第30話 ゴロツキ

筋肉痛が響かないようにゆっくりと1階へと向かう階段を上がっていった。

1階に着くと仕事終わりの赤い牙の皆がギルドに入ってきた所だった。


「おっケイじゃないか!昨日は運び込まれたって聞いて驚いたぞ」 


「そうよ、ザックが何にやられたんだ、何が原因なんだってうるさかったのよ?」


ザックの方を見ると照れているのか若干顔が赤い。


(いや、男にそういう態度を取られるなんて誰得なんだろうって思わなくもないけど、心配されてるってことだし、純粋にありがたいな)


「ありがとう、ザック。でも昨日のは練習不足と確認不足の自分のせいだから何かのせいってわけじゃないんだ」


「そうなのか?それと気になってるんだが、なんでケイはそんなに動きがカクカクしてるんだ?」


「言われたらそうね、どうしたの?」


「どっか痛めたりしたのか?」


エマとアークが心配してくれたので嬉しくなっていた俺は後ろからの気配に気づけなかった。


「えいっ!」


「いたぁっ!」


赤の牙の最後の一人グレンが俺の脇腹をつついてきた。


「やっぱりこれ、筋肉痛だよ」


「筋肉痛だ?」


「筋肉痛?そんなになるまで何してたの?運び込まれた昨日の今日で」


「あれか?トルーヤに何してんだってしばかれでもしたか?」


「い、痛い。昨日の、原因になった新しい技をトルーヤさんと一緒に練習してたら全身筋肉痛になったんだよ。それでポーションで治そうとしたらトルーヤさんがポーションで治すのは駄目だっていうから治さずになんとか宿に帰ろうとしてた途中で、なのにグレン、ひどいじゃないか突くなんて」


「ごめんごめん、みんなが本気で心配してるのにただの筋肉痛だなんて面白くてね」


「ただのってこれすごく辛いのに」


「ごめんって、僕も若い時によくなってたから経験あって、辛いのは知ってるから」


(それなのに脇腹をつついてくるなんてグレンって実は一番の腹黒なんじゃないか?)


「これ以上やったなら許さないけど、もういいよ」


「一人で帰れるのか?」


ザックが心配するように聞いてきた。


「俺の泊まってる宿は近いから大丈夫だよ。みんなも仕事終わりでしょ?なのに手をわざわざ煩わせるわけにはいかないよ」


「ほんとそういう所偉いよな、分かったそれじゃあ何かあったら連絡くれ、その技?の練習相手がほしいなら相手してやるからな」


「魔法関連なら私に任せなさい」


「俺は剣術辺りなら任せろ」


「僕は考えてほしいことがあったらかな?正直役に立たないかもしれないけれど力にはなるよ」


「皆、ありがとう。何か手伝ってほしい事があったら言わせてもらうよ。むしろ何か手伝ってほしい事があったら言って、役に立つことが少ないかもしれないけど」


俺はもう一度お礼を言って赤い牙のみんなと別れ冒険者ギルドを出て夕暮れの宿へとゆっくりと動きながら向かった。


弱々しくかつカクカクしながら人に当たらないように歩いていた。すぐに夕暮れの宿のある道についたので、宿に行く為に曲がり、少し歩いてもう少しで夕暮れの宿につくというところで俺は知らない男たちに囲まれていた。


するとその中で一番ガタイのいい男の人が出てきて


「なぁ兄ちゃん、痛いのは嫌いか?」


という質問をしてきた。


(もちろん、痛いのは嫌いだな)


「むしろ、好きな人のほうが珍しいでしょ?」


そう答えるとそのガタイのいい男の人は笑みを浮かべ始め、それに合わせて周りの男たちも笑い始めた。


「そうだよな、それじゃもし痛い目にあいたくなければ大人しく金と金目の物をだしやがれ、その綺麗な装備や腰にさしてある短剣もだぞ?」


(もう8日ぐらい夕暮れの宿に止まってるけど、カツアゲにあったのは初めてのことだな。これって俺が若いからカツアゲの対象にされたのか、それとも動きが遅く弱そうに見えカモだと思われたかのどっちなんだろうな)


