第29話 筋肉痛地獄
トルーヤが俺の顔めがけて素手で突きを放ってきた。雷纏いを身体能力が上がっている俺は普段なら反応するのが難しいトルーヤさんの攻撃も見えるようになっていた。
顔付近まで迫っていたトルーヤさんの拳に左手をそっと触れて顔に当たらないように軌道をずらした。
そこでトルーヤさんの攻撃が止むはずもなく伸び切った腕を振りまたしても顔を狙ってきたので俺は体を引いて拳をかわした。
腕を横に振るった反動を使いトルーヤさんは右足で回し蹴りをしてきた。
(相変わらずなめらかな動きだな。全然攻撃が止まらないんだもんな。なんでこのトルーヤさん冒険者をやめて地下の訓練場で指導員をやってるんだろうな、現役でもまだまだいけそうなのに)
俺は冷静に身をかがめ回し蹴りを回避する。
するとすぐに左膝が迫ってきていた。俺はその膝に手をおいて体を持ち上げ手に力を入れてトルーヤさんの頭の上を通りながら背後に降り立った。
「はぁはぁ、雷纏いの状態だと身体能力が全然ちがうな。雷纏いを使う前のケイなら右足で回し蹴りをしたところぐらいで、一発当てれてたのに全然当たらないどころじゃなくて、余裕もあっただろ?最後の俺の背後に降り立った一連の動きは見事なものだった。雷纏いはそれなりに悪い事もあるんだろうが、必ずケイの切り札になる技だ。ここからニ週間ほど時間をくれ
、その技を切り札になるまで使いこなさせてやる」
(雷纏いはやっぱり有用だな、あのトルーやさんの攻撃が余裕をもってさばいたりかわしたりすることができた。トルーヤさんにここまで言われたら断ることなんてできないよな。俺もこの技が切り札として使えるようになったら戦闘の幅がぐっと広がるし、これから強くなる敵にも
対応できそうだ)
「こちらがお願いしたいと思ってたんです。この雷纏いを切り札として使いこなせるよう指導をお願いします」
「おう、任せてとけ。とりあえず1時間経つまで攻撃を受けたりかわしたりして、俺が持たなくなったらこの周りを走ったりしてとにかく体を動かすところからだな」
ここから魔道具に水がたまるまでトルーヤさんと組手や模擬戦をしたり、訓練場の周りにを走ったりと一刻が経つまで動き続けた。
「よし、ケイ!一刻経ったぞ、雷纏いを解除してみろ」
俺は発動している雷纏いを解除した。
「った!」
すると全身の筋肉がピキンと張ってしまい、動かそうとしたこで激痛はいかないものの、痛みが体を支配していた。
「大丈夫か!?一刻は長すぎたかもしれないな」
「そ、うですね。かなり運動量が多かったのも原因かもしれません。とりあえず今は全身筋肉痛で動けそうにないです」
(やばい、痛すぎて泣きそう。全身筋肉痛の強いのなんて地球にいた頃に体験なんてしたこたないし、こんなにしんどいのか。今日のは軽めだし下級ポーションでも治りそうだし飲もうかな)
「そうか、じゃあ今日の訓練はこれでお終いにするか。あっいい忘れてたが、ポーションで筋肉痛を治すのはだめだぞ、筋肉が一切つかないからな。だから今日は痛みに耐えながらも肉を食べたりして1日を過ごせよ?」
(う、うそだろ。この痛みのまま一日過ごすとか辛すぎる。でもトルーヤさんにそう言われて嫌ですなんて言えないし、大人しく従うしかないか)
「は、はい」
俺は諦めて痛みに耐えながらもなんとか訓練場の端まで行き、座って魔力循環をすることにした。
(魔力循環しながら魔力を筋肉や筋肉繊維に流し込んで治れ、治れーって願いながら回したら光魔法の回復が使えるようになったりしないかな?)
治れ治れと念を込めながら魔力循環をしながらいてもいっこうに変わる気配のない筋肉痛に俺はうなだれた。
「ケイ、もう7回目の鐘が鳴ったぞ。そろそろ終わりにしたらどうだ?」
7回目の鐘つまり午後6時になったのでトルーヤさんが声をかけに来てくれた。
(やり始めたのが午後12時くらいだったと思うから6時間も魔力循環をしてたのか、何かから現実逃避してる時の集中力って凄まじいな)
「それにしてもケイは何してたんだ?」
「体の中に流れてる魔力を柔らかく、滑らかにするために循環させてたんですよ」
とトルーヤさんに説明すると口を開けて呆然としているトルーヤさんが見えた。
「またお前は非常識なことを、魔力を操作するとかそんなことができるのか」
トルーやさんの話だと普通は魔力を感じることはできるが、魔力を操作することはできないらしい、だから一般的な魔術師は決まっている単語を並べた詠唱を唱え、それに応じた魔法が発動するという、流れらしい。だから俺のように魔力の形を整えるのはもちろんのこと無詠唱で魔法を発動させるのは例外中の例外らしい
「ということは雷纏いを発動させるためには意図的に体を覆う魔力を増やさないといけないと、しかもそれをするには魔力を操作しなきゃならねーのか。そりゃ多分ケイしかできないな、そうなるとそれはほんとにケイの切り札になるな」
そんなことを話したあと俺は宿に戻るために筋肉痛によって痛みが走る体をむりやり動かし少しずつ一階へと向かうのだった。
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マジックバック
金貨1枚 大銀貨4枚 銀貨7枚
大銅貨8枚 銅貨8枚
(147万8800円)
下級ポーション×1
中級ポーション×1
石剣 鉄剣
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