第31話 性能変化
「うーん……武器、どうするかな」
「武器? ……確かにこれからモンスターが強くなってきたら、今持ってる物じゃ太刀打ちできなくなるかもね」
「私が買ってあげた短剣じゃダメなの?」
瞳をウルウルさせて義母さんは俺にそう訴えかけてくる。
俺は焦って否定し、彼女を安心させようとした。
「ち、違うって! このままじゃ通用しなくなりそうだからさ、どうやったら通用するかを考えてるんだよ」
「どうやったら通用するかって……強くしたらいいんじゃない?」
「あのねママ。そんなことできたら誰も苦労しないの」
モモちゃんにそう言われてしゅんとする義母さん。
俺は義姉ちゃんに腕を組まれながらやれやれとため息をつく。
だが俺はそこであることを閃き、義母さんの体を抱きかかえる。
「義母さん! さすがだぜ! 義母さんの言う通り、強くすりゃいいんだよな!」
「え、ええっ? ……私、偉い?」
「偉い偉い! これで問題は解決できそうだ!」
妙な笑みを浮かべながら顔を赤くしている義母さん。
俺は義母さんを下ろし、早速『心の扉』を開いて、自身の内面へと潜り込んだ。
◆◆◆◆◆◆◆
「おにぃ、急に抱っこしちゃって……ママも喜びすぎ」
「うへへっ……ムウちゃんに抱っこされた~」
体をくねくねさせている義母さん。
自身の内側に潜っていたというのに、やはり時間は経過していない。
俺は自分の武器を腰から引き抜き、それをジッと眺める。
「で、強くすりゃいいって、どういうことなの?」
「こういうことだよ……」
俺は短剣に埋まっている白いバトルマギの扉を開く。
バトルマギ
レベル0 属性 無
性能――
「え……ステータスみたいにバトルマギの性能が表示されてる……」
「ああ。武器やバトルマギなんかの性能を表示できるようにした。そしてアイテムの性能を改造できるようにもしたんだ」
「改造……?」
「ああ。【性能変化】」
【鍵】を使い、アイテムの性能の扉を開き、アイテムの性能を強化する技能。
これができると心の内側で知ってから高揚が収まらない。
バトルマギなどの性能を変化させることができるようになったのだが、一つだけ条件がある。
それは別のアイテムを消費しなければならないということ。
バトルマギに対しては……『魔石』か『バトルマギ』が必要のようで、俺は空間に収納している魔石を取り出し、それを短剣のバトルマギに近づける。
すると白いバトルマギが光を放ち、魔石を飲み込んでしまった。
「なるほど……魔石を食べさせることによってポイントがたまるみたいだな」
「ポイント……?」
「うーん。まぁお金みたいなものかな。欲しい技能が欲しかったら、それなりのポイントをためて買えってことだ」
「ふーん。で、どんな技能が買えるの?」
モモちゃんたちはバトルマギの表示されているステータスを一斉に覗き込む。
皆のいい香りが鼻孔に飛び込み、頭が軽くフワフワする。
「ポイントを溜めることによってマギのレベルを上げたり技能を習得したりできるみたいだけど……」
魔石を一つ使用したことにより入手したポイントは1。
1ポイントを消費してできることは、レベルアップか属性付与。
とりあえずレベルアップを選択しておくか。
バトルマギから浮かび上がる『レベルアップ』という文字に指先で触れる。
するとバトルマギは光を放ち、表示されていた文字に変化が起きた。
バトルマギ
レベル1 属性 無
性能――
「あ、レベルが上がったね。この調子ならドンドン強くしてけるってことだよね」
「そうみたいだな……義姉ちゃん。ちょっと杖貸してくれないか?」
「?」
義姉ちゃんは首を傾げはするものの、杖を一本俺に手渡してくれる。
杖に埋め込まれているバトルマギのステータスを表示してみると――
バトルマギ
レベル1 属性 火
性能 火術
うん。至って普通のバトルマギだな。
俺は空間からバーンダイトを取り出し、それにはめ込まれているバトルマギを義姉ちゃんの杖に近づける。
するとバーンダイトのバトルマギが杖に吸収され、表示されている文字がまた変化した。
バトルマギ
レベル6 属性 火
性能 火術
「おお。元のバーンダイトと同じレベルになったな」
「すごっ。これでお姉ちゃん、また強くなるってこと?」
「そうだろうな」
「凄い! メルトちゃんもドンドン強くなってくね!」
義母さんの言葉に照れている義姉ちゃん。
だがモモちゃんは少し恨めしい視線を俺に向けている。
「私の包丁、バトルマギが付いてないんだけど」
「だよなぁ……じゃあ、モモちゃんのはバトルマギの強化はできない代わりに、包丁を強くするか」
「え? できんの? やってやって!」
嬉しそうに包丁を差し出すモモちゃん。
技能を発動させながら包丁にバーンダイトを近づけてやると――
バーンダイトは消え去り、包丁に吸収される。
「え? 終わり?」
「ああ。でもバーンダイトの切れ味は手に入れたはずだぞ」
「ふーん。凄いんだ」
クルクル包丁を振り回すモモちゃん。
試し切りをしたそうにウズウズしている。
「じゃ、性能を試しながら先に進むとするか」
「うん!」
満面の笑みを向ける三人。
武器の性能がどれほど上昇したのか、それが楽しみで仕方がない様子だ。
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