第4話 ガレスの街

街の中に入ってみるとそこには中世ヨーロッパをそのまま持ってきた様な町並みがズラッと並んでいる。


お話が大好きなおば様達の話によると俺が来たこの街はガレスの街といいユーラルト=ガレス伯爵様の領地にある街なのだそうだ。


名前から察しただろうが、このガレスの街はユーラルト=ガレス伯爵がおさめている5つの街と18の村の中で1番大きくかつ人工が多い街みたいだ。

またこのガレスの街は商いが盛んな街として知られている。


ガレスの街は10km×10kmもの莫大な大きさの円型の街となっている。

その一番中央にユーラルト=ガレス伯爵家が住む城があり、その周りには多くの貴族が住んでいる。

その辺りのことを住民たちは貴族街と呼んでおりおいそれとは近寄ってはならないと小さい頃から教わっているみたいだ。


この世界では特に力あるものが優遇されるようで貴族様に逆らってしまえば何をされても文句は言えないようだ。

しかし冒険者の上位者になってくると平民でもそれ相応の地位が確立されているようで、貴族も簡単に上位の冒険者には手を出せないようだ。

だから平民の一部は上位の冒険者の庇護を受ける為に体を差し出す人も少なくないのだとか。


その貴族街をぐるっと一周するかのように立ち並ぶのは数多くの商店による商業地区だ。


ガレスの街では毎日この商業地区に多くの品が運ばれてくるのでたくさんの人で賑わっている。


ここでは商店の店などが基本となるので露天販売などのよく市でみられる販売形式のものはここでは商いをしてはいけないことになっており、

もし商いをしたいなら伯爵の城から東西南北の門に繋がるそれぞれ一本づつの計4本に及ぶ大きな道の左右にあるスペースで行うのだそうだ。


これにももちろん商業ギルドの許可が必要となってくる。


この商業地区のその更に外側には毎日商いにくる商人やその商人が売る商品を買いに来た多くの人が泊まる宿や色街が広がっていて、更にその外となると働けなくなってしまった人や働き口が見つからないといった人がが行き着くスラム街が点々とあったりする。


さっき俺が門をくぐったのは西門で冒険者ギルドがあるのは東門側の商業地区と宿の地区のちょうど間の所にあるそうなので多くの人をかき分けながら目的地に向かう。


通路脇にある市で売ってある商品を軽く見ながら向かったので1時間ほどかかってしまったが、目的地の冒険者ギルドについた。


冒険者ギルドは流石伯爵領1の街のギルドであるからなのかその階数は4階にも及びこの町並みに合わないんじゃないかと思いながら俺はその敷居をまたいだ。


「あー?ここはガキの来る場所じゃねーんだよ。今大人しく銅貨5枚ほど払えば痛い目には合わなくて帰れるぜ?」


冒険者ギルドのドアを開きながら入ると早速そんな声が聞こえてくる。


いや、テンプレでこういうことがあるっていうのは知ってるが流石に現実世界で入ってすぐこんなあからさまな声がかかるなんてことはないよな?


それにこの世界にきて若返った為16歳と少し若いがガキって言われる歳ではないしこれはきっと他の子に向けたものだよな。うん、きっとそうだ。


と自分の中で勝手に自己解決をして受付嬢のいる受付カウンターに向かおうとすると


「あ?おいおいガキが俺様の事を無視するとはいい度胸じゃねぇか、大人を尊敬しないガキにはちょっと指導しなきゃなー!」


とそんな声が聞こえてきた。


(やっぱり俺に対してだったじゃねーか!えーめんどくさい、だって受けて立っても目をつけられるし、逃げられる状況じゃない。ここはいっそ1発殴られるふりをして誰かに助けられるのを待つことにしようかな)


