アクセサリーを奪い合う長男

 タカエの胸に合うアクセサリーを夜会までに買わなければ!


 しかし…俺は今まで女性にアクセサリーを贈ったことも無ければ興味もなくそんなもんただの飾りだし必要もない物としか捉えておらず、センスが無いと思う!

 いや、ぜ、絶対に無いこれ!!


 どうしよう!買ってくると言っといて変なの買ってしまったら!あ、あのドレスは赤かったし。同じ赤でいいのか??


 困ったな…。タカエは何でもいいと言ってくれたが凄く悩む。


 タカエとはあれから俺が起きて棺桶から出ると部屋にいる事が多くなった。


 身支度を…まるで妻のように手伝ってくれるようになった!接近されるので嬉しいしドキドキしてしまうしつい頰にキスをしたり…こ、これがイチャラブかと思ってしまう。


 また、俺の部屋にはソファーは置いてなくて椅子が一脚あると言う節約をしていた為にそこに俺が座りタカエを膝の上に乗せたりした。棺桶の上に座るのはなんかおかしいし。別にやらしいことはしていないがもう一脚椅子を買うまでと言い抱きしめるだけに留めている。


 また、夜2人きりで一応ある庭園の奥の芝生で膝枕をして耳掃除をされた時は天に逝くかと思った。タカエは魔族の耳が少し普通よりもとんがっているのが珍しいみたいで俺の耳を触りまくられ俺は少し感じた。ヤバイ。


 冷静になるのが必死だ。

 たまにキスをするけど紳士的に振る舞い欲望を抑え深くはしなかった。タカエにもし嫌がられ嫌われたら嫌だし。


 恋人同士だと言うのに実に真面目ににこやかに側にいるだけで幸せだった。


 夜会が近づくたびに切なくなる。だってタカエが帰る方法が判るかもしれないのだ。

 嬉しいやらしんみりしながらやらで俺の心は切り替えが大変だった。


「というわけでタカエに似合うアクセサリーを選ぶの手伝って欲しいのですが…」

 と俺は叔母さんのとこにイチャイチャしに来たフーベルト王子に頭を下げた。

 すると王子は


「俺とエミーリアの甘いひと時を邪魔するなんて!無粋な奴め!」


「いや、そもそも王子があのドレスを選んだのでしょう!?」


「少しぐらいセクシーで何が悪いんだ?サイズは合ってたんだからいいのに。俺の見立ては完璧だな!」


「うるさい!王子!タカエの胸を今後見るなっ!絶対にだ!」

 と言うと王子は


「判ったよ…付き合うよ。確かに女に興味の無かったギルベルトがアクセサリー選びなんて失敗するに決まっているからな」

 と言い切った。

 うう…反論出来ない!!


 王子は少し待てと言い叔母さんの部屋に消えて30分後に出てきた。

 叔母さんは部屋から


「行ってらっしゃーい♡早く帰ってきてね?」

 と甘ったるい声を出して王子はそれにメロメロで


「判ってるよハニー♡続きは後で♡」

 とか言ってる。やだなぁ。我が家が穢れる。早く出てって欲しいわ。


 最近フランツの姿がない。

 妖精族の友達と遊びに行くことが多くなっていた。

 お祖母様も血飲み友達ができて年寄りの会合に参加する様になった。

 今までは貧乏で参加すら出来なかったらしいが、タカエの紙のおかげで少しずつ我が家は潤いつつあるし借金返済も最近頑張ってるからなんだかうちの評価は少し良くなってきた。


 そしてモーリッツが魔族に化けてなんとサオリとの結婚に向け仕事を始めた!流石に王宮へは帰れないので魔族の地でやってくつもりなのか悪魔召喚士やら悪魔呪術士やら怪しい商売を始め金を貯め始めた。


 サオリもモーリッツの魔術で魔族に化けて魔族の病院に勤め出して勇者にやられて怪我をした魔族たちを癒している。感謝されまくっている。流石聖女。タカエも聖女だけど相変わらずうちの家事をしてくれて助かっている。


 タカエは掃除や家事が好きだし花を贈ると喜んで今度は受け取ってくれる。でも軽いキスや軽いスキンシップのみでタカエを大切にすることに決めた。タカエが元の世界に帰ると決めた時の足枷にならぬようにと。


 *


「あの店はどうだ?」

 と魔族の王都にやってきて高そうな店を指差す王子。


「あ、あんな高級店…入ったこともないべ」

 と震える。店の外見が貧乏人は立ち入り禁止とでも言うくらい立派な店だ。


「大丈夫だ。金無いなら俺が出してやる」


「い、いんや!タカエのアクセサリーは俺がちゃんと買うだ!!は、初めて買うんだべ!!」

 と譲らなかった。

 やれやれと王子は肩をすくめ店に入る。

 内装が高級店でやはり煌びやかだった!


