キスを拒まれる長男…そして改装後の屋敷

 俺は考えた。

 とりあえずタカエは魅了が効いて俺のこと好きな筈だ!じゃあもうすんなりキスしてプロポーズして押し倒して子作りしておけばオールオッケーではないか?

 めんど臭いから結婚式なんて金のかかることは省いてしまえばいい。


 そして花を摘み見つめるタカエに声を掛けた。


「タカエ…キスをしようか?」

 と言うとタカエは


「はっ!?」

 と言い固まりかけ


「な、何で?何でいきなり??」

 と困りながら不思議がった?あれ?魅了効いてるよな??普通嬉しがるよな??あれえ?


「え?魅了効いてないのか?タカエ」


「は!?はい?魅了ーー??吸血鬼にはそんなのもあるんですか?いや、ギルベルトさん達は確かに綺麗だしカッコいいし素敵だなー?とかは思いますよ?普通に!


 いやいやでも…キスとかは違いません?私達別に恋人同士じゃないでしょう?そもそも私皆のペットなんでしょ?」

 とタカエは言う。なんと!効いてないんだ!魅了!!うへええええ!!


 どうしよう!キスしようとか言っちまった!!


「タカエ…そ、そのう…あのう先程のことは…」


「まさかねぇ!私みたいなオーク女をギルベルトさんが好きになるはずないですしね!何でそんなこと言ったんです!?」

 と問い詰められた!


「いや、今のタカエは痩せてて美少女になったと思うよ?うん!だから…」

 と言うとタカエは


「痩せて綺麗になったからってすぐそう言うこと言う人ではないですよね?ギルベルトさんは!そもそもギルベルトさんはお金第一の吸血鬼です!!数ヶ月一緒に暮らしてるんです!貴方が簡単に女に靡くような人じゃないことくらいバカでも判りますよ!!」

 と言い当てられ俺はガーーンとなった。


「さ、流石異世界人だ、タカエ…。俺が金のことで頭がいっぱいだと気付いていたとは!」


「異世界人でなくとも気付きますよっ!!」

 とトドメを刺されて俺は白状させられた。



「んはぁーーー!!!?けけけけ、結婚ーーー!?」

 と皆の計画を聞き驚くタカエ。一応断ったら勇者とか倒す為にこれから家族で訓練しないといけない事なども伝えた。


「ああ、そう言うことですか…。なら何でキスなんかしようと?」


「花をあげる→キスする→プロポーズする→子作りする…で大体終わるかなって」

 するとパァンとタカエにぶたれた。全くダメージないが。


「バカですか!なんなんですかその流れ作業みたいな!!それ全然違いますよ!嬉しくないし!」


「えっ!!だ、だって俺は曲がりなりにも美形の多い吸血鬼の一族の端くれだし一応見目はいいはずなのにど、どうしてだ!?」

 と理解できなくて聞くとタカエの目が呆れたように半目になった。


「私は異世界の人間だからもしかしたら魅了は効かないのかもしれませんがあれですよ。アイドルとファンみたいな関係だと思ってるんですよね私。憧れですよ」


「ううん…?」


「まぁつまり身分違いですかね?こっちの言葉で例えるなら。それにペットからいきなり恋人とか結婚とかギルベルトさんもしっくり来てない中キスしとけば何とかなると思ったんでしょう?それからは単純作業でお金かからずに済むとか」

 なっ!


「俺の思考を読めるのか!?タカエ!」


「いや、ギルベルトさんが分かり易いんですよっ!はぁー。顔が良いのに残念と言うか」


「残念とか言うな!キスをしてみないと判らないじゃないか!」


「嫌です!絶対にしません!!」


「そ、そうか…やはりタカエは元の世界に戻りたいよなぁ…」

 そうなるとやはりこれから鍛えないとなぁ。


「…………でも…こういうのって…確かに中ボス的な位置の皆さんはあっさり聖女とか勇者に殺されるのがオチなんですよねぇ…」

 とタカエは言う。タカエの世界の物語ではよくそう言う展開になる事が多く必ず魔王は勇者に倒されるのがオウドウらしい。


「そんなの鍛えてみないと判らない…」


「いや、無理です。昼間に突入されて家壊されて太陽の元に皆さんを引きずりだして灰にしたら一発で全員死にますよ?吸血鬼弱点多すぎですよ。異世界から来た私達だって吸血鬼の弱点なんてアホほど知っていますよ!」


