今後の日程について

 タカエ達が無事に扉から帰還し、次の聖女はどうなるのかと会議が行われた。また異世界から呼ぶのだろうか?


 タカエ達が元聖女として提案した案は…元の世界で死んだ人を呼び寄せると言うものだった。なんでもそう言う話がタカエ達の世界ではよくある創作話であるようで普通は神様が転生させるらしい。


「だが、それじゃ…死体がこっちに来るだけにならない?ライトノベルやアニメでは死んでから一旦女神様とかに主人公が会って異世界に別の人間として転生させるんだから!」

 とアユカが言う。

 タカエとサオリは


「そ、そうね…。私達は転生じゃなくて召喚による転移聖女だもんね。安優香の言う通りかも」

 と難しい話をしていてよくわからない。モーリッツは少しわかる様だ。まぁこいつがタカエ達を召喚したしな。


「俺はもう王宮魔術師じゃないしサオリンとこの地で暮らすと決めたからもう異世界召喚なんてしないぞ」

 とモーリッツは口を酸っぱくした。


「…………あの扉の世界の浄化ほとんどしてきたから当分はこの世界大丈夫なんじゃない?」

 とタカエが考える。サオリも


「そうね。私達頑張ったからそんな直ぐには汚れないと思うのよね」


「そ、そういうもんなのか?タカエ」

 と聞いてみると


「うん。基本あの扉の中に入るとこの世界と繋がって全ての汚れが視えるようになるんだ。だから私達この世界のことも凄く判るようになっちゃったの…。たぶん意識…みたいなのが完全に溶けちゃったら世界と一体化して今私達ここにいないと思うの」

 とまた難しいことを言う。


「つまり…ここに戻ってこれたのはどういうことなんだい?」

 とお祖母様が聞くと


「それは…世界と繋がってるから…愛する人や戻りたい場所のことを一生懸命忘れないでいたからよ…」

 とタカエは俺を見て赤くなる。

 サオリも


「そうそう私と貴恵さんはともかく安優香も忘れないでいたなんて不思議だけどね」


「何よ!!私だってあんなとこで一人だけ残されるなんか嫌よ!!そ、それに…王子達のことも少しは心配だったし…」

 とこのビッチは三人を見ると三人の男達はゴクリと喉を鳴らす。おい、会議の場所でやめろ!


 そもそもこいつらは魔族の地で死んだことになってるが顔はいいからかアユカには必要なのかも。アユカは結局一人では生きられない奴らしかった。守ってもらいたいお姫様ポジションを常にキープしたい存在らしく、もはや執念で戻ってきたらしい。


 まぁこれからはスザンネ王妃様が憂さ晴らしに馬車馬みたいに働かせるらしくスザンネ様はウキウキしておられた。


「汚れの復活を感じた時には私が知らせますわ…」

 と妖精女王となった2代目ティターニアのチェルシー様が言う。

 汚れを感知したら人間の王に連絡を取りまた異世界召喚の儀が行われるかもしれない。

 だが、タカエ達のように汚れを浄化してしまえば数年単位で戻って来れる今回のようなことも判り400年前とは違うんだという対策も練ることもでき、俺たちは安心した。その為に魔族と妖精族、人間族の平和条約を結ぶこととした。


 そして死んだと思っていた王子達は人間の国に帰ることができるようになり、王子はアユカと結婚した。もちろん他の2人もくっ付いていき一妻多夫制度をアユカは作り上げてしまった。


 だが仕方ないな。まぁ人間達のことは知らん。モーリッツとサオリはなんと結婚はしたが俺たちの家の使用人になりそのまま働いたり血を提供することになった。相変わらずモーリッツの血は不味いと文句を言うと睨まれる。従者のくせに生意気だ。


 何故そうなったのかというと…俺とタカエが結婚することになったからだ。

 そう…タカエは…


 俺たちと同じ吸血鬼になることを決めたからだ。


 異種間同士の結婚…それも俺たちのような吸血鬼一族の花嫁になるには結婚式でお互いの血を飲み合うという儀式が有り、俺の血を飲んだタカエは身体は魔族となり変わるのだ。


 だからそうなると人間の血をタカエもこれから飲むことになる。サオリとモーリッツの子や子孫代々にも受け継いで血を提供すると言うからモーリッツはブーブー言ったがサオリに折れて従ったのだ。


「何で俺の血を飲むたびにいちいち不味いとか言う奴に従わないといけないんだ!腹立つ!魔族のくせに!」

 とモーリッツは言うが俺もそろそろモーリッツになんか友情みたいなのを感じてきたので


「まぁまぁ…お前の血は不味いかもだけど飲めない事もないからさ!」

 と言うと殴られた。主人に失礼な従者だ。直ぐ治るが。


「ふん!いいか!給金は貰うからな!しっかり稼げよ?ご主人!!俺たちが食っていけるようしっかり領地を広げていけ!この貧乏領主が!」

 と怒られる。借金を完済してからタカエの持ってきた紙とかもほとんど売ってしまいゼロからのスタートという貧乏領地だが、とりあえず魔族の村を近くに作る為にまたどこからか借りなくてはと頭を悩ませている。


 その借りどころがほぼ叔母さんの嫁いだ元王子のフーベルト公爵様からだと思うと頭が上がらん。叔母さんはもはや上から目線で


「可愛い可愛いギルの為ならお金貸すわよ?三倍返しだけどね?」

 と叔母さんはちゃっかり利子つけようとするし!うちに置いてやってた時の恩とかすっかり忘れやがってえええ!!


