魔王城の夜会
暗い山の上に魔王城はでんとそびえ立っていた。本物のガーゴイルが城の上空を飛び回っている。
下では次々に到着する馬車から魔族の貴族達が次々と降りてくる。俺はタカエの手を引き降りると魔族達が人間の匂いに反応して一斉に振り向く!!
「きゃっ!」
とタカエは怖がり後ろでモーリッツ達もびびっていた。なんと言ってもここは魔族の王の城だ。フーベルト王子は実家だけど俺たちは一生かかっても入れないと思っていた。
凝った装飾や高そうな壺もあるから父上も俺もビクビクしながら歩いた。連れてきた勇者達は縄で縛り歩かせて結構目を引かれた。
「くっ!勇者で王子の俺が何でこんな目に!おのれ魔族め!」
とまだ言っている。
テーブルには目玉がギョロんと乗っていたりでタカエは怖がった。
俺は金を借りてる貴族に遭遇するのが怖かった。
順調に返しているとは言えまだ完済してない!!
「人間だ。家畜か?何故ここに?」
「だがあの人間の胸…デカイな!」
「ああ、顔も良いようだ」
後ろには見すぼらしい人間もいるぞ?ボロを着て…あっちが家畜で小綺麗なのがペットだろうな」
とヒソヒソ言われる。
その時金を借りている貴族の一人からついに声をかけられた!!
狼男一族の伯爵様だ。吸血鬼族と狼男族は本来無茶苦茶仲が悪かった。
狼男族は普段からとにかく筋肉を鍛えている。筋肉筋肉とうるさくて毎年魔族の筋肉自慢大会とかいう気持ち悪い大会を開いている。
本来なら関わりたくないがうちの先祖はプライドゼロで狼男族からも金を借りたのだ!!
「よぉ!ヴィンター家の倅。最近ちゃんと返すようになってきたじゃねーか!そんな人間まで連れて!一体何があったんだ?」
と聞かれて焦る。
「べ、別に…返済は毎月少しずつしてるしもう少し待ってください」
「ま、いいけどよ!その人間の女!いい女だな!今夜貸してくれるなら負けてやってもいいぞ?」
と赤い顔でニヤつきながらタカエの身体を見る。狼男族は部類の女好きでもある。
満月が無ければ年中発情しているような獣だ。
「悪いが魔王様に呼ばれているんだよ」
と言われ狼男族の男はひっ!?と少し驚き離れた。
「そうだ!遊ぶならあっちのボロを着た家畜の女にしな?ああ、あいつら4匹のボロを着た人間達は元勇者一行だ」
とフーベルト王子がいつの間にか割って入り狼男族の男が頭を下げた。
「フーベルト王子様!!…え?…あ、あのボロい服を着てるのが…ゆ、勇者!!?ええ?勇者ってもっとちゃんとしてるのかと思ってた!!」
と驚いているが更に王子は言う。
「まぁ俺が会った時はこいつら4人素っ裸だったんだよ。一応情けで服を与えてやったまでだ」
と言う。
「えっ!勇者一行って!素っ裸で魔族の地で戦っていたのか!?」
「げえ!!人間の勇者一行ってど変態だったのか!!」
「うわぁ!こいつらには負けたくねぇー」
「いやそう言う意味の勇者ではちゃんと勇者だわ!魔族でも服を着るのに」
とか言われる勇者の王子は恥ずかしさで死にそうだった。他の3人も同様だ。
まぁ、こいつらがうちの近くでイチャついてたのが悪い。
そこで
「魔王様と王妃様!第一王子と第二王子様の御成だ!!」
と発声し、眼光鋭い獅子の立髪のような髪をした大きな体躯の魔王様が現れた!
初めて見た!
物凄い魔力を感じた!顔が怖すぎる。隣の王妃様はかなりの美魔女で大きな帽子と妖艶なスリットの入った服で生足をチラチラさせていた。
フーベルト王子の上の兄たち二人は赤い髪と紫の髪を持っていた。つか似てねえええ!!
フーベルト王子は
「俺たち兄弟は全員血の繋がりはないぜ?俺は三番目の側室の子だからな。あの王妃様の息子は上の兄上の…ほら赤い髪のミハエルだよ」
「紫の方は側室の兄上ね。ヨーズアってんだ。別に仲は良くない。むしろ悪いんだ俺たち家族は」
とフーベルト王子は言う。王族も色々大変だな。
ギロリとこちらに二人の視線が落ちた。タカエ達の匂いが人間だと気付いた。
「愚かな弟が人間などを夜会に連れてくるとは!」
と赤いミハエル王子が言い、
「あいつは昔からチャラついてるからな。今に始まったことでもないがまさか家畜を連れてくるなど非常識な!」
と紫のヨーズア王子が言った。
「お前達…解っているであろう?あれなるはただの人間ではない。一部は聖女として召喚された人間だ。男は知らんが」
と魔王様が低い声で言う。
「さっき聞こえましたがあのボロ服の方は勇者一行とか」
とミハエル王子が言うと魔王様は
「みすぼらしいな!勇者とはいずれ剣を持って対峙すると思っていたが…あいつら剣どころか何も持っていないが…武器とかは…」
と魔王様が言ったのでフーベルト王子が歩いて行き
「父上ー!それはあの俺の親友の吸血鬼族のギルベルト君が既に売っ払いましたよ!彼等勇者を倒したのもギルベルトくんだ!
ねぇ?王妃様…褒美に巻き込まれた人間を元の世界に戻していただけますよね?」
と言う。王妃様は一言も話さずににこりとしてツカツカとフーベルト王子の所に歩き無言で頭突きをかました!!
