第4話 技能創造
【
それは俺が創造する技能を生み出せるという、とても素晴らしい方法みたいだが、二つほどルールがある。
それは、自分が所持している技能からしか派生できないということ。
そしてもう一つは、所持している技能と関連付けさせなければいけないということだ。
俺の技能【鍵】。
これを進化で手に入る物とは別の力を手に入れられると言うわけだ。
新しい技能を入手するよりも、こちらを伸ばすほうが手っ取り早いし効率がいい。
【
俺は自身が考える技能を創れるということに心を弾ませながら、新しい技能のイメージをする。
「……うん」
【鍵】の玉に触れ、イメージした技能を言葉にする。
「鍵と倉庫。これをいつどこでも使用できるようにしたい」
そう言うと、抑揚のない女性の声が頭に響く。
『技能を拡張するためにはスキルポイント1万必要になりますがよろしいですか?』
「ああ」
『では【
玉から青い光が溢れ出す。
凝視できないほどの光量に、俺は目を閉じる。
光が収まり目を開けると、玉には何の変化も見られなかった。
しかし、映し出されている文字に変化が訪れる。
鍵:熟練度114514
開閉 力の扉 心の扉 成長の扉 倉庫
『
ちょっと待て。
どんな物でも創り出せるって、今さらながら凄すぎやしないか?
心の扉を開けるようになったのついこの間で、試したことも無かったけど……なんでもありかよ!
俺はさらに胸を弾ませていると、ふと別の技能ことが頭に浮かぶ。
「鍵で自分の想像する場所への扉を開いて、好きな時に好きな場所に移動したい」
『技能を拡張するためにはスキルポイント1万必要になりますがよろしいですか?』
「よろしいです!」
『では【
先ほどと同じく、青い光を放つ玉。
光が収まると、新しく『
俺は喜びを爆発させ、すぐさま元の場所へ帰ろうとしたが、もう一つだけ気になっていたことを思い出した。
「【鍵】を使うのにMPの消費を軽減することは可能なのか?」
『【
「MPゼロ!? そんなの取らない手はないでしょう。お願いします」
『スキルポイントは5,000消費しますがよろしいですか?』
「もちろん!」
『では【
玉が淡い光を放ち、『MP消費ゼロ』が追加される。
俺は玉から手を離し、そそくさと元の場所へと意識を戻す。
◇◇◇◇◇◇◇
宿屋のベッドの上で意識が帰ってくる。
時間は大して経過していない。
以前はMPの消費が激しかったのか、ドッと疲れたのだが……今は疲れも何も感じない。
これなら宿を取る必要も無かったかな。
俺は起き上がり、新たな【鍵】の性能を確かめることにした。
「開け、倉庫」
ヴンッという奇妙な音がすると共に、突き出した右手の前に空間が口を開く。
入り口は人間一人入れる程度の大きさ、だが中は無尽蔵の広さがあるように思える。
真っ黒な空間で、夜空を思い出すような光景。
「これが倉庫か……どれだけでも物を入れれそうだな」
これでモンスターを倒しても魔石の所持に困らないというわけだ。
歓喜に振るえる中、もう一つの力を確認する。
頭の中に、とある場所をイメージする。
そして右手を前に出し、無いはずのカギをカチッと開けた。
すると先ほどと同じ奇妙な音が鳴り、目の前の壁にポッカリと穴が開く。
向こう側には村が見えた。
「おおっ……本当に使えるな」
空間移動。
自由に好きな場所へと行き来できる技能。
これは役立つなんてものじゃないぞ。
俺は開いた穴を通り、向こう側に足を踏み入れる。
背後で穴は閉じ、俺は村の景色を見渡した。
のどかな村で、木造の家ばかりが建ち並んでいる。
空気もパールバロンよりも新鮮なように感じられ、牛が鳴く声が聞こえる。
ここはキターダの村。
俺の生まれ故郷だ。
パールバロンから遠く離れているはずだというのに、一瞬で到着してしまった。
俺はスキップ気味に走り出し、実家の方へと向かう。
周囲と同じく背の低い木造の建物。
ただし、家の鍵は10個ほどついている。
これは俺がつけたのだが……現在使用しているのは下から二番目の物だけだ。
俺は技能でその鍵を開け、中へと入っていく。
するとそこには、食事の用意をしている美少女の姿があった。
茶色のフワフワの髪でおさげを作り、強気な瞳の奥は宝石のようにキラキラしている。
料理をしていたのか、手には包丁を握り、可愛らしい服にホットパンツ姿で、すらりと伸びた足は柔らかそうで素晴らしい。
胸は無いが大きな態度の、俺の可愛い義妹、モモちゃんである。
「ただいま、モモちゃん」
俺の言葉にモモちゃんが振り向いた。
「おにぃ!」
パッと眩いほどの笑みを浮かべ、こちらに飛んでやってきたかと思うと、勢いよく俺の胸に飛び込んで来る。
モモちゃんを抱きしめながらくるくるとその場で回してやると、彼女は大喜びし、俺の首に回している腕の力をさらに強めた。
相変わらず甘くて良い香りがするなぁ。
「おかえり、おにぃ。ご飯は食べたの?」
「いや、まだだ」
「そっ。じゃあ今から作るから待ってて」
俺から離れると大きな瞳でパチンとウインクして、モモちゃんは台所へと戻って行く。
久々に義妹の手料理を食べれるということに、俺はときめきのようなものを胸に覚え、テーブルの席に着くのであった。
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