クズはどこまでもクズであるという
妖精族の里の可愛らしい切り株型の小さな家に緑の美しい髪を持ち耳の長いエルフの夫人は生まれてくる赤ん坊のために靴下を編んでいた。
銀髪の吸血鬼のエッカルトは隣でお腹をさすり
「ふふふ、パパだよ、早く顔が見たいね。とても楽しみだよ!レナータ辛くないかい?」
と甲斐甲斐しく身重の妻の心配をする良き夫だ。
「ありがとうエッカルト!私とっても幸せ♡」
「僕もさ!君との子が出来て嬉しい!幸せな家庭を築こう!」
と2人が寄り添いキスしようとした瞬間…玄関のドアが破壊されぶっ飛んできた!
咄嗟に妻を抱えて避けた。
「な、なんだ!?一体!!?」
すると、そこに金と黒の混じったチャラチャラした若者の魔族と自分と同じ銀髪と赤い目の吸血鬼の青年がいた。
「邪魔すんでぇ?」
「な、なんだお前達!?」
とエッカルトが言う。
「おーおー?おじさま…なんたることだ?よもやお忘れか?まぁだいぶ会ってなかったからなぁ?それにしても酷いな。同じ吸血鬼一族だろう?エミ叔母さんも可哀想に…まさか重婚とはね」
と言いレナータは何のことかと夫を見る。
「お前…まさか…エミーリアの甥…」
「ギルベルトだ。このクズが!」
「奥さん…この旦那はもう1人お美しい同族の奥様がいるのにも関わらずこんなところでぬくぬくと生活しておりますよ?」
「え?あ、あなた…エッカルト!?どう言うことなの?あなた私以外に妻がいるって…どう言うことなの?」
エッカルトは
「いや、その…君達外で話そうか?妻は身重なんだ。お腹の子に何かあったら大変だ」
と言う。
「いいでしょう。俺たちは貴方を半殺しに来たので思う存分暴れます」
と王子はボキリと腕を鳴らす。
「どう言うことなの!?ねぇ!?」
とレナータは聞くがホビットの男がレナータを抑えた。
そのまま男達3人は外へでた。
「一体どう言うつもりだべ?叔母さんを放置してこんな所で子供さ作って!酷い裏切りだべ!」
と捲し立てると
「べ、別に…あれは…家の為に仕方なくエミーリアと結婚しただけで…あいつには何も感じない。それも借金の方に払う金がないから嫁に取っただけの置物だ!あの女は!」
と酷いことを言った。
「エミ叔母さんは結婚して幸せそうだったべ!」
「し、知らない…。初夜だけ済ませたらあいつには用はない!籍を入れているだけでも感謝して欲しいくらいだね!
君のお祖父さんが生きていたなら話はついただろうが、金の代わりに娘を売ったに過ぎない!他にも方々借金が残っているだろう?うちがどのくらい払ってやったと思ってる?それでも離縁してやらないだけマシと思え!」
と切り返してきた!!
借金のことは確かに方々から借りているがまさか死んだお祖父様がそんなことしてたのか。叔母さん達は俺には隠していたのかな?
「それでもあんたが帰ってくると…実家に迎えにくると泣いて待っていたあの美しい人をお前は踏みにじった!!」
と王子は睨む。
「勝手に向こうが惚れただけで僕は悪くないし僕は同族と結婚なんて吐き気がする思いだったんだ!僕はレナータと出会い真実の愛を知った!」
「それなら離縁するべきだべ!!」
と言うとエッカルトは
「そんなもの…やりたければ向こうから頼み出るべきだね!そして金も払ってもらう!置物のくせに何故僕から離縁を申し込まねばならない?」
それに王子は激怒した。
ベヒーモスへと姿が変わるのを見てエッカルトはさぁっと顔色を変えた。
「な、そ、その姿…まさか王家の方!?」
とびくついた。
「許せん!ギルベルト殺していいか?あの人を置物と何度も何度も!金なら俺が支払おう!離縁してもらうぞ!」
と王子は牛のように突っ込んでいく!!
しかし…エッカルトはそれをガシリと止めた!
そして方角を掴み巨体を放り投げた!