「うぐううう!!」


「どうした?ギルベルト!?」

 と王子は心配した。


「……あまりの高級さに…脳がグラグラして…胃がキリキリする!うう、高い金の匂いがするべ!」


「しっかりしろ!ギルベルト!!まだ店に入っただけだぞ!!数歩しか動いてない!タカエにプレゼントするんだろ?正気を保て!」

 と言われてハッとする。

 そ、そうだ!こんな所で目眩を起こしているわけにはいかない!!タカエのあの谷間を隠すほどのアクセサリーを選ばないと!!


 するとこちらを見る少年がいた。フランツと似たような背丈だが、魔族のどっかのお坊ちゃんらしく蜥蜴頭の執事悪魔も従えている。

 王子は変装して店に入っているからバレていない。城をホイホイ抜け出してくるんだから街の人もこんな所に魔族の王子がいるわけないと思っている。

 俺も最初そうだったし。


 少年はフンと貧乏人を小馬鹿にしたように俺を見て笑う。フランツとは違い可愛く無いな。小鬼かな?角がぽこりと生えかけていた。


「気にするな。ギルベルト…これはどうだ?」

 とショーケースのアクセサリーを眺めて言う王子。とんでもない高そうな宝石のついた大きな黒い真珠のゴテゴテしたネックレスがある。

 ひえええ!!


 しかしそこに先ほどのボンボンの少年がやってきて


「我はこれを所望する」

 と偉そうにいい執事が


「はい!坊っちゃま!支配人!これを包め!」

 と支配人はあっという間にそれをケースから出して持っていった。

 なんて嫌な奴だべ!人が選ぼうとした物を横から邪魔された。王子も少しむっとしたが子供なので見逃して


「次を見ようかギルベルト。よく考えたらあれはそんなにあのドレスには合わない」


「んだべ。もっと良いものにするべ」

 と少年から離れた。

 王子は次のアクセサリーを発見した。


「ギルベルト、これなんかどうだ?銀のお前の髪色に近いぞ。材質は銀に近いけど違うんだ。銀に似せた鉱物でできてる。吸血鬼は銀に触れないからな。


 でもこれならお前も触れるぞ」

 と勧められたのは確かに俺の髪色に近くて綺麗な可愛らしい花に模したデザインのアクセサリーだし値段も何とか届くものだった。

 たぶん本物の宝石よりも安いだろう。

 俺はそれが気に入り王子にお礼を言いこれにすると決めた。


「これなら隠せるほど大きくあるしあのドレスにも合う!ありがとう王子!」


「いいんだ!ギルベルト!俺たちは友達だ。良かったな!さっさと買お…」


「我はこれを所望する!!」

 王子が買おうと言い切る前にまたあの少年がやってきて俺たちが見つけたアクセサリーを指さした!


「おい!待つべ!それは俺が先に見つけて買うとこだべ!」


「貧乏人め!誰に口を聞いておる?我はマルクス・レオ・ヴィルヘルム・オンケン。ドラゴン種雷竜一族の侯爵家次男だ!」

 と言う。小鬼じゃなかったのか。


「いやいや、俺たちが先だから!なっギルベルト!」


「そうだべ!後から来て失礼だべ!いくら侯爵家と言えども…」


「我にたてつくのか?死にたいのか?」

 と言うが執事が止めて


「坊っちゃま!大丈夫です!ちゃんと好きなものは全て坊っちゃまのものです!支配人これを!」

 とまた執事が呼びつけ俺は焦った。


「こら!ガキ!てめえ!身分をかさに来てずるいべ!!これは俺のもんだべ!!」

 とさっさとそれを取り上げ


「支配人さん!これは俺が買うんだべ!!」

 と言い支配人は困る。


「愚か者め!寄越せ!」

 と少年がピョンピョン跳ねる。執事は


「どうか…お願いです。それを坊っちゃまに差し上げなさい平民!」

 と言われてカッチーンと来る!


「俺は一応これでも魔貴族だべ!!吸血鬼一族のギルベルト・ベルトホルト・ヴィンターだべ!!」

 すると少年は笑いながら言った。


「ヴィンター家?知ってるよ!うちから借金してる貧乏吸血鬼一族の名だ!!」

 と!ひっ!ひいいいいい!!なんてことだ!こんなとこにも返済しなければいけない家の人が!!


「これは我がいただくのだ!良いな?」

 と少年が笑う。

 そこで王子がついにため息をつき変身した!!巨大なベヒーモスを見て固まる少年。


「ひっ!あ、貴方様はまさか!!」

 と震えた。


「そうだ。貴族ならば誰もが知っていよう?俺は魔王の息子。第三王子のフーベルト・ゴットリープ・ペートルス・ジーモン・ブライテンバッハだ!俺の友達のギルベルトはどうしてもこれを買いたいのだ!」

 と言うと少年はガタガタ震えてついに床に膝をついて謝った。


「ごめんなさいいいいい!殿下のお友達と知らず!!そちらはお譲りしますううう!」

 とようやく権力差で決着がついて俺は無事にタカエのアクセサリーを買うことができた。






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