「それよりもなんで俺を狙ったのか聞いてもいい?」


するとガタイのいい男は苛立ったように


「んなことたぁどうでもいいだろうが!そんなに痛い目にあいたいならあわせてやるぞ?あ?」


(聞く耳を持ってくれなさそうだな。冒険者でもない人とか、もはや冒険者でもトルーヤさん並の冒険者じゃなきゃ制圧するのは簡単そうだけど、今の状態だと動くと痛いし動きたくないな)


少しの間考えてると苛立ち始めていたガタイのいい男はさらに苛立ち、ついに手をだしてきた。それに合わせて周りの男たちも俺に向かってきた。


「なめやがって小僧が!さっさと出すもの出しやがれ!」


襲いかかってきたので俺は掌を魔力で覆いMP5でスタンガンぐらいの電流を掌に発生させた。

できるだけ極小の動きでカツアゲ犯達の拳を避け、避け際に掌をカツアゲ達の腹に添えて、意識を刈り取っていく。1分ほどでカツアゲ犯たちを制圧した。


「はぁやっぱり痛い」


このカツアゲ犯達をどうしようかと悩んでると衛兵たちがやってきた。


「君がこの現場の当事者かい?私達のもとには君がこのゴロツキ達に襲われたと聞いているのだが」


衛兵が倒れているゴロツキ達を見て苦笑いをしている。


(ここで嘘をつく理由もメリットもないので正直に話すことにした)


「はい、襲われたので返り討ちにしました」


「失礼になったら悪いのだが若いのに凄いんだな、5対1だぞ?なかなかできることではない」


「失礼じゃないですよ、若いのはあってますし。俺は冒険者なのでしっかり鍛えてるんですよ」


すると衛兵さんは笑みを浮かべ


「そうか、普段から鍛えてるなんてえらいな。時間をとってすまなかった。ゴロツキ達の身柄はこちらで預かるから、宿に帰る途中だったんだろ?そしたら宿の人も心配してるだろうから早く帰ってやりなさい」


「はい、分かりました。いえ衛兵さんたちも仕事ですから」


(なんで、宿に帰ってるのかがバレたのか謎だったが、少し先に夕暮れの宿があるのでそこからバレたのだろう)


開放された俺は夕暮れの宿に入った行くのだった。


「ケイ!大丈夫だった?お客さんからケイが悪い人たちに囲まれてるって聞いて助けに行こうと思ったんだけど、行けなくて。怪我してない?」


(そうだよな、あんなに店先の所で騒ぎを起こしたらユリにも情報は伝わるか)


「大丈夫だよ、俺だって冒険者なんだから冒険者じゃない相手が何人来ても問題ないよ」


「本当?」


(こんなに心配してくれてユリは優しいな)


「もちろんだよ」


「そっか!ケイって強いんだね!じゃあご飯食べるでしょ?すぐ持っていくから空いてる席で待っててね!」


元気になったユリを見送りつつ俺は空き席を探し空いてる席に座った。


少し待つとユリが料理を持ってきた。


「お待たせ!今日のメニューはオムライスだよ!これもお客さんから評判いいから、ケイも満足してくれるはずだよ」


「夕暮れの宿のご飯で満足しなかったことなんてないよ。美味しそうだね」


「ありがとう!それじゃゆっくり食べてね」


ユリはすぐに他のお客の元へと向かった。


目の前におかれたオムライスを見てみると上にのっている卵は完全に固まっておらず半熟の状態で見るだけで食欲をそそる見た目だ。

俺はスプーンを使って端をひとすくいし口の中へと運んだ。卵自体にも味付けがしてあるのかバターのような風味と卵の下に隠れていたケチャップライスの酸味が合わさってこれまた絶品だ。


(これが異世界の料理の基準なら幸せだけど、どうなんだろうな)


今日の俺は昼食を抜いてしまっていたのでオムライスを計3杯も食べてしまった。


「ふふ、今日も満足してくれたみたいで嬉しい」


食器を片付けに来てくれたユリにまたも笑われてしまったがオムライスによって満足してくれる俺にとったらなんともないことだった。


「夕暮れの宿の料理は何をとっても美味しいね」


「うちの料理は美味しいって評判だからね!そこは自信あるんだ」


「これだけ美味しかったら評判にもなるよね」


と二言三言ユリと話して俺は自室へと向かった。


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マジックバック

金貨1枚 大銀貨4枚 銀貨7枚 

大銅貨8枚 銅貨4枚

(147万8400円)

下級ポーション×1

中級ポーション×1


石剣 鉄剣 

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