」
「もちろん!私は聖女だから!王子様のことも大好きよ!そう!私は愛される女なの!モーリッツさんもきっと解ってくれる!」
とか訳の分からないことを言い出すアユカ。洗脳か?
「なんて慈悲深いんだ!アユカ!くっ!縛られて無ければ!!」
と王子が悔しそうに言う。俺は軽く頭を叩いた。
「人んちにお邪魔してまで穢らわしい真似は辞めろ。明日まで大人しくしていろ!」
俺が赤い目で見るとアユカがうっとりと俺を見た。
「素敵!貴方吸血鬼なのよね?私の血をあげるから解いてくれない?」
とねだって来て虫唾が走る。
タカエが…
「節操がないね安優香!この人にも手を出そうなんて男なら誰でもいいのね!」
「そんなわけないでしょ!?イケメンだけが私に触れてもいいのよ!私は聖女だもの!」
んな穢れた聖女いらんわ!!
と俺は思った。
そして大蛇を残して俺達は夜更までスゴロクで遊びたまに勇者の髪を引き抜いたりつねったりを10回する。のマスとかに止まってとにかく痛めつけた。
夜明け近く地下室に降りて眠ろうとする。今日はタカエも一晩中起きていたから一緒に部屋に入りハッとした!!
か、棺桶が、一つしかない!!
いつも入れ替わりで眠っていた!!ど、どうしよう!!
「タカエ…お、俺はゆゆ、床で!!」
ど、どうしよう?どこか隙間空いてないかな?陽はもれないかな?うち欠陥住宅だし!!
夜会行く前に灰になっちまったら!!
「そんな、これはギルベルトさんのだからどうぞ使って?」
「それはダメだべ!タカエを床なんかに寝かせられない!!」
と言うとタカエは照れて
「なら…一緒に棺桶に…」
と言うのでボッと顔から火が出そうになる!
「ええ…でも狭いぞ?」
「はい…でも詰めたら入れますよなんとか」
「ええ!?そんな…そうだけどほとんど身動きできないぞ?」
もっと広いの買っとけばよかった!!
「はい…いいですよ。ギルベルトさんが嫌なら遠慮して私は床で」
「嫌なわけねえべ!!いや…ででででも!!す、すんごくみみ密着してしまうべ!」
俺はテンパった。
「はい…でも…今日は静かに眠りましょうね」
とタカエは笑いパジャマとか言うのに着替えて俺が先に入るとピタリと横に入った。
隙間もなくなり俺はドキドキした。横を向くとタカエがいる。
密着してるからフニャとタカエの大きな胸が当たる。グハっ!!
「タカエ…お、おおおお休み」
「はい!お休みなさい…ギルベルトさん…」
チュっとタカエから軽いお休みのキスをされ沸騰しそうだ。明日は夜会なのに…。
俺は静かに蓋を閉めた。
暗闇だけどタカエの頬を探る。俺の赤い目が光っているせいでタカエに
「懐中電灯みたい!」
と言われた。
「タカエ…お、俺はその、ああ!ダメだべ!こんな!な、何もしないから!タカエは明日帰る手がかりが見つかるかもしれないのに!」
と焦る。しかし心臓はバクバクだ。
するとタカエは
「……そうだとしたら…私ギルベルトさんと離れ離れになるのかな?嫌だけど…違う世界だから…離れなきゃいけないのかな?」
とタカエの瞳から綺麗な滴が落ちた。
「タカエ…」
涙を指で拭いてやるとタカエは
「わ、私…ギルベルトさんのこと…す、好きっ!明日帰る方法が見つかってこのままお別れになったら辛い!だから…」
とタカエは俺をジッと見つめた。俺も見つめた。
お互いにキスしたし、タカエの方が少し積極的にキスをねだった。
「ギルベルトさん…思い出を頂戴!」
と言って泣きながら俺にしがみついた。俺は髪を撫でてキスした。俺も泣きそうだった。
「うう、タカエ!行って欲しくない!ほんとは!でも!…俺もタカエが好きだからもし別れてもこの…温もりを思い出しておきたい!」
と俺はタカエをギュウと抱きしめる。
震えるタカエの背中を撫でて俺は離すまいと少しだけ眠りに落ちた。
「え?寝ちゃったの?ギルベルトさん…」
と夢の中でちょっと残念そうなタカエの声が聞こえた気がした。
*
そして次の夜になった。
タカエは綺麗に身支度をした。
とても綺麗だ。まだ少し目が赤い。
「……タカエとても綺麗だ」
「ありがとう…ギルベルトさんも素敵」
俺は照れた。
棺桶の中でキスしたり抱きしめながら寝てしまったなんて!!
きっと忘れないだろう。タカエの温もり!
タカエはちょっと呆れた目をしていた。
??
俺はタカエに銀に似た花のアクセサリーで胸を隠し、下で縛ってる4人にボロい服を着させて
「おらっ!いくど!!お前ら!!魔王様の所へ!!」
と言うとフランツ達も身支度をして
「兄上おはよう。き、昨日はタカエとついに結ばれたの?」
と言うので
「ん?一緒にね、眠ったぞ?ぐっすり快眠!タカエはとても暖かかったよ!よく眠れたよ!」
すかさずお祖母様にスパンとスリッパで打たれた。
「お前は本当に間抜けかい!!爺様に似て!!
タカエ…すまないね?こいつが鈍くて」
「いえ…そんな…」
とタカエは言う。エミ叔母さんも
「ギル…まだ童貞とか嘆かわしいわ!昨日はチャンスだったでしょ!?」
と言うのでようやく俺はハッとした!!
そう言えばタカエはやたら俺に積極的にキスしたり……。
あ、あれはまさかやはりどこかで思っていたが思ってはいけないと思い耐えていたが誘われてたんかい!!!
タカエを見るともじもじ照れていた。
千載一遇のチャンスを逃して普通に眠った。
俺は白目になりつつあった。モーリッツも童貞仲間のくせにバカにしてきた。
ひそりと
「こんな瀬戸際の時に思い出も作ってやらないとは情けないやつめ」
と言われてまた思い出した!タカエは確かに思い出を頂戴とか言ってた!!間違いなく誘われてたんだ!!
あれそ、やっぱそう言う意味だったのかーー!?
ガーンとなって青くなった。
ポンポンと肩に手を置かれて物凄くスッキリした顔のフーベルト王子が
「じゃ、そろそろ行こうか?」
と言い、仕方なく俺は皆と王子の用意した天馬の馬車に乗り込んだ。
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