「ぐあっ!!」
「フーベルト王子!!」
と助け起こしにいく。
「お前!不敬罪だぞ!この方は王族だ!魔王様の息子様だ!」
と俺が言うとエッカルトは
「それはそれは王子様でしたか。だが後で催眠にかけて忘れさせれば良いだけのこと!」
「くっ!…」
と王子は立ち上がる。
俺は前に出た。
「ギルベルトどけ!俺が方をつけてやるっ!」
と王子は怒りで我を忘れそうだ。
「いや、こっちも身内の問題があるべ!借金のことは俺も知らなかっただが…、叔母さんを泣かせたこととは関係ないべ!!嫌なら結婚なんて最初から断るべきだったべ!」
するとエッカルトは唇を噛んだ!そして言う。
「いいか!よく聞け!!僕はお前の叔母に花一つやったこともない!!それなのにヘラヘラとやってきたのはそっちだ!売られたのにも関わらず気味の悪い貧乏な女!置物!飾り物!それで充分だ!!
ギルベルト!僕が憎いか!?叔母の仇をとりたいなら殴って見せろ!この落ちぶれたヴィンター一族め!執事1人いやしないくせに威張るな!」
俺はキレて霧になる。エッカルトも霧になり
「えっ!?」
と王子は戸惑った。
霧になっても俺たち吸血鬼には相手の位置が判る。一瞬で身体を元に戻して殴りつけるが相手もガードした!
流石吸血鬼同士だ。
しばらくぶっ飛ばし合いが続いた。俺も頰を殴られたり腹に風穴を開けられたりもしたが傷はタカエの血を飲んできたから直ぐに修復する。痛いが。
「ギルベルト!僕の方が強い!諦めて王子と共に帰れ!!」
「……舐めんじゃねぇべ!おっさん!家族を泣かせた罪は償ってもらうべ!!あんな…居候の叔母さんでも…ヴィンター家の家族だべ!!
あの涙だけは!嘘なんかじゃねぇんだ!!」
と俺は背中から蝙蝠の翼を出してスピードを加速させ突っ込みエッカルトの腹を突き破った!!
「グアっ!!」
エッカルトは腹を突き破っても吸血鬼なのでもちろん修復していくが俺よりも修復は遅かった!なので完全に治るやり早く頰を思い切り殴り木に激突させた!
妖精族は怖がり家に入ってしまう。
「がハッ!!」
エッカルトはようやく傷が塞り俺を睨みつけ黒い大きな犬になり襲いかかってきた!!しかしベヒーモスの王子に横からぶっ飛ばされた!!また木に償ってぶつかりそうになりエッカルトは霧になり衝撃を交わした!
そして王子の後から蹴り上げまた王子はぶっ飛ばされた。しょ、正直もうじっとしていてくれ王子!邪魔だ!!
王子は人型に戻りヨロヨロ立ち上がる。
「王子!大丈夫ですか!?」
「大丈夫じゃない!凄い痛い!!骨!背骨折れたかも!!?」
と言う。
「んじゃもう、ジッとしててくれ!!」
「嫌だ!俺も一発キメるんだ!魔族の王子として!!」
もういいからそんな変なプライド!
「男として!!愛しき人を守るため!戦わねばならないのだ!!」
と叫びヨロヨロ歩く。いや、そんなヨロヨロで…。
「王子…」
しかしそこで俺の心臓めがけて鋭い木が地面の下から飛び出してきて避けきれずに穴が空いた!!
俺は空中に串刺し状態になった!!
「もうやめて!!これ以上は!!」
と見るとレナータがこれを扱ったらしい。エルフの術か…。手には弓を持ち王子に向けている。エルフの矢は百発百中と言われている。
「レナータ!ありがとう!流石我妻だ!!」
と言うとレナータは
「貴方もよくも私を騙していたわね!結婚していただなんて!重婚じゃない!!酷いわ!!」
「愛してるのはレナータだけだ!!あの女とは書面上だけ!ただの置物だ!借金の方に貰っているだけの物体と同じだ!愛情など無い!」
と言うとレナータは涙を流し
「許せないわ…このクズ!」
と俺にかけた術と同じように旦那の心臓を木で貫いた!!
「何をするんだ!?レナータ!!」
「うるさい!クズ!!皆ここで朝日が昇るまでもがいて灰になりなさい!この子は1人で育てる!!さようなら!エッカルト!!」
とレナータは家に入って鍵をかけた!
王子はどうっと地面に倒れた!
やはり背骨の怪我が!?
俺も何とか刺さった木から抜け出ようともがいたが無理だ!貫通してるし木が邪魔して傷も塞がらないし痛い!!
エッカルトも同じようだ!
このまま月が沈み陽が昇ると灰になってしまう!!
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