「いっってええええええ!!!な、何すんだこのババア!!」
と言うとゲシゲシ王妃様に蹴られる王子。
そして魔王様は通訳した!!
「ううん…スザンネは…『その話は後で別室ですると言ったでしょう、このバカ王子!死ね!!…後ババアとか言ったの許さない!』と言っておる」
フーベルト王子はそんな王妃様に
「ふへー…すんませんでしたー」
と一応軽く謝った!!
王妃様から黒いオーラが見えた。ニコニコしているけどめちゃくちゃ怒ってないか?あれ?
「そうだ!父上!紹介します!!俺の婚約者を!」
とエミーリア叔母さんは紹介されて魔王様に跪いた!流石に魔王様の魔力を見て顔面が蒼白になり震えていた。
「年上か?フーベルトよ…」
「愛に…歳の差など!関係あると思っているのですか!?」
とフーベルト王子が言うと
「それは関係あるだろう。しかしお前のような息子の相手が見つかっただけでも良いか?」
するとそこに赤と紫の兄達が割って入った。
「父上!この女は結婚歴があります!元旦那とは別れたようですが…早過ぎませんか?」
「王家との縁や公爵夫人の座を狙ってのことかと!そこに愛はあるんでしょうか!?さらにヴィンター伯爵家には多大なる借金があります!」
「「こんなのどう見たってフーベルトを利用しています!!」」
と最後はハモった。
しかしフーベルトは
「ミハエル兄上!ヨーズア兄上!それは違います!俺はエミーリアの過去も全て受け入れた上で愛したのです!」
いや、ただの一目惚れである。
「エミーリアの元旦那はエミーリアをほったらかして妖精族の娘と重婚し子供を授けていました!俺は許せなくそいつと戦い…何とか勝ちました!」
嘘をつけ!背骨折られて転がっていたぞ?
すると叔母さんは膝まづいたまま、
「魔王様…けして公爵夫人の座を狙ったわけではなく…たまたまこんな私を悲しみの中から救ってくださったのが殿下だっただけでございます!」
いや、めっちゃ公爵夫人の座は狙っているだろう。しかも若い子が好きときた。
いや魔王様も流石に疑うだろとチラリと見たらめっちゃ怖い顔だ!!こりゃもうダメだ!叔母さん!明日串刺しにされ天日干しされて灰になるわ…。
と思ったが怖い顔でこれでもかと睨みつける魔王様の威圧と共に叔母さんはもう震えが止まらないが……
「お前達の愛…しかと見せて貰った。結婚を許そう!」
と言い、その場の王妃様を除く全員は
「「「「「ええええええええええ!!!?まさかの感動したのおおおお!!!??めちゃくちゃ反対しそうな顔で大体賛成かああ!!?」」」」」
とか思ったに違いなかった。
王妃様はチラリと見てにこりと笑んだだけだ。この人喋らないな。
魔王様が通訳した。
「スザンネが二人を占ってみたいと申しておる」
フーベルト王子がゴクリと喉を鳴らし
「王妃様…よろしくお願いします!」
と頭を下げた!なんなんだ!?
「スザンネは魔族一の先見の目を持ち数百年先まで見通せる!本当にお前達が上手くいくのかを見てもらえる」
と魔王様は言い、スザンネ王妃様の目が光り
二人を見た。叔母さんは少し怯えた。
そして…またニコリと笑った。
いやどっちだよ!!?
「スザンネが…二人は仲睦まじく愛し合い子供は6人生まれるでしょう…と申しておる!」
そんなことまで解るのか!!すげえ!!
「……6人とは!王妃様ありがとうございます!」
とフーベルト王子が頭を下げた。
これはもうオッケーだろう。
固唾を見守っていた家族達や魔族達は第三王子の結婚が決まり祝福を次々と言いに来た。
兄二人もこれには少し苦い顔をしたが、
「まぁ、母上が賛成されるのなら…私はそれで結構です」
と納得した。
途端に馬鹿騒ぎが始まり踊りだす魔族もいた。
俺とタカエもステップを踏むようなダンスをする。魔族のダンスは特に優雅とかではない。
タカエも楽しそうだし4人の勇者一向は余興に魔物のいる檻にぶち込まされヒーヒーと泣いていた。
ミハエル王子とヨーズア王子は上等な酒を飲み、二人はグリフォンとキマイラになり酔っ払い暴れた!!
「酒だーー!もっと飲ませろおおお!」
「女はどこだ!?女ーー!!」
と普段の人型と180度くらい変わった!!
タカエを見つけるとこちらに走ってくるキマイラの王子!!不味い!と間に入り何とか止める。
フーベルト王子もグリフォンになった兄を止めていた!
魔王様は静かに怖い顔で膝に王妃様を乗せ談笑しているように見える。いや、止めてえええ!?
「女だ!!女!!げははは!」
「ひい!ミハエル様!正気にお戻りください!!」
と言うが酔っ払いは聞かない。
タカエは怯えてテーブルの下にサオリ達と隠れた。モーリッツが結界を張ったので俺は仕方無しにミハエル王子の腹を一発殴り気絶させた。
王子の腹を殴ってしまった!!
牢に入れられるかもしれない!!
フーベルト王子もヨーズア王子を片腕だけベビーモスに変えて壁に激突させ気絶させて
「この酔っ払い兄貴どもめ。酒癖が悪くて敵わない。ギルベルト気にすることはない。いつものことだ。咎めたりしないから」
と言われ俺はほっとした。
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