タカエは第三王子を引っ叩く
すっかり酔いの覚めたフーベルト王子は辺りを見渡し人気がなくなると巨大なベヒーモスという牛の様な魔獣に変身した。
「さて特別に俺の背中に乗せてやるから案内しろ!ギルベルト!」
「ひっ!恐れ多い!!わ、私は飛べまするので!!」
と言うと
「ああん?友達の背中に乗れないのかよぅ!?」
いや、普通乗らん。友達でも乗らん。
「ひい!はっ!で、では…」
とそろりと背に乗ると猛スピードでぶっ飛ばした!!
んぎゃーーー!酔う!!飛んだ方がマシっ!!
「そ、そっこの角を…右…うぷっ…」
と頑張って俺は耐えて何とか我が館に到着すると人型に戻り見上げる。
「ほーん、普通の館だな。ガーゴイルもいるな」
「あのガーゴイルはほんとの石像で動きません」
と言うと爆笑された!!
「おもしれーな!!ほんと!!ウケる!!で、正面玄関はフェイクだろ?まぁ壊すのも可哀想だし裏から入るか」
「ええ、ほんとすみません。王子に屈んで入らせるなんて!」
「おもしれーからいい!!」
と裏手に周り小さな木戸をくぐる魔王様の息子。魔王様が見たら激怒される!!
すると上からお祖母様が顔を出した。
「ギル坊お帰り。おや?友達かい?」
「ええとお祖母様…あのこの方は…」
と言うと王子に口を塞がれる。
「はーい!!街で仲良くなったギルベルトの友達でーす!遊びにきましたー!!お祖母様?若いですね!流石だ吸血鬼一族!!」
「おやそうかい?おだてても何も出やしないよ?」
うん、本当に貧乏だし何も出ない…。
「お構いなくー!」
王子が上機嫌で上の居間に行くと早速モーリッツとサオリがイチャイチャ掃除をしていて
「おお!人間だ!?お前がタカエ?」
「何だ貴様!?魔族か?俺のサオリンに手を出そうと言うのか!?」
「リッちゃん!!素敵♡」
とか言っている。
おいいい!やめろぉ!王子殿下の前だぞおおお!!お前ら如き一瞬で消せるぞ!?
まぁ消してくれてもいいけど。
「なんだ?違うのか?どうでもいいや。次々!」
と言うとフランツが顔を出した。フランツはお客様に礼儀正しくした!流石フランツ!
「いらっしゃいませ!兄上のお友達ですか?兄上がお友達を連れてくるなんてそんな日が来ようとは!ううっ!」
と涙ぐむ!辞めろ!!そんな!
「え?ギルベルト友達今まで居なかったの?可哀想ー!マジ哀れ!!」
と涙ぐむ殿下。
「いやいや、フランツもお友達なんていないだろ?」
と反撃に出たがフランツは
「いや、僕はいます。妖精族にたくさん。魔族も下位の者たちと身分隠して平民装って仲良く遊んでおりますよ。うちが貧乏で無ければお招きしたんですけど…」
とにっこり笑むから撃沈した!
ごめん!フランツ!そりゃこんな家に友達も呼べないよな!ごめんな!!
殿下は笑いに耐えていた。
今度は母上や父上が来た。
父上は王子を見てはて?と言う顔をした。
「あら?ギルちゃんのお友達?珍しいわねぇ!うふふ」
「お綺麗なお母様だな!」
すると父上が
「あっ!!思い出した!!こここ、これはもしやや!第三王子フーベルト殿下ではございませんか!?」
と膝を立てた!!父上!何処かで見たことがあったのか!?
「あちゃー!バレたか…。内密に頼むよ!へへ!」
と言うとお祖母様もフランツも先程と違い膝を立てた。
「し、失礼を致しました!お顔を拝見したのは初めてであり!」
「僕も王子様になんて口を!どうぞ罰を!」
とフランツも震えたが殿下は頭を撫でて
「いいからいいから!それよりタカエとか言う人間はどこ?ギルベルトの好きな人間」
と言うとフランツは
「ラジオタイソウの準備を…最近人間の世界のピアノが手に入ったのでございます…」
「ピアノ?よくわからないが楽器だろう?人間の世界では高価ではないのか!?何故貧乏なお前たちがそれを…?それにラジオタイソウとはなんだ?」
と殿下が不思議がったので汗がダラダラする。
「まぁいい!タカエとラジオタイソウとやらを見せてくれ」
と皆して3階に上がるとタカエはジャージを着てピアノの前にいた。最近例の金の為ならなんでもするドワーフにピアノを発注したのだった。その為に人間の遠い国に行き紙を一枚売って金にしてきたんだ。
「お前がタカエか?凄い美少女といい乳だな!揉ませろ!」
といきなり言うのでタカエは怒り
ベチーンと殿下を引っ叩いた!
これに皆あわあわとした!!
「タカエ…」
流石に不味いぞ!!
「ごめんなさい!お客様でもセクハラ発言は女の敵です!」
とタカエは言う。まぁ、いきなり失礼なことを言う殿下も確かに悪いんだが殿下に謝れとは言えない!
「変わった服だな。それに俺を引っ叩くなんて流石ギルベルトの女だ!」
「え?」
とタカエが不思議がるので慌てた。
「殿下!ラジオタイソウを見学なさるのでしょう?タカエ演奏を頼むよ」
と言う。するとやっとエミ叔母さんも起きてきて欠伸をする。こっちもジャージだ。
殿下はエミ叔母さんを見て
「おい!素敵な女性がいる!好みだ!!紹介しろ!」
と食いついてきた!
ええっ!?
「叔母さんのエミーリア・バルバラ・ブライトクロイツです。一応結婚しておりますが旦那に浮気され実家に寄生しております羽虫です」
と言うとエミ叔母さんが怒った。
「ギルったら酷いわ!傷心の叔母さんに対して!」
と嘘泣きをするオバン。
「そうだぞ!ギルベルト!叔母様を泣かせてはならんぞ!こんな美しい人に!」
「まぁ!若いのに良い友達ができたのね?ギル!」
「はいっ!ギルベルトの大親友です!フーベルトと申します!」
と聞き、あれ?どっかで聞いたな?と叔母さんも首を傾げ父上に耳打ちされ衝撃を受け畏った。
「でで…殿下が何故こんな身素晴らしい所に!?」
「ああ!美しいひとよ!頭を上げて欲しい!そうだ、ラジオタイソウとか言うのをするのだろう?貴方もそれをするのかい?」
「ええ、ま、まぁ。なんだか健康に良いそうなので…タカエ。始めましょう」
と叔母さんがタカエに合図するとタカエはうなづいてピアノを弾き始めた。独特の曲で聞いたことがない!新しい!と殿下が不思議がった。
タカエは弾きながら例の
「腕を前に上げてー…」
と言い出し皆はそれに従いタイソウした。
殿下は不思議な動きに釘付けになった。
そして一通り終わると拍手された。
「何とも不思議な動きだ!!ピアノに合わせ動くのか。掛け声もあり面白い!!ラジオタイソウ…広めよう!!
こんなの見たの初めてだ!……タカエ…お前ただの人間ではないのか?」
と勘の鋭いフーベルト王子は聞いて全員ギクリとした。
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