ラブラブに当てられる長男

 タカエに加えて人間が二人増えたから餌代が増えた。家計簿と睨めっこしているとタカエが血を持ってやって来た。


 いつもより多い!


「タカエ!そんなに血を抜いたのか!?」


「ううん、あの二人から貰ったよ。お礼だって」

 なんだ。あいつらの血か。と半ばがっかりしたがタカエに傷が付くよりは…と思いつつハッとした。


「そういえばタカエ…。お前…いつも俺たちに血をくれていたけど包帯一つ巻いてなかったな!?」


「ああ…うん…なんだか言いそびれちゃった。私にも少し傷を治す力があるみたいで自分で傷口に手を当てると治っちゃうんだよ」


「そうか…やはりタカエも聖女の力を持ってたのか…」


「うん…でも私も大した力は無いと思うよ。沙織さんのがきっと強いだろうし」


「いや、きっとタカエのが強いさ!俺たちに遠慮して聖女の力のこと隠していたんだろ?」

 聖女だと判れば魔族は魔王様に報告しなければならない。だから今まで力のことは言わずにいたのだろう。


「う…ごめんなさい。私が要らなくなったら魔王に売ってもいいよ?」

 と言うから俺は怒る。


「タカエはうちの家族同様だ!そんなことしない!!貧乏だけど家族を売るまで落ちぶれちゃいないさ!そりゃタカエが元の世界に帰りたいならなんとか魔王様に相談してみるが…」

 と言うとタカエは嬉しそうに微笑み


「ありがとう!ギルベルトさん!いい魔族と出会えて良かった!!」

 と言うから俺は心が苦しくなる。本当は帰って欲しく無いと思ってしまう。サオリとモーリッツのように。

 ずっと居てくれたら。


 *

 そのサオリ達は相変わらずラブラブであった。夕方近くに起きるとキッチンでタカエと三人で夕飯作りをしているが料理を作ったことのないモーリッツはもはや邪魔であった。


 卵を割る時も殻が器に入り込み汚らしい。床にも卵が落ちていた。


「おめぇ…卵を無駄にすんな!床に落ちたヤツはおめぇが食え!」


「何だと!?無茶言うな!もう無理だ!この卵を食えって?流石魔族!狂ってるな!」


「なら最初から手伝うでねぇ!!ぶっ飛ばすど!?」

 と拳を鳴らして威嚇する。

 タカエやサオリはともかくモーリッツは宮廷魔術師だったしいい暮らしをしていたのだろう。明らかに貧乏に慣れてない。

 モーリッツは怯んだが


「くっ!この守銭奴が!変な田舎言葉使いやがって!俺の魔道具を売ったらちょっとくらいは儲かるはずだろ!?」


「黙れ居候のくせに!何上から目線で言ってるべ!?おめぇ達がタカエの部屋使ってイチャイチャしてると思ったら腹立つだ!」

 するとモーリッツは赤くなり


「なんてこと言うんだ!俺たちは清い関係だ!アユカ達と一緒にするな!」

 成る程。普段はサオリンとか言っておきながらこいつも童貞かもしれない!時間の問題かもしれないが。


「まぁ、サオリンとは将来を誓い合ってはいるがな!!どうだ!羨ましいだろう!?」

 と自慢してきた!!


 くーー!人間のくせに!

 するとタカエが


「陽が沈んだから皆さん起きて来ますよ?ほら位置につきましょう!皆でラジオ体操の時間でーす!」

 と3階に移動すると皆ゾロゾロと集まった。

 モーリッツは


「またあの不思議な儀式をやるのか…」

 と言っていたがサオリは


「違うよ、儀式ではなくラジオ体操ですよ?ふふ、健康になるのよ!リッちゃん♡」


「そうか…サオリンが言うならそうだな♡」

 と言いモーリッツもサオリの横でタイソウし始めた。


 時々手が当たり恥ずかしそうにしている。

 うざい。


 俺だってタカエと手が当たりたい!

 チラリとタカエを見るとフルフルと大きい胸が揺れておる!

 だめだ!煩悩!!

 と前を向く。


 しかし前には父上と母上が今度はラブラブ手を繋いでタイソウしている!

 何を変なアレンジしてるんだ!!タイソウに!!


 あっちでもこっちでもハートだ!

 くそう!


 タカエの作ったスゴロクもサオリは手を加えて人生ゲームにして見ようと言い


 スゴロクの中で擬似結婚や子供ができるシステムや葉っぱを集めてお金替りにした。

 中々楽しめたがゲームでもサオリとモーリッツが結婚するたびにチッと舌打ちしながら葉っぱのお祝い金をやるのが腹立つ。


 ゲームだけどな。

 フランツがそれを見て、


「兄上ゲームなのに心が狭いよ!葉っぱじゃないか!」

 と思わず言われた。


「こいつらが幸せにしているのをみるとなんかイライラしてくるんだ!!ちっ!」

 と言うとモーリッツは


「ふはは、そうかそうか、寂しいのだな?魔族のくせに!その容姿ならモテるだろうが金が無いばかりに惨めな男だ!」

 とバカにされる。ぶっ殺すぞこいつ!!


「追い出してやるから魔物に喰われろ!お前らの不味い血なんか欲しくも無い!」

 と言うと


「失礼なやつめ!!俺とサオリンの仲が羨ましいのだな?」


「羨ましいわけあるか!鬱陶しいだけだ!目の前でイチャイチャと!!」

 と俺とモーリッツは額を合わせて怒鳴る。


 フランツがバカらしそうに見ている。


「悔しかったら兄上もタカエとイチャイチャすれば良いのにね?タカエ?」

 とタカエに聞くがタカエはすっぱりと


「あはは。フランツくん。私はギルベルトさんとは何でも無いのですよ?ギルベルトさんにも今にもきっと可愛らしいお嬢様がお嫁さんに来てくれますよ」

 と笑っていたので俺はガクリと落ち込んだ。同情してモーリッツが


「惨めな男だな…」

 と肩を叩いた。その顔は完全に勝ち誇っていた。

 凄いイライラする。



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