結婚式で変わるタカエ

 とうとう結婚式の夜になった!!

 タカエは先に起きて支度に連れて行かれた。

 もちろん吸血鬼なので結婚式を教会でするわけがない!どこでするのかと言うと、魔族の場合は基本的に自分の家である。


 招待客に出す手紙の費用やこの日ばかりは来客用に料理人と給仕人も雇わなければならない。タカエのドレス代はケチらなかったけど。吸血鬼の一族は血で足りるからいいけど他の魔族には大食いもいるし。


 数日、家族総出でなんか獲物とかを山に獲りに行ったりした。


 フランツがでかい熊を仕留めてきたので褒めた。


「やるでねぇか!フランツ!流石弟!!」


「これを料理するコックは大変だろうけどね。腕のいいコックを雇ったんでしょう?」


「まぁ…魔王様とかも来るからな…」

 と肩を落としているが、俺の領地の村を建設中の領民たちが手伝いにも来てくれた。


「領主様!しっかりなすって!!女房も料理は手伝えるべ!」

 とオークの妻がエプロンつけてやってきた。


「兄上、一瞬昔のタカエだと思ったんじゃない?」


「そんなことはねぇべ!」

 とドキリとした。

 オークの奥さんたちは厨房に消えていき、妖精族の来賓や人間族達もゾロゾロやってきたようだ。俺はタカエより先に支度を整えて挨拶した。人間族は夜だから腹が減ったとか疲れたとか眠そうだ。


 久しぶりにアユカもやってきた。


「ギルバート様なら浮気してもいいわよ?」

 とまだ言っていた。

 後ろの3人の男達が睨んでいた。


「呼ぶんじゃ無かった」


「私は貴恵に呼ばれたのよ!!」

 とアユカはブーっと膨れた。


「あーあ、貴恵がついに魔族の吸血鬼になっちゃうなんて!!そんなの信じられる?」

 とサオリとモーリッツに話しかけるアユカ。


「貴恵さんはそれで幸せだって言ってたんだからもうぐだぐだ言っても仕方ないわ。私達は先に死んじゃうんだから」


「それよ!!タカエは魔族になっても若い容姿で私達は老いて死ぬなんてほんと…やるせないわぁ!!」


「まだぐだぐだ言ってる!本当に安優香ってプライドが高いのね」


「違うわよ!美意識が高いの!!」

 と言い合っている。


「そろそろ時間ですよ。ギルベルト様」

 とモーリッツがきっちりと敬語を使ったので皆ビクッとした!!


「リッちゃん!?変な薬でも飲んだ?」


「オホン!今日は結婚式ですよ。主の。今日だけはお、私もきちんとしようと思います。明日からは戻りますが」

 と言い、皆はホッとしたのを見てリッちゃんが何故だ!?と不思議な顔をしていた。


 月が昇り、ようやく式が始まる。

 悪魔神官の前に黒いドレスを着たタカエと俺は腕を組みあるいてきた。参列者も見守る。


「これより!結婚の儀を執り行う!!」

 それに魔族達はウオオオオオオ!!!と獣の声を出して妖精族は祝福の粉を撒き散らし、人間達は怯えた。


 金の杯が二つ用意された。異種族間の結婚で2人ともこの中に自分の血を入れる。吸血鬼一族の場合はタカエの血はちょっぴり飲めば俺はいいが、タカエの方は杯半分くらいは俺の血を飲んでその場で同族へと変わるのだ。