「な、なんだと!?タカエ俺達の弱点を知っていて暮らしていたのか!お前!俺達のことをよく灰にしなかったな!」

 と聞くとタカエは嬉しそうに


「だって皆さんはこの世界の人間に捨てられた私みたいなのを飼ってくれたからね!私親切にしてくれたのは魔族でも恩返ししないといけないって思ってるし!…だから…結婚はともかくもう少し安全な方法で何とかできないか考えようよ」

 とタカエは言った。


「人間と吸血鬼の寿命が違うからって色々考えてくれてありがとうね。…でもギルベルトさんちゃんと恋して本当に好きな人と一緒になった方がいいよ?今は恋とか判らなくても好きな人ができたら自然と判るよ。私もそうだよ。別に今は好きな人もいないしさ」


「そうか…。自然とか…。なんかごめんなタカエ。変なことを言って。もう直ぐしたら改築も終わるしまた色々考えて結論を出そう…」


「そうだよ!ギルベルトさん!私の紙をまた売ったらお金できるからそしたら夜会とかにも出て素敵な人も見つかるよ!恋し放題だよ!」

 と言う。


「お、俺はそんな誰でもいいわけじゃないんだからな!!節操なしと一緒にするな!」

 と怒るとタカエはあははと笑ってその顔にちょっとだけ胸が痛んだ気がした。


 *


 そしてついにドワーフから完成したとの知らせが来て俺達は改築した新しい我が家に帰る。


「おおっ!!流石ドワーフ!!見ろ!あの素敵ないかついガーゴイル像!!今にも動き出しそうだ!本物のガーゴイルは動くけどあれ偽物の石なんだぞっ!!」

 と俺はケチった箇所を指摘した。本当だと本物のガーゴイルを金で雇わないといけないから結構かかるんだよな。


「でも、兄上…ガーゴイル像ちょっと少なくない?もうちょっと多い方が迫力が増すのにポツンポツンとしか…」


「黙れ!!節約ズラ!!ガーゴイルなんかいっつも屋根の上の方に待機してんだからバレねぇべ!!本物雇ったら上から糞落としたりするから掃除も大変になるべ!!おめぇが掃除すんか?フランツ!!」


「うわ、出た!!わ、わかったよう!石でいいよ!!」

 とフランツが焦る。


「まぁ新しくなった事だし文句は言わないようにしよう!」

 と父上が中に入ろうとして止めた。


「待て!父上!そこは玄関じゃない!」


「えっ!?」

 と父上達は驚き止まった。


「ここは侵入者用の罠を仕掛けたからフェイク玄関にしているんだ。扉を開けたら落とし穴だ。作動すると金がかかるし戻すのも大変だから本当の玄関は裏手の狭い入り口なんだ」

 と案内して裏手に回る。


「えっ!?こ、この木戸なのぉ?ちっちゃい!!屈まないとくぐれないじゃないのぉ!どう言うことよ!ギル!」

 とエミ叔母さんが言う。


「一見して玄関に見えないしこんな所から通ってくる恥ずかしい勇者達もいないだろ!」

 それに俺達は霧にもなれるから隙間さえあればすんなり入れるんだからわざわざデカイ入口なんかいらん!!


「いや私らが恥ずかしいよ!来客はどうすんだよ!!」

 とお祖母様に叩かれたが仕方ない。今じゃタカエも潜れるサイズだし大丈夫だ。

 とタカエを見る。タカエはすっかり痩せた美少女だが胸だけは名残りでデカかった!!


「タカエ大丈夫!胸がつかえたら引っ張ってやるから…ブベ!」

 バチンとタカエに引っ叩かれた。


「セクハラはやめて下さい!」

 とわからないけど怒られた。


 ともかく中へ入る。


「おお!中は広いし陽も当たらないいい作りじゃないか!!流石ドワーフ!!」

 と父上が感心した。これなら地下に潜って寝なくてもいいな!と部屋のドアを開けようとして動かない。


「え?開かないけど鍵かけたか?」


「いや…1階と2階は全てフェイクドアで部屋なんかありませんよ。後、罠そこら中に仕掛けたので踏まないように!金かかるから!」

 と俺が言うと全員


「「「「はあああああああ!?」」」」

 と叫んだのだった。

 結局夜にしか行けない3階の部屋と地下にそれぞれの部屋やキッチンを作っておいたのだった。

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