第21話 赤い牙
訓練場に行くとトルーヤさんが剣で素振りをしていた。
俺が近づくとトルーヤさんはこちらを気づいたようでこちらを向き
「おお!ケイじゃねえーか!
今日はどうしたんだ?自主的に訓練でもしにきたか?」
「こんにちはトルーヤさん、今日は体術を学びに来たんですよ」
「体術?ケイは片手剣と盾のスタイルだったじゃねぇーか、それが急にどうしたんだ?」
「もちろんそのスタイルはやりますけど、最近すごいいい短剣を見つけたので、それにともやって体術も習っておいて損はないかなって」
「そうか、まー自分の戦略の幅を広げるのは悪いことじゃねぇからな。そういうことなら教えてやる」
俺はお礼とともに木札をトルーヤさんに渡した。
「体術っていうのは攻めと受けの2つがあって
攻めの型と受けの型の基本を教えるからその後は俺と組手をやって基礎を固めていこう」
その後トルーヤさんから攻めの型と受けの型を習い、早速組手をすることになった。
「よし、それじゃあ組手に入っていくぞ。ケイは好きなように打ち込んでこい」
「それじゃ胸を貸してもらいますね」
俺はまず右足と右腕を後ろに引き、構えて足に力を入れてトルーヤさんに向かっていた。
その力を余すことなく拳に伝えてトルーヤさんに放った。しかしトルーヤさんは俺の速さに驚いたものの冷静に俺の拳の力を後ろに受け流していた。
(やっぱり流されるよな、避けられるか流されるかは分かっていたからこれならどうだ)
拳を放った体勢から拳を引きその勢いを利用して回し蹴りをした。だが足には何の感触も伝わってこなかった。トルーヤさんが俺の回し蹴りを受けずに上に跳んで避けたからだ。
トルーヤさんは跳んだ体勢から左足を上に上げ踵落としの体勢に入った。
「ケイ今度は俺からも行くぞ!」
容赦なくトルーヤさんの踵落としは俺の頭へと振り下ろされた。
(避けきれないか)
避けることは無理だと判断した俺は左手を頭上にかかげ、踵落としが左手に触れた瞬間にその勢いを利用して横に1回転周りトルーヤさんの力を逃がすことに成功した。
(おかえしだ!)
俺は1回転周り、その足が地面に付くと同時にトルーヤさんの顔に右手の拳を叩きつけた。その衝撃でトルーヤさんが後方へと飛んでいった。
(よし!、、、あれ?)
その時俺はなぜか地面に横たわっていた。
「危ない危ない、あの踵落としを受け流されるとは思ってなかった。それに驚いて顔面に一発もらったけど、お返しに足で顎を揺らさせてもらった」
どうやらトルーヤさんは俺がトルーヤさんの顔に拳を叩き込むときに少し前に出ていた俺の顎を飛ばされると同時に足で蹴り飛ばして脳を揺らしたらしい。
(いや、引退した元Cランクでこれとか恐ろしすぎる)
「なんにしても、やっぱりケイは才能あるな。少し鍛えたら俺を簡単に超えていきそうだ。ワッハッハ!」
と嬉しいそうにトルーヤさんは笑った。
そこから体感で3時間ほどトルーヤさんと休憩をはさみながらも組手をやり続けていた、
ステータス
名前 木下 圭(きのした けい)
年齢 16
職業 冒険者
レベル 7
HP 400 MP 360
STR 52 VIT 51→56
AGT 78 DEF 52
INT 57
残りステータス割り振り0ポイント
剣術Lv3 短剣術Lv1 体術Lv1
盾術Lv2 身体強化Lv4
生命探知Lv3 気配消去Lv3 投射Lv1
解体Lv1 鑑定
光魔法Lv1 水魔法Lv1
雷魔法Lv1 時空魔法Lv1
魔力量増加Lv2 魔力操作Lv2
詠唱破棄
SP20
ある時から体が動かしやすくなったのでステータスを確認したらこんなになっていた。
(今、装備を外しているからステータス値は少し下がってるやつもあるけど、身体強化が1つレベルが上がり全体の値が増えているのと体術スキルが増えたってところか)
トルーヤさんからもらった水を飲んで休憩していると男が3人と女が1人の声が階段の上から聞こえてきた。
「なんで雨の日まで訓練しなきゃいけないんだよ」
「違うわよ、雨の日だからこそ訓練をするんじゃない」
「そうだぞ、アーク。お前はもう少し訓練の時間を増やせよ」
「まーまーみんな、こうやってアークも一緒についてきてるんだからそのぐらいで許してやりなよ」
「そうやっていつまでもグレンが甘やかすからアークがさぼるのよ」
「アークは一度性根を叩き直すぐらいの気持ちでやらんとこの性格は変わらんぞ?」
「ザックとエマの気持ちは分かるけど、アークはちゃんとチームに貢献してるんだから大目に見てあげなよ」
「そうだよな、グレン。もうお前だけが俺の味方だよ。愛してるよグレンー」
「はいはい」
「あら?トルーヤの気配ともう一人誰かいる?」
「どうせ、オスカー辺りが自主練でもしてるんじゃねぇーか?」
「へー珍しいね、僕たちの他に利用者がいるなんて」
「そんなことはどうでもいいから、早く終わらせようぜ」