 皆その瞬間を待っていた。


 これでタカエの血を飲むのも最後だな…。


「では血の乾杯を!」

 と悪魔神官が言い、カチンと杯を合わせて俺とタカエは互いの血を飲んだ。

 タカエの血は今までで1番美味しいと感じた。


 そしてタカエはゴトンと飲み干した杯を落とし


「うううう…」

 と呻き屈む。


「タカエ!俺が付いてるぞ!」

 と手を握る。

 タカエの黒髪がみるみると銀色になり、黒目が赤く染まり始めた。


「はぁはぁ!ううっー!ぐうううう!!はーーーーーっ!すーーーー!!」

 と呼吸が安定してタカエは立ち上がる。


「無事魔族へと変換した!!花婿よ!花嫁のヴェールを上げて皆に顔を!!」

 と神官様に言われ俺はドキドキとヴェールを上げた。


 髪の毛と目の色は変わったが美しく生まれ変わったタカエも前のタカエもどちらも同じだと思った。


「ど、どう?どうなっていますか?」


「とんでもねぇ美人」

 と笑うとタカエも照れた。


 皆に魔族となったタカエを見せると拍手喝采やら咆哮やらなんかキラキラした光やらが舞い一層騒がしくなった!!


 俺とタカエは祝福のキスをして皆は夜中騒ぎ踊り戦った。

 アユカを見たタカエは


「安優香…の血不味そうだわ」

 と言ったのでアユカは


「はあ!?私みたいな美女の血が不味いわけないでしょうよーー!!ブルジョワの血よ!?ふざけんじゃないわよっ!!」

 と言いアユカは血をちょっぴりタカエに舐めさせてサオリと比べて見るといい、俺も一緒に舐めて見たところ…。


「リッちゃんより不味くないか?」

 とタカエや家族達とヒソヒソ言い合いアユカは


「な、なんでよっ!!?」

 とキレていた。

 人間達も一応毎月定期的な血の提供などを吸血鬼一族に商品として納品する協定などもできたから人を襲うとかいう風習は無くなりそうだ。俺たちももう杭でぶっ刺されたりしなくても良いみたいで、吸血鬼ハンターの制度はなくなることになり双方仲良くすることになった。


 式の後の初夜と言うか…吸血鬼の場合は朝なんだが…、この日の為にコツコツと貯めておいた大きな2人用の棺桶ベッド。高かった。

 ふざけんなってくらいは値切ったけど。

 例の金の為ならなんでもするドアーフに頼んだ。


 黒いドレスは既にきっちりと大切に保管する事になる。今はとても魅力的な薄い服を纏っている。

 タカエも朝陽を気にしてしっかりと2人中に入り蓋を閉めた。暗闇でも目が良く視えるし、視力が上がったことや身体が魔族へと変わったとき、吸血鬼の血の力やいろいろなことが出来る様になったことを感じたという。


「魔族となった事…後悔してないか?」


「……不思議な感じ…。身体の作りが細胞まで変わっちゃって……でもギルくんが嫌わないでいてくれたことが本当に嬉しい…」


「前のタカエも好きで、今も好きなのは変わらない。これからずっと側にいられる」

 タカエの額に優しくキスを落としたりしながら囁いた。


「タカエ…俺と共に生きてくれてありがとう。改めてよろしくな」

 と言うとタカエは


「ギルくんと出会えて拾われて本当に良かった!拾ってきたのはフランツくんだけど…もしこの家に来なかったら私はあの時あっさり魔物の餌になっていたし…。元の家族に会えなくなるのはとても寂しいけどそれを埋めてくれたのはここの家族だから…これからも私やっていけると思います」

 と涙ぐんだ。


「俺もタカエと会わなければきっと一生借金地獄で結婚なんかしていなかった。タカエはオークだったし、人間だったし、ペット時代もあり、俺の聖女であり、異世界人であり、今は魔族で俺の嫁だ。…次は何になるかな?」

 と笑うと


「私としては人間から魔族に変わっただけですっ!もう変わらないから!……あ、…で、でも…」


「どうした?」


「魔族に…なってから…ギルくんとこれから初めて…」

 とタカエは赤くなり可愛い。


「タカエ…魔族になって少し胸が大きくなった?…これ以上大きくなるとタカエの服がまた特注になってしまう…どうしよ…」


「その時は自分で作ります!そんな心配をするなら…今日は普通に寝ます?」


「え!?冗談だろ?タカエー…もう俺我慢できない…」

 とまるで極上の一夜を味わった。

 新婚なので毎朝毎夜本当にイチャイチャと過ごしたのだった。



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