追い出されたフクロウベア

 フクロウベア…この森に住むマッチョなクマのような身体を持ち頭は可愛いフクロウの魔物だ。夜行性である。


「ふうー、そろそろ秋かあ…。獲物を貯めて冬眠する準備しなきゃ…」

 と自らの巣穴に戻ると…


「え?」


 何か知らないけど銀髪赤目の吸血鬼伯爵一家とペットかなんかのオークがいた。


「え?」

 信じられなくて2回も「え?」って言った。


(何だろう?何で伯爵様達がここに?何か用事?)

 フクロウベアはとりあえずお茶を入れようとして長男のギルベルト様に止められた。


「勝手に入ってすまん。フクロウベア…。実は今、我が家は建て替えの最中になってしまってな…。ほら、金さえあれば魔族でもどんと来いの妖精族のドワーフの大工がいるだろ?あいつらに今仕事して貰ってるんだ…。金を払ってな」

 とギルベルト様が言う。

 あれ?金って…建て替えって…そんな金ギルベルト様達伯爵家あったの?だって魔族の中でも借金まみれでこないだまでヒーヒー泣いてるような感じだったのに??


「あ、あの?なんか賭博でもして儲けたとか?」

 と言うとギルベルト様が怒った!

 そんで思い切り顔面殴られて巣穴から2.3メートル凄いぶっ飛ばされた!!


 木とか何本か貫通した。吸血鬼って弱点クソ多いのにクソみたいにバカ力あるしね!


「うう…い、痛え…」

 と背中をさすりながら何とか巣穴まで戻ってきたフクロウベアにギルベルト様は俺の貯めてた食料を袋に包んで渡してくれた。


「え?」


「そう言うことで…とりあえずここ借りるぞ。うちの建て替えが完成するまで…フクロウベアはどっかその辺に穴掘って冬眠してくれな」

 とちゃっと手を振られた。


「ええええええ!!?」

 これにはフクロウベアも抗議したい!!

 だって自分の快適な巣穴をなんか建て替えの間に勝手に借りられてる!!酷い!!横暴だ!


「何か文句でもあるのか?」

 ギルベルト様の赤い目と後ろから何個もの赤い目が光って物凄い威圧を感じる!!

 ヤバイ!

 すると奥からキンキラのドレスを纏ったコルネリア夫人がやってきた。


「フクロウベアさん今晩わ。良い月夜ね?赤くて血のような月…。うふふ、ところで質問があるのよ。前からずっと疑問で聞きたかったのぉ」

 と奥様が言うので


「な、何でしょうか?」

 と聞くとギラリと爪が伸びた!!


「フクロウベアさんて身体は熊肉…頭は鶏肉で血はどうなってるのかしらぁ?熊の血と鳥の血両方詰まってるとか??」

 ヤバイ!殺されて血を啜られる!!


「ひっひいいいい!!わ、解りました!!ど、どうか我が家で良ければ建て替え中お使いくださいませええええ!!!


 でででは!私はこれにて失礼!!!」

 と俺は全力で走り巣穴としばらくお別れした。



 *


「ふふ!優しい森の熊さんねぇ!良かったわね!ギルちゃん」

 と母上はニコニコしているがあんたが爪伸ばさなかったらあんなに怯えて逃げ去ることもなかったろう。魔族の王…つまり魔王様とかに報告されてデュラハン様とかが押しかけてきたらどうすんだ?


 デュラハンは首なしの魔族で首は脇に抱えて身体の方は男にも女にもなれるという変な魔族だ。だが格式高い貴族様なので絶対知られたら怒られる。


 あのドワーフの大工にも金をほとんどやってしまったのでうちの財政はまた苦しくなった。

 いやノートを売りに行けばまた金は作れるだろうが…そんなしょっ中大金を持って帰ると絶対人間の世界で話題になってしまう!


「ノートの紙の価値がわかった以上はこれからは慎重に換金しないといけないな…。商会はもう使えん。闇ルートの商人に売りつけ仲介してもらおう…!」

 と俺は決めた。

 なのでまぁとりあえず家ができるまでこの巣穴で寝る!!


 ここなら朝日も当たらないし大丈夫だろう。タカエは


「虫とかいそう!!」

 とか怯えていたが…虫など一瞬で追い出せる超音波を吸血鬼は発せれるから大丈夫だと言うとタカエは


「え…凄いね。なんか吸血鬼ってバルサンみたい!!」

 とよく判らないが拍手されたからいい。


 叔母のエミーリア通称エミ叔母さんは


「ねぇ~…熊の毛が落ちててやだぁ!」

 と贅沢言う。


「うっせ!!熊の毛皮でも腹に巻いて寝てろ!!」


「いや毛皮じゃなくて抜け毛よぉ?」

 と言う。父上は


「まぁ少しの辛抱さ!じきに建て替えた綺麗な我が家が拝めるんだ!ドワーフの腕前は知ってるだろう?妖精族と言えど仕事はきっちりしてくれるさ!」

 と綺麗な顔で笑う。それからそこでもラジオタイソウとかしつつ、タカエの異世界の話を家族で聞いた。タカエも貧乏な暮らしをしていたこともあり親近感が湧きもはや家族同然のような感じだ。ペットも家族だもんな!!


 タカエは俺たちに定期的に血をくれたしタカエも自分のご飯を作っている。朝は起きてられないけど俺たちは数週間くらい保つがタカエは毎日食べなきゃ死ぬから毎日持ってきた食料を節約して食べていたからたまにぐうとお腹を鳴らしていた。


 そして少しだけ細くなった気がする。

 聞いたら朝から巣穴近くを走り回って痩せようとしてるみたいだ。


 この辺の魔物は朝ほとんど寝ているから安全らしい。そして昼間は俺たちの服なんかを洗濯してくれているみたいだ。巣の近くに水場があるからとそこでゴシゴシと洗い、陽の光でお洗濯をしてくれているから俺たちの服が以前よりなんかいい匂いする。


 実は石鹸とか言うのを手作りして作ったとか言った。四角いもので泡立てる。植物から作れるらしい。


「いいなぁ…僕…タカエの世界行ってみたいな」


「…フランツ!」

 と俺が注意するとタカエは首を振り


「いいんだよ?戻れないの判るし…」

 と少し元気はない。


「タカエごめんよ。僕そんなつもりじゃなかったのに」

 とフランツが言う。そこにお祖母様が来て言った。


「もしかしたら…魔王様なら…帰る方法…いや、世界線を越える方法を知っているかもしれないよ…でもね…魔王様だから…流石に気軽に話せないよ」


「そ、そうですね…」

 ぶっちゃけ魔王とフレンドリーに会話できる魔族なんていない。機嫌悪いとひと睨みで灰にされてしまう。無理無理!!

 ……でもタカエ…帰りたいよな…。



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