魔界温泉の余興
魔界温泉へ夜のうちに向かう。
ちゃんと地下の設備もある所だから安心だ。地下にも温泉が引いてある。
地下の部屋も当然ありそこへ荷物を運びくつろぐのだ。
タカエとサオリは買い物に行き、お祖母様は早速温泉に入りに行った。フランツは温泉施設のお姉さん達に囲まれていた。
叔母さんとフーベルト公爵は夜の庭を歩きイチャイチャしている。
父上と母上は施設に備え付けのカジノに行こうとしたので叱りつけ金を取り上げておいた!これ以上借金を作んな!!
そんなわけでモーリッツと俺はのんびり男同士で施設の小鬼の男にマッサージを受けていた。
「リッちゃん…ネタ合わせをしよう」
と言うとモーリッツはため息を深く吐いて
「本当にやるのか?皆の前で…。その…サオリン達がいた世界の芸人がやっていたマンザイとか言うのを…あっ、おあお!」
とリッちゃんがツボを押され変な声だす。気持ち悪い。
「あっ…ううっ。やる。仕組みはタカエから教わった。こういうところで余興をすると…はぁはぁ!盛り上がるらしいからな!」
「変な声を出すな!気持ち悪いなっ…はぁん!」
小鬼が腰のツボを押しリッちゃんがまた変な声をだした。
「リッちゃんもらよおおおっ!…そ、そこををを!」
2人して気持ち悪いのでマッサージが終わり打ち合わせの為に夜間営業中の近くのカフェに入る。リッちゃんは魔族に変身していた。
「これが台本だ」
とスッと差し出し、ここ数年で魔族の文字を覚えたリッちゃんは読み始めた。
「どうもー、【ギルモでーすっ!】…………なんだ!ギルモって!!」
「コンビ名というやつらしい。タカエが芸人はピンかコンビかトリオとかで結成されているらしい…だから俺たちもそれを習おうと…」
と言うとリッちゃんが突っ込む。
「いや…コンビ名の方だ!ギルモって俺とお前の名前の頭文字合わせただけだろうが!気持ち悪い!子供か!」
「あっ、リッちゃんはツッコミだね。素質あるんじゃないか?」
「知らん!何だ素質って!?俺はサオリンの世界のマンザイを見たことが無いから判らないが、プロはもっと面白いんだろ?」
「そうだ…タカエが言うには毎年マンザイコンテストがあるらしく、それに優勝した芸人に凄い大金…優勝賞金と仕事がバンバン貰えて売れっ子になるらしい!なんと羨ましい世界だ!」
「ふん、無駄に弱点の多い吸血鬼は生きていけない世界らしいからお前には無理だな!」
「夜出れば何とか…」
「俺はサオリンに聞いたことがある!あっちの世界では、ソーラーハツデンなるものがあり、昼間集めた太陽の光りで夜を明るくしているとかデンキとかに変えてるとかでやっぱりお前は夜でも其れ等に当たると灰になるな!」
「げっ!マジか!?夜でも動けないのか俺たちー!!!」
「俺は人間だから動けるけどな」
「ずるい!ちょっとお前の血不味いけど仲間にしてやるから俺の血飲め」
「お前と結婚する気は無い!気持ち悪い!!」
「そう言えば、灰と言えば…タカエが前にフランツに「花咲爺さん」って物語を話していた。…灰を枯れ木にばら撒いたら花が咲いたとか」
「じゃあお前が灰になったら枯れ木に撒いてやるよ。きっと汚い花が咲くだろう」
「なんでだよ!きっとめっちゃ綺麗な花が咲くに決まってる!世界に一つだけの恐ろしく綺麗な花でそれを摘んで求婚する男が多く出るだろう!!」
「お前の灰で咲いた花なんか違う意味で血を吸ってきそうで恐ろしい上に気持ち悪くて摘めんわ!この吸血花が!!」
「ひどっ!!」
「「どうもありがとうございましたーーー!」」
とネタ合わせが終わった。
「これは面白いのか?」
リッちゃんが睨む。
「知らん…俺もよく解らん」
でもタカエはならしらけても笑ってくれるはず!もう他の奴等はどうでもいいからタカエだけ笑ってくれたらいい!
「でも…何か足りない気がする…」
なんだったかな?マンザイとやらは喋りだけで笑わせたらお金貰えるなんていい世界だよな。
「そう言えば…サオリンがツッコミの時は手をこうパートナーにバシーンとするそうだぞ!」
とリッちゃんが急に俺の胸に向け殴ったから心臓がびくっとしたよ!!
「おい、リッちゃん!強い!吸血鬼は不死身だけど急にされるとビックリするだろう?……でも確かにタカエもそんなこと言ってた」
とお返しにリッちゃんにボコーンと殴り返したら壁まで埋まった。
「お前何するんだ!痛い!無駄にバカ力だ!後、これはツッコミ担当のやつだからお前は殴るな!!いいな!絶対にだ!!死ぬから!」
とボロボロになったリッちゃんが怒った。
そんなこんなで楽しい余興の時間になる。タカエ達は普通の食事をして俺たちはちょっと血を分けて貰った。
そして皆の前でついにマンザイをすることになった!
緊張するなぁ!
打ち合わせ通りにリッちゃんとネタを披露し始めるとタカエ達はクスクス笑い出した!やった!ウケた!!他の家族も面白そうにしていた。
最後にお辞儀をすると皆拍手喝采だ。
「やるじゃないか!ギル坊!!」
お祖母様も幼女みたいな容姿で笑い転げた。
「タカエ…面白かったか?」
と隣に座り聞いたらおかしそうに
「最高でした!!何ですか?息ピッタリです!!流石ですね!ギルくん!」
と言い、フーベルト公爵が入ってきて
「いいなー、マンザイ!俺にも教えてよ!!三人だとトリオになるんだろ?」
「三人もまた息を合わせなきゃ大変ですけどね!それもまた見てみたいですね!」
と言うから
「今度はトリオマンザイだな!」
「ならギルモは解散だ」
とリッちゃんが早くも言ったのでまた笑いが起きた。
*
余興が終わり、深夜になりタカエと魔界温泉に入る。温泉の色が真っ赤なのでタカエは
「まるで血の池地獄みたい!」
と驚いていた。因みに俺たちの世界では温泉や湖に入る時は薄い入浴着を着て入る。タカエ達の世界は全裸みたいだけど。凄い世界だな!
まぁ薄い服だからタカエの胸を自然に見てしまうから俺もヤバイ。
空を見ると星が綺麗に光っている。
「綺麗ですね!」
「そうだな!来て良かった!」
「はい!」
とまるでジジババみたいに俺たちは寄り添い星を眺めた。
温泉から上がるとタカエは約束通り血をくれてとても美味しかった。
血行が良くなるとはいい。
血行だけでなく肌もすべすべで疲れも取れるし。
「タカエ…本当に人間を辞めてもいいのか?」
ともう何度目かと言うくらい聞いたがタカエの意思は変わらない。
「はい!ギルくんと長く一緒にいたいです!これだけは譲りません。それが嫌ならまた私はペットになるだけですから」
と言うタカエ。
「いや、もういいよ。タカエ。判った。ありがとう。そしてごめんな。改めて…俺と結婚して欲しい!」
と俺は隠し持っていた赤くて綺麗な花を差し出した。ちゃんと買ってリボンも付けた。
タカエは嬉しそうに抱きしめ少し泣いて
「ギルくん…幸せにしてくださいね!」
とキスをして誓ったのだった。
結婚式はもう直ぐだ。
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