逃げてきた二人を匿う

「ここだ!間違いない!!」

 とフードを被った男が言い、もう一人のフードを被った女は寄り添うように


「行きましょう…ともかく…まさかここまでは来ないといいけど…」


「………あれは酷い聖女だ。君と違って!!ともかくここにもう一人の聖女がいるのはわかっている!」

 と二人は正面玄関から戸を叩くが反応無し。

 仕方がないなと押して入ると罠が作動し二人は落とし穴の酸の泉に落ちる寸前で男が呪文を唱えて女を抱えて何とか浮遊した!!


 *


「あっ!!!誰かが罠を作動させたよっ!!」

 とフランツが反応した。3階の居間で我等家族は優雅にタカエ考案のスゴロクとか言うので遊んでいた!!


 こちらの世界の比較的安い紙で作ったサイコロを振りこちらの世界の同じくやっすい布の上にタカエがマスや文字を書いたスゴロク。文字の勉強にもなるし遊びながら覚えれることでタカエも交えて家族で楽しげに遊んでいたのだ!!


 しかも俺がヒャクマンエンと言うタカエの世界の通貨の結構お高い金額を貰えるところ(妄想)だったのに!!

 よりによって罠にかかったバカが来やがった!魔族のお客さんには表の立て看板に魔族語で字を書いて


【来訪は裏の木戸へ回ってください。正面は勇者とかアホンダラの人間用の罠仕掛けてますので】

 と丁寧に書いてるのに読んでないのか!?


「どこのアホンダラ魔族だべ!!チックショー罠に引っかかってしまうとは!あれ元に戻すの金かかる言うたやんど!!ぶっ飛ばしてくるべ!!」

 と俺は立ち上がる。


「落ち着いてよ!兄上!間違いなんてあるよ!ね?」

 とフランツも付いてきて玄関を見ると…

 落とし穴からフヨフヨと魔術か何かで浮いてくるフードを被った二人。


「ん?この匂いって…」


「ま、まさか!人間!!?」

 フランツが青ざめて俺の後ろに隠れた!!


「ま、まさか!勇者か!?アホンダラ勇者なのか!?」

 と叫ぶとフードを脱いだ女と男が顔を見せる。女は黒髪美少女で男も黒髪の長髪美形だった。男は杖を持っていた。


「夜分済まない!!ここに人間の聖女…タカエウシジマがいるだろう!?」

 と男は言い女も


「タカエさん!!私です!!沙織!浅野沙織ですー!」

 と言うとタカエが顔を階段から出した。


「さ、沙織さん?」

 階段から降りてきてタカエはサオリとか言うのと顔を合わせて一瞬サオリは


「え?だ、誰??」

 と戸惑ったが


「もしや!貴恵さんなの?牛嶋貴恵さん!?わぁ!痩せてたから一瞬わからなかった!凄く綺麗!!」


「ありがとう!沙織さんも無事だったんだね!?魔術師さんも一緒?良かった!私の言うこと聞いてたの?」

 と言うと魔術師の男は


「あの時はすまなかった。止める暇もなく。だが君の言葉を聞いて注意してサオリンのことを見ていたんだ!」


「さおりん!?」

 とタカエは言うとサオリとかいうのは赤くなる。


「リッちゃんやめてよ!サオリンなんてバカップルみたい!」


「リッちゃんんん!?」

 とタカエはまた驚いた。

 どうやらバカップルらしい。なんか見つめあってる。


「それで?俺たちを退治しにきたのか!?人間よ!」

 と俺が言うとサオリは


「違うの!私達逃げてきたの!お願い匿って!」


「タカエの言う通り…あのもう一人の聖女のアユカは…恐ろしい女だ!日に何度も何度もサオリンを太らせようと残り物やお菓子を与えようとしていた!」


「私、胃が小さいから食べれないって断ったら泣いて王子や他のイケメン神官や宰相にすがり私が悪いみたいにさせられて!!


 無理矢理食べて吐いたりする生活が続いていたの!」


「ひ、酷いわ、安優香!や、やっぱり私と同じ事を沙織さんに!!」


「貴恵さんがこっちに来る前に私に教えてくれた事本当だった!ごめんね、あの時は直ぐ召喚に巻き込まれたし貴恵さんも連れて行かれてどうすることもできなくて!!