 村の建設費用だのなんだので俺は目が回るくらい忙しくなる。モーリッツもグルグルしている。


「ふざけんな!忙しすぎる!俺とサオリンは新婚なんだぞ!!てめえこのバカ領主!」

 と言われ俺も


「何だと?俺だってタカエとの結婚式もう直ぐなのに頑張って仕事片付けてるのに文句言うでねえ!給金出してやってんだからつべこべ言わずに手伝うべ!!リッちゃん!!」

 と言うと


「お前がリッちゃんとか言うな!!気持ち悪い!このクソギル!!」

 と大変仲の悪い従者と主人だが愛称言うくらいは仲が良い方でたまに寂しげにフーベルト公爵様が遊びにきた時は


「人間の方と仲良くなるってどーいうこと?俺も仲間に入れてくれ。ギルベルトのズッ友は俺だし!」

 と張り合ってきた。


「「うるさいな、気持ち悪い」」

 とリッちゃんと俺は男の友情がどうとか別に興味無かったが、フーベルト公爵様が


「何だよ、折角…借金減らして…たまにはギルベルト達誘って魔界温泉旅行に誘いに来たのにさ!…俺の費用持ちで」

 と言ったのでリッちゃんと俺はひざまづき


「公爵様!靴を磨きましょうか?」

「公爵様!肩をお揉みしましょうか?」

 とゴマスリしまくった。


 *


 まだ結婚してなくてまだ人間のタカエもすっかり夜型になり俺と同じ生活リズムになっている。


 旅行のことを伝えたら


「わぁっ!婚前旅行!?しかも温泉なんて懐かしい!!……て言っても…元の世界で私は安優香に太った身体で連れて行って貰った嫌な記憶しか無いけどね……温泉は嬉しかったけどあの頃の私太ってたし…安優香は見せびらかして高笑いするし…」

 て暗くなったから俺は慌てた。


「過去は忘れて未来に生きるんだ。もうすぐ結婚するんだし……魔界の温泉もいいぞタカエ!」


「うん、もうすぐしたら私同じ吸血鬼になっちゃうから温泉で血行良くした血上げるね!!」


「わっ!嬉しいぞ!ありがとうタカエ!俺はやっぱりタカエの血好きだけどやっぱり長く共にいたいからな…ほんとごめんな?結婚したら魔族になるけど」


「うん、気にしないで。ギルくん。で、でも私結婚式て魔族…吸血鬼に変わるけど大丈夫かな?髪の毛とか目とか変っちゃっても私のこと嫌いにならない?」

 タカエは俺をギルくんと呼ぶようになった。


「は?なるわけねぇべ!むしろ、一族の仲間入りでウェルカムだべ!皆喜ぶし、今の人間のタカエも好きだけど髪色と目が赤くなるだけで嫌いになるわけねぇべ!!……うーん、人間からしたらたぶんわかんねぇべな?


 俺も従兄弟とかの他種族の結婚式で花嫁さんが吸血鬼に変わるところ参列して見てたこと小さい頃あったんだけんど、感動したべ!何というか、吸血鬼一族にとっては血の繋がりができた瞬間は…本当に感動の瞬間で胸が熱くなるんだべ!」

 と昔を思い出して興奮する。


「ふーん、そういうものなんだね。じゃあ、ギルくんに最後に美味しい血あげられるよう温泉楽しみにしているね!!」

 とタカエが微笑む。


「そうだな!今回公爵様の奢りでタダだから満喫するべ!!タダ最高!!」


「うふふふ、ギルくんらしいね…。温泉も一緒に入れたらいいね!夜空を見ながら…」

 とタカエはうっとりする。

 そ、それはいいのか?男女別でなくともいいのか?まぁ結婚前だしいいのか?


「……タカエそろそろ夜明けがくるから眠るぞ」

 と俺は棺桶ベッドに入る。タカエも当然のようにまだ狭い棺桶ベッドに入る。これ1人用だしな!


「うう、結婚したらもっと大きな棺桶ベッドを用意するな…ごめんなタカエ」


「うん。今のままずっとくっ付いて眠るのも好きだけどね…も、もしギルくんの赤ちゃんができたら大きい棺桶ベッドの方がいいと思うし…」

 と恥ずかしそうにもじもじと言うから俺は煽られまた今日も眠れなくなりそうな朝が始まった。睡眠不足になるのはタカエが悪い。

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