第28話 義姉の新たなる技能
村を出て北上して行く俺たち。
道中はモンスターと戦いながら進んで行く。
「モモちゃん、行ったぞ」
「了解了解! 任せといて!」
俺たちが現在戦っているモンスターはゼブラビー。
白黒のしましま模様の蜂型モンスター。
大きさは人間と同じぐらいで、キラリと怪しく光る針が怖い。
それが数十匹俺たちの周りを飛んでおり、一匹ずつ仕留めていた。
動きは結構迅いが、相手の『力の扉』は閉じている。
本来の速度を出せないゼブラビーは、モモちゃんの包丁に両断されていく。
俺も襲い来るゼブラビーを切り裂いてゆき、義姉ちゃんは魔術で敵を炎上させる。
義母さんは怯えた様子で義姉ちゃんの後ろで周囲の様子を窺っていた。
というか義姉ちゃん、前ほど怖がってないような感じがするな。
今も堂々とまではいかないにしても、落ち着いた様子でモンスターを倒している。
「ムウちゃ~ん! いつまでこんな危ないの出てくるのぉ?」
「いつまでって、冒険してる限りは出て来るぞ」
「えええ……こんなの怖い~!」
大声で泣き叫ぶ義母さん。
その声にゼブラビーは痙攣を起こしバタバタと地面に落ちていく。
「…………」
ゼブラビーを全滅させた義母さん。
モモちゃんは義母さんを半目で見ながら包丁を腰にしまう。
「役に立つ時は役に立つよね、ママ」
「え? そ、そうかな。えへへっ」
「これがいつもだったら嬉しいんだけど」
俺もモモちゃんに同意である。
この能力をコントロールできれば……もしかしたら俺たちの中でも最強になれるのではないだろうか?
そう思えるぐらいには強力だと思うんだけどな。
それからも北へと進んで行くと、ゼブラビーが次々と現れた。
俺たちから見れば大して強くはないが、これだけの数がいるとさすがに辟易してくるよ。
モモちゃんたちも疲れ始めており、そしてその隙を狙われ義姉ちゃんがゼブラビーの針を受けてしまう。
「…………」
青い顔で刺された腕を見下ろす義姉ちゃん。
俺は義姉ちゃんを刺したゼブラビーを真っ二つにし、義姉ちゃんに近づく。
「大丈夫か?」
「…………」
分からないと言ったような表情。
心配そうに俺を見つめる義姉ちゃん。
腕は……紫色に変色している。
俺はすぐさまに義姉ちゃんの『回復の扉』を開く。
すると変色した腕は元に戻っていき、ホッとため息をつく義姉ちゃん。
「すぐに治って良かった」
コクコクと頷く義姉ちゃん。
だけど少し不安そうな表情をしている。
モモちゃんはたくましいからまだ大丈夫だとしても、義姉ちゃんと義母さんは俺が守ってやらないといけないな。
そう考えた俺は二人の近くを離れないでおこうと考える。
が、義姉ちゃんが俺の服を引っ張り、何か言いたげな顔を向けていた。
「どうしたんだ?」
義姉ちゃんの口元に耳を近づける。
彼女の吐息が耳に当たりゾクリとするも、しっかりと小さな声を聞く。
「……分かった」
義姉ちゃんはどうやら、モモちゃんみたいに新しい能力が欲しいということであった。
俺は彼女の言葉に快諾し、『心の扉』を開く。
◆◆◆◆◆◆◆
義姉ちゃんの心の奥に潜り込み、一緒に技能の扉を開く。
そこは俺と同じように、玉が一つ浮いているだけであった。
「…………」
ここでは義姉ちゃんの考えていること、感じていることがダイレクトに伝わってくる。
頭の中に直接話しかけられているような気分だ。
「どんな能力が欲しいんだ?」
「…………」
自分と皆を守れるような技能。
漠然と義姉ちゃんはそう言っている。
義姉ちゃんは義姉ちゃんで家族のことを守りたい。
心の底からそう想っているようで真剣な想いをひしひしと感じる。
いつも俺とモモちゃんに守られてばかりだけど、自分だって皆を守りたい。
その気持ちが痛いほどに伝わってくる。
俺はその想いに応えるべく、義姉ちゃんの技能について真摯に考える。
義姉ちゃんの技能、
『技能創造』を使用するとするなら、これと関連付けしなければならない。
どんなのがあるだろうか。
「…………」
すると義姉ちゃんは何かを思いついたらしく、俺の方を見て考えを伝えて来る。
「……うん。いいんじゃないかな」
俺の返事に頷く義姉ちゃん。
彼女は玉に手を触れ、能力創造を選択する。
◆◆◆◆◆◆◆
意識が戻り、義姉ちゃんは二本の杖に視線を落とす。
「もしかして、お姉ちゃんの技能創造したの?」
「そういうことだ」
ゼブラビーと戦いながらこちらに視線を向けているモモちゃん。
義姉ちゃんは周りにいるゼブラビーを見据えながら、二本の杖を動かし始めた。
風と炎が混じり合い、飴細工のようにドロリと溶ける。
それを杖で形作っていき、一匹の虎が姿を現せた。
するとその炎と風を纏った虎が動き出し、ゼブラビーに襲いかかる。
「え? 何それ?」
ゼブラビーを殲滅していく虎。
これが義姉ちゃんの新しい技能、【描出】。
義姉ちゃんの意思で動く絵を二つの杖で描き出すという技能だ。
モモちゃんはそれを見て仰天していた。
絵の能力は高いようで、楽々ゼブラビーを倒している。
強くなった自分に喜ぶ義姉ちゃん。
俺もそんな義姉ちゃんを見て、内心喜びに喜んでいた。
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