最終話 世界再生

「ねえおにぃ。何するつもりなの?」


 俺たちはエルフの集落へとやって来ていた。

 周囲は枯れ果てた大地。

 どこまでも死んでしまったような光景が広がっていた。


 俺は地面に手をつけ、大きく息を吸い込む。


「世界を復活させる」

「復活って……そんなことが可能なのか!?」


 仰天する女王。

 俺はその言葉に肯定するわけでも否定するわけでもなく、ただ静かに深呼吸していた。


「分からないけど……できると信じている。できないならできる方法を探す」


 これまで聖王に命を吸い続けられていた星。

 こんな状態になって、辛いよな……

 これが人間だったら、ミイラみたいなもんだろ?

 そんなの可哀想だし、これから生きて行く皆のためにも、この状況は何とかしなきゃな。

 頼むから、何とかなってくれ。


 俺は祈るような気持ちで目を閉じる。

 そして自分の持つ全ての力を振り絞るように手に力を込めた。


「星の『治癒の扉』よ! 開け!」


 俺の手から大地へ光が流れていくような感覚。

 大地は揺れ、俺の力と思いに応えようとしているような気がした。


「ど、どうなるの?」

「お願いだから治ってー!」


 モモちゃんと義姉ちゃんは手を握り合って俺を見つめている。

 義母さんは涙を流しながら両手を組んで祈っていた。

 ルールーと女王は固唾を飲み込み、エルフたちとこちらを凝視している。


 頼む……頼む……治ってくれ!


「!?」


 カッと眩い光を放つ大地。

 光は四方八方に広がってゆき、世界が光に包まれていく。


「やったか!?」


 女王は眩い光に目を細めながら叫ぶ。

 

 光はさらに肥大化していく、とうとうその場にいる全員が目を開けていられなくなった。


「…………」


 1分以上、大地から光が放出していたように思える。

 ようやく光が収まり、俺たちは目を開けた。


「……美しい」


 世界には、緑が戻っていた。

 集落の近くには湖が生まれ、周囲には木々があり、見渡す限り美しい緑あふれる光景。


 義母さんたちは飛び跳ねてその光景を見渡している。

 ルールーはすっと一筋の涙を零していた。


「ありがとう、ムウ。本当にありがとう」

「最初に君と出逢った時には、こんな風になるなんて夢にも思っていなかった……もう何と言っていいのかも分からない。心の底から感謝する」


 女王はとびっきりの笑顔を俺に向ける。

 

「別にいいよ。誰かのことを想って行動する。俺はそんな当たり前のことをしただけだ」

「……素晴らしい考えだ。それは誰に教えてもらったのだ?」


 俺は子供のような義母に視線を向ける。


「俺たちの母親にだ。あの人のおかげで俺たちは真っ直ぐ正しい道を歩めているんだと思う」

「うん。愛に溢れた本当に素晴らしい人だ。そしてそれを実行している君もまた素晴らしい」

「そう言ってもらえると嬉しいな。愛は貰うものじゃない。与えるものだってことも教えてもらったよ。だから俺たちは何かを得る為に他人を助けるわけじゃないんだ。いつだって誰かに与えるために行動している」

「そうか。こんな人間もいるのだな」


 感心している女王に笑みを向け、俺は義母さんたちに声をかける。


「世界も無事に元に戻ったみたいだし、明日からどうする?」

「借金はまだまだ残ってるよ。また冒険者してお金稼ごうよ」


 モモちゃんがそう言い、義姉ちゃんもうんうん言っている。


「私もさんせー! でもあまり怖くない仕事にしましょうね」

「ふっ。世界最強の冒険者たちが何を言っている」


 女王はくつくつ笑いながら義母さんを見ている。


「世界最強?」

「だってお前たちは、四聖を倒してしまったのだぞ? お前たちよりも強い冒険者など、どの種族にも存在しないだろう」

「四聖を倒したのは私も」


 ルールーが自分を指差しながら言う。


「そうだね。ルールーちゃんがあの水色の人倒してたもんね」

「うん。女王。私、ムウと一緒に冒険者になりたい。人とエルフが分かり合えるまではまだまだ時間がかかるけど、私たちみたいに分かり合えるって伝えていきたいの」

「そうか……辛いことも多いだろうが、お前の好きにするがいい」

「うん」


 モモちゃんはルールーにニヤニヤ笑いながら言う。


「残念だけど、ルールーは私たちのパーティーに入れないよ」

「なぜ?」

「なぜって……私たちのバーティ―はマードリックファミリー! 家族以外の加入は認められません!」

「そう。じゃあ簡単なこと」

「へっ?」


 ルールーは俺の腕に手を回し、ポッと頬を染めてモモちゃんに宣言する。


「私、ムウと結婚する。それなら私もマードリックファミリー」

「ちょ――バカ言わないでよ!」

「そ、そうです! ムウちゃんはルールーちゃんと結婚なんてしません! ね? しないよね、ムウちゃん!?」

「え、ああ」


 モモちゃんも義姉ちゃんも義母さんも一斉に俺に飛びついて来る。

 左右前後から服を引っ張られ、もみくちゃにされる俺。


「兄弟で結婚は無理。だから私がムウと結婚する」

「残念でした! 私たちに血の繋がりはありませんー!」

「そ、そうよ! ムウちゃんは私の子供だけど、結婚できるもん!」


 ギャーギャー言いながら言い争う女性陣。

 俺は呆れながらも、皆のやりとりを黙って聞いていた。


 これはまた騒がしくなりそうだな……


 美しい女性に囲まれ、どこまでも広がる美しい緑を眺める。

 それはまるで自分の未来のように、無限の可能性を感じる景色のように思えた。


 おわり



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 最後までお付き合いいただき、ありがとうございました!

 これにてムウたちの物語は完結となります。


 近日中に新作を投稿いたしますので、フォローをしてお待ちいただければ幸いでございます。

 それでは、本当にありがとうございました!

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「鍵しか開けられないお荷物は出ていけ!!」と追い出されたのだがいいのだろうか?【鍵師】である俺のおかげでSランクとして成り立っていたのに。俺は義母姉妹と共に世界最強のパーティーを作るから関係ないが。 大田 明 @224224ta

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