次男は豚みたいな女を拾ってくる
所変わり森の中のボロボロの館…。
魔族でも一応貴族だけどちょっと経営の苦しい吸血鬼の伯爵家ヴィンター家。
何代か前の爺様が残した借金で没落寸前だし良いご飯にもありつけないし先月執事とかも解雇して家族だけになって自給自足生活だ。
今なんてネズミの血を吸うのが精一杯の貧血鬼一族だ。皆もはや朝も良く眠れずゲッソリしている。こんな所を勇者だの聖女だのハンターだのに狙われたら一族滅びるのは間違いない。
長男の俺…ギルベルト・ベルトホルト・ヴィンターはため息をつく。
家族は父ファビアン・ルードルフ・ヴィンターに母のコルネリア・エリーザ・ヴィンターに弟のフランツ・ヨアヒム・ヴィンターにお祖母ちゃんのマルレーン・エーファ・ヴィンターに叔母さんのエミーリア・バルバラ・ブライトクロイツ。叔母さんは旦那が浮気中で実家のヴィンター家に戻ってきた居候。
「このままではのたれ死ぬ!!覚悟を決めて全員で人間を襲いに行こう!ちょっとだけ血を貰うだけだ!!」
と提案すると反対の声が上がる。
「無理怖い」
父だ。
お前…一家の主人として怖いとか言うな!曲がりなりにも吸血鬼一族だぞ!?そりゃ他の吸血鬼一族とだいぶかけ離れるくらいには貧しいのだが!!
「私も反対!人間に何かすると倍返しよ?家燃やされちゃうわよ!?」
と母。髪をいじりながら言う。あんたがドレスとか無駄に買わなければ!!しかし母の実家は金持ち一族だから仕方ない。しかし父との結婚で反対され勘当同然で出て来たので実家には頼れない!!
「あーあ、母上の実家に頼れればなぁ…」
と弟のフランツが言うが無理なものは無理だ。例え孫が頼みに行っても向こうのじいじは頑固者でわしには孫も娘もいない!と言うのだ。
そして叔母さんは…ゴロゴロしている!!
「私もお金ないわー!旦那様に浮気されて疲れたしー!もう人生破滅よぉ!!あはは!」
半分壊れている!!
全員銀髪赤目の美しい容姿だが腹減り過ぎて何も考えられなくなってきてる!
このままじゃ、本当に死ぬからっ!!
フランツが立ち上がり
「ギル兄上…腹が減ったから森のコヨーテでも捕まえてくるよ…」
「ああ…すまない…フランツ…」
と弟はバッと霧になり出かけた。
「吸血鬼一族がコヨーテの血を皆で啜ることしかできないなんて!情けない!」
と俺は嘆いた!!
「あら屋敷のネズミよりずっとマシよ」
と叔母さんが言う。
「そう思うのならフランツを手伝ってくればいいのに」
「実家に帰るとゴロゴロしたくなるのよ」
と言う。このクソ叔母!!
「ていうか…ギルがどっかの金持ちのお嬢さんと婚約すればいいじゃないか?」
と父は呑気に言うが
「アホですか!こんな貧乏な伯爵家に嫁に来る魔族の貴族はいない!!後、夜会に出席する金もない!!従者もいない!!フランツを早めに婿に出そうにも持参金もないわ!!」
ともう俺は震えて泣いた。
み、みんな…
「みんな貧乏が悪いんだーーー!!」
とわんわん泣いた!!
「よしよし泣かないの?美形な顔が台無しよ?ギルちゃん?」
と母が言う。なら今着ているドレスを脱いで売ってくれ頼むから!!
だが、母が唯一売らなかったお気に入りの1着なので無理だった。父がなけなしの金で買ってくれた最初のプレゼントとかで。
何で母こんな貧乏な父と結婚したんか!!
まぁ顔だけはいいからな!!仕方ない!!
「ギル坊も人間の女に擦り寄り金と血掻っ払ってくればいいじゃん!あんた若いしできるだろ?」
「世間じゃそれを女ったらしと言うそうだよ。叔母さん…。俺はね?理想があるんだ!!運命の相手と出会うこと!節操なしに誰でもかれでも構うような女に興味もないしそんな女の血なんて吸いたくもない!血を吸うなら処女に決まっている!!」
と言うと全員ジトーっと見た。
「この童貞吸血鬼が!」
「なんだと!?じゃあ父さんがやれよ!」
「父さんは母さん一筋だ!!なんてことを言うんだ!!」
「まぁ!ファビアン!嬉しいっ!」
と父と母のイチャコラが始まってきた。
そこへ祖母がやってくる。見た目は10代の少女だが中身は年寄りだ。
「うるさいのぉ!ネズミもそろそろおらんようになってきたぞ?」
と籠の中のネズミは2匹の番らしく震えている。
「今フランツがコヨーテを捕まえに行っております。お祖母様」
この家で1番偉いのはお祖母様だ。
「そうか…今日はご馳走か…」
だがもうダメだ。コヨーテレベルをご馳走だなんて!!ボケ始めてる!!
すると玄関からフランツがドォンと戸を開けた気配。静かに開けろよ!戸が壊れる!!修理代もほとんどないんだ!!
しかも廊下をドスドス走ってくる音!
廊下を走るな!傷むだろ!
そしてバンと居間を開けるとコヨーテを1匹片手に持ち、なんと!オークの女を抱えている!
ん?
いや、オーク?女?
オークにしては変な服着てるし変な物持ってるしなんだこれ?
「痛い!助けて何なの?美少年が現れて狼から助けてくれたと思ったら!急に!」
と喋った!
「オークって頭悪いのに喋ったぞ?」
父が繁々見る。母も服を着ているのを見て
「オークが見たこともない服を着ているわ?」
「何だいそのオークは?何でもいいがよくやったね?フランツ」
と褒められたフランツは目を輝かせて言った!
「皆!違うよ!!こいつオークじゃない!!太った人間の女だよ!!」
と言い全員赤目がギラリと光った!!
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