 ともかく唯一リッちゃん…このモーリッツ・マルコ・ハーゼンクレファーさんに相談して助けてもらったの!こっそり食事を回収して孤児院に送ったりして…


 でもバレる前に逃げないといけないし、魔王を倒す旅に出ることになって各地の魔族を倒しながら隙を見て私達逃げ出したの!」


「酷いのだ!アユカはサオリンにばかり兵士の傷の治療をさせて自分は王子や他のものの軽い擦り傷のみ治してイチャついていた!!」


「安優香って自分さえモテればいいタイプだから…」

 とタカエがぼやく。


「ともかく上で話そう。何かしたら血を吸って殺してやる!」

 と言うとサオリは怯えた。


「よしよしサオリン俺がいるから大丈夫だ!」


「リッちゃん!!」

 とまたキラキラムードになりもういい加減にしてくれよ!


 *


「と言うわけで…勝手に逃げてきた二人だ!」

 と家族に紹介した。


「まぁ…でもこれでタカエ一人に無理させて血を貰わなくても良くなったね。ジュルリ」

 とお祖母様がよだれを垂らす。


「なんだこの幼女は!」

 とモーリッツがびくりとする。


「え?今まで貴恵さん一人で6人分も血を?」


「まぁね。私、元の世界でも献血行ったりして終わったらお菓子とかジュースもらえるじゃん?」

 とタカエは慣れてる様に言った。


「タフ!思ったよりタフだね!!貴恵さん!!」


「しかしこれでタカエに仲間ができて昼間一人じゃなくなったな!」

 と父上が喜ぶ。毎日一人で昼間は寂しかったろうなタカエ。


「でも…待ってよ!部屋数がたりないわよ?この屋敷はほとんどフェイク部屋だし。あ。私の部屋は明け渡さないわよ!?」

 とエミ叔母さんが指摘する。

 確かに地下の部屋は余ってないぞ?するとフランツが


「じゃあタカエの部屋を貸してあげてタカエはギル兄さんのとこで眠ればいいよ。僕たちはどの道夜起きてるから使わないし」

 と言うから仰天する!!


 おおい!!


「なっ!なんつーこと言うだ!フランツ!!タカエをおおお俺の棺桶にでも寝かせるのか!!?」


「いや普通にベッドもう一つ買ってくればいいじゃんなら…」


「あにいいい!?この居候バカップルにベッドを買ってやるなんて!!勿体ないべ!!」


「何!?何というケチな魔族だ!」

 とモーリッツが睨む。


「はんああ!?今までぬくぬくと人間の快適な城で暮していたおめぇらに貧乏人の気持ちさわかんネェべ!!貧乏なめんじゃねぇ!!」

 と言うとぐうとモーリッツは黙る。


「それにおめぇら金目のものをとりあえず出せ!!売れるものは全部金にするべ!!」

 と俺が言うと


「ひいっ!さすが魔族!!がめつい!!」

 と言った。

 フランツが


「いや兄上がセコいだけ」

 と言うがとりあえず売れそうなものや全財産を没収した。王宮の魔術師だけあって無駄に魔道具を隠し持っていた。逆にサオリは持ち物が少ない。


「ごめんなさい…私の持ち物全部安優香に取られて厳重に管理されてるの…取り返すのはあきらめたわ」

 と言った。

 なんてやつだ!もう一人のくそ聖女は!


「やっぱり安優香も紙が貴重だって気付いたんだね?」


「ええ…だから私の鞄から何から取り上げて自分の物にしてる。宝物庫に結界を張ってるから魔族でも近寄るの無理よ」

 と言った。


「安優香と沙織さんは聖女の力を持ってるの?さっき傷を癒せるみたいなこと言ってたけど」


「ええ一応。でも安優香は擦り傷程度しか治してるところ見たことないわ。もしかして推測だけど私より癒しの力弱いんじゃないかしら?」

 と聞くとお祖母様が


「それならこちらにも勝機があるね。大した力もない聖女なんて役に立たないだろ」


「俺とサオリンがパーティから抜けた今、奴等の戦力や回復力は大幅に下がるはずだ!そこを寝返った俺たちが討てば…」

 と完全にモーリッツはやる気モードだ。


「勇者たちを倒したら魔王様の所に報告に行くがサオリはやはり元の世界に戻りたいか?」

 と俺はサオリに聞くと…意外にも首を振った。


「ごめんなさい!私…できればリッちゃんとここで生きていきたいかも!真実の愛を知ったし!それにリッちゃん…私といつか家庭を作りたいって。誰も知らない地へ行って幸せに暮らそうねって!」


「サオリン!そ、それは二人の秘密だ!」


「あっ…ごめんなさい!リッちゃん♡」


「サオリン♡」

 なんだろう?イライラする。

 なんか二人の空気に皆呆れ出した。


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