魔王様の息子と友達になる長男

 それからも注意してもどっかでイチャついてる母上達やらモーリッツ達をたまに見かける。

 夜買い物に出かけると魔族の間でも恋の季節なのかやたらとあちこちから求愛のダンスをかます奴がいたり女の子をかけて戦うミノタウロス達もいた。

 恋の季節というよりかは繁殖期なのかもしれない。

 なんとあの魔王様の息子にも嫁募集の張り紙があちこちあった。


 確かにそろそろ魔王様も息子達に結婚して世継ぎを作らないといけないからか。魔王様達の顔は俺は夜会に参加できないくらいの貧乏人なので見たこともないが。


 すると魔族の酒場で暴れまわっている奴がいて外に追い出されてふてくされていたので話しかけた。

 俺と同い年くらいの背格好で頭の横に角が一本あり、一本は折れている。


「今晩わ…大丈夫か?」

 と言うと


「あ?大丈夫かって?大丈夫なもんか!久々に酒場で女の子に声かけたら逃げられた。俺はモテないんだ!!」

 と赤ら顔で酔っ払いながら泣き出した。

 見たところ髪は金髪と黒が混じった様で目は魔族特有の赤目。モテそうな顔の作り。ジャランと貴金属のアクセサリーをつけている。服は上質だが、着崩して胸まではだけさせ色気を出しているのか。因みに手の甲にはタトゥを刻んでいた。


「チャラチャラアクセサリーつけすぎなんじゃないか?」


「えっ!?アクセサリーが悪いんか?イケてね?これ?」


「それだけじゃなくて…もっと誠実にいけばいい!身なりも整えてキリッとした方がいいぞ?」

 と知らん奴にアドバイスしているが俺もタカエに誠実にしていても何も進展しないのを思い出した。いや俺が悪いのか?


「誠実とか言ってたらお前なんもできねーぞ!?女をさっさと押し倒すくらいじゃないと!!」


「節操なしめ…」


「なにぃ!?お前に何が分かる!?見たところ吸血鬼一族か?顔が良くて上品にしていると女は自然に寄ってくるってか?吸血鬼一族はプライドの高い金持ちが多いもんな!」

 と言うから俺は怒る。


「ざけんな!吸血鬼一族にだって貧乏人はいるだ!俺んちがそうだべ!魔王様の夜会にだって金なくて参加する服も満足にねぇ!出会いも何もねぇ!家計簿と睨めっこ!借金も少し!

 おまけに好いた女は俺の気持ちなんか気付かないし!」

 とぶっちゃけると


「え、可哀想…俺より可哀想…。んじゃ俺のアクセサリーやるから金にしていいぞ?

 あ、お前名前は何という?」


「…くれるなら貰うけどいいんか?俺は…ギルベルト・ベルトホルト・ヴィンター。伯爵家子息だ。吸血鬼の端くれだよ…」


「ヴィンター家…知らんなぁ」

 我が家の知名度もついに地に落ちた。


「お前こそ何もんだ?魔族の貴族か?」


「まぁな、三男坊だから遊び放題だ!でも見ての通りなんか女にモテない!!ははは!…俺はな、フーベルト・ゴットリープ・ペートルス・ジーモン・ブライテンバッハだ!よろしく!ギルベルト!」

 と言うから目が点になる。なんかどっかで聞いたことあるような??

 いや、結構有名なような??


 あれ?魔王様の息子の一人がそんな名前だった気がする。

 同じ名前かな?いや…こんな所に魔王様の息子様が酒飲みに女口説きに来ているわけねぇ。


 と思っていると羊頭の執事風の悪魔が飛んできた!


「フーベルト様あ!またお城を抜け出しましたね!?こんなにお酒を飲まれて!安い酒は身体によくありませんぞ!?」

 とガミガミ言う。俺は横でガタガタ青くなった。思わず低姿勢だ。

 王子じゃん!!魔王様の息子様じゃん!!第三王子様じゃん!!物凄い軽口叩き恋愛アドバイスを偉そうにかました!!


 自分も恋愛経験ないくせに!ひいいい!!


「おいギルベルト!どうした?お前?俺の正体が判ったからってそんな畏るなよ!俺たち友達だろ?」

 と肩をガシリと掴まれ、


「おいヒエロ!俺は友達の家に今日は泊まるから後よろしく!行こうぜ!ギルベルト!!」


 えっ!?


「フーベルト様!魔王様に怒られますよ!?」


「いつも怒ってるじゃん?さぁ!行こうぜギルベルト!」

 とフーベルト王子が背中を押す。

 ヤバイぞ!!ヤバイ!!ヤバイいいいいい!!


「フーベルト王子!お言葉ながら…うちでは満足なもてなしは皆無でございます!!何もありませんよ!!?」

 するとフーベルト王子は


「さっき酒場で安ウマな飯を食ったから腹は膨れてる。王城の飯なんていつも冷めてて不味い!高級魔物肉でも冷めてたら不味いんだ。それを仲の悪い兄弟のしかめっ面やら強面の父上の顔を見ながらもそもそ食ってると胃が痛くなる!抜け出したくなる気持ち判らない?」


「吸血鬼は血しか飲みませんので判りません!それに部屋が無いです!最近じゃ、借金して勇者対策様に建て替えたのでフェイク部屋や罠を仕掛けておりまして!!げ、玄関もフェイクで狭苦しい裏口の木戸から殿下を入れるなど不敬極まりないので!!」

 と何とか止めようとするとますます興味持った!!


「な、なんだと!?面白すぎる館ではないか!!それは是非行ってみたい!!」


「だめです!罠作動したらお金かけて直さないとですし無理です!」


「そんなん俺が直してやるって!心配するな!行こうぜ!ていうか案内しろ!!」

 ひいいいい!!


「そういやお前それなんだよ?金無いくせに買い物?どれ見せてみろ」

 と持っていた袋を取り上げられた!!

 ぎゃーーーん!!


「なんだこりゃ?人間用の食料?それに布やら…」


「ええと…」


「くんくん。…そういやお前から人間の匂いがする!いるのか?人間が!」

 ううううん!!


 俺はついに泣いた!!


「殿下ごめんなさい!!人間を飼っておりましてももももちろん…血用で…殺さずに…。ですが魔王様に献上することが難しく…あ、1人残して貰えれば他の2人は連れて行ってもらってもいいんですが!!」

 となんとかタカエだけはと必死に頭を下げた。


「…………しかし…なんだこりゃ?花?」

 ギクリとした!

 タカエが俺の部屋の棺桶で眠る様になったから花でも飾ろうかと一本だけ花屋から買ったんだ!いつもならその辺に生えてるものを千切ってくるだけだけど、人間の女の子は花が好きだと言うし。


「お前は家畜に花を贈るのか?」

 もう汗だくになった。


「そそそ…それは…母上にと…」

 と苦しい言い訳をした。


「いや、花は好きな女に渡すもんだろ?俺だってそのくらいは判るぞ?」

 この世界は花は好きな人に贈るものである。


「まさかお前…家畜を…人間の女に惚れてるのか!?」

 真っ青になり汗だけダラダラ出した。

 何故判る!?


「お前…すげえ判りやすいな!余程の鈍感じゃ無い限りバレバレだぞ!!?」


「ええっ!?そ、そんな!!タカエは俺の気持ちに気付かないのに!?それじゃタカエが余程の鈍感と言うことに!!?」

 と俺はしまったと思い口をつぐんだ。


「ほほう、お前の好きな人間女はタカエと言うのか!興味深い!見たい!早く連れてけ!友達だろう!?」

 とニヤニヤされた!!

 ひい!いつ友達になったんだ!!?


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