するとその先頭を歩いている女の人と目があった。
(っ!魔力の量が多いな、この人)
最近魔力操作の練習をしている俺は他の人の魔力を感じ取れるようになっていた。
(感覚的に俺の3倍はありそうだからMPが1000は超えてるな)
「全く知らない子がいたわ。新人かしら」
「新人ってのも珍しいな、ん?なんだ、ケイじゃねぇーか!」
「ケイ?ケイって確か冒険者に絡まれて新人をザックが助けた時の新人の名前だっけ?」
「ザックがこの前言ってた子ね。面白いやつがいたってやつ」
「そう、そのケイだよ!トルーヤに何か教えてもらってるのか?」
ザックが俺に近づいてきた。
「今日は体術について学んでたんだよ。
ザックは?今日は訓練しにきたとか?」
「そうだな、今日は雨だし俺たちはお金には困ってねーからな、休みにしたんだよ。でそこのエマが訓練しにいこうって言うんで、みんなで来たってわけだ」
「なるほどね、とりあえず俺はトルーヤさんと邪魔しないようにやってるから、ザックたちは集中してやっていいよ」
「分かった。それじゃ邪魔してすまねーな」
「休憩中だったからいいよ」
会話を終わるという寸前でザックと同じパーティーの女の人が近づいてきた。
「ちょっとザック何会話を終わらせようとしているのよ、私達のこともしっかり紹介して」
「あっそういえば紹介がまだだったな」
ザックの隣に3人が並んだ
「俺がリーダーをやっているパーティー赤い牙のメンバーである、エマ、アーク、グレンだ」
「赤い牙で魔法使いをやっているエマよ。よろしく、なんでも期待の新人だそうね。雨の日も訓練してるなんて偉いわ、これからも頑張ってね」
エマさんはすごく美人でまさに魔法使いといった格好でとんがり帽子にコート、杖を持っている。
「同じく赤い牙のアークだ。双剣を使ってて、斥候も担当したりしている。まっ見えないってよく言われるがな」
アークさんは身長は180cmはあり体はすごく引き締まっている。細いように見えるが鍛えこまれてるのが一目見て分かる。腰には刃渡り70cmほどの剣が2本ついている。そんな彼が斥候というのは言われない限り分からないだろう。
「最後は僕だね。同じく赤い牙のグレンだよ。赤い牙では弓術士やパーティの会計とかも受け持ってるよ。よろしくね」
最後に紹介してくれたグレンさんは慎重170くらいで背中には身長とと同じくらいの弓を持っている。雰囲気が優しくまさに優男という言葉が似合いそうなイケメンだ。
「ご紹介ありがとうございます。俺はEランク冒険者のケイです。普段は片手剣と盾を使っています。よろしくお願いします」
「そんなに堅苦しくなくていいわよ?」
「そうだな、俺らをなめてるような態度じゃなければ敬語なんて使わなくていいぞ、俺達は一応権力は持ってるが貴族でもないしな」
「そうですね、ザックにも砕けた感じで話してますし、僕たちにも同じように話してもらって構いませんよ」
(ザックで今更と言われれば今更なのだが、ほんとにA級冒険者の人たちにそんな言葉遣いでいいのかな?でもここでA級の人達と知り合いになれるのは嬉しいし、敬語はやめるか)
「分かった、なら敬語はやめるよ。もし何か気にさわることがあったら言ってくれ」
「よし、じゃあ互いに自己紹介も終わったことだし、俺達は違うところで練習してくるかな」
するとここでずっと黙っていたトルーヤさんが声をかけてきた。
「もし、ザック達がいいなら、ケイと模擬戦をやってくれないか?ケイはいいものは持ってるが、圧倒的に人との実践経験が少ない。だからA級でもあるザック達と相手できるならこんなに経験になることはないからな」
「そうだな、俺達は構わないぞ、な?」
ザックがエマ、アーク、グレンに確認すると
「構わないわよ」
「たまにはパーティーメンバー以外のやつともやるのもいいから、いいぞ」
「僕もいいよ」
「ケイもいいよな?」
トルーヤが俺に聞いてきた。
(実力差が離れてはいるが、良い経験になりそうなので断る理由はないな)
「もちろんです、胸をお借りします」
「よし、じゃあまずはタイプが似ているアークとの試合だな。ルールは簡単に参ったと言うか、気絶したら負けだな。武器はうちから貸し出している木の武器を使うこといいな?」
トルーヤさんの言葉にここにいるみんなが了承する。
俺は片手剣と盾じゃなくて、短剣を一本だけもち、双剣を選んでいるアークと向かい合った。
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マジックバック
銀貨10枚 大銅貨1枚 銅貨3枚
(10万1300円)
下級ポーション×1
中級ポーション×1
石剣 鉄剣 名も無き剣
銀の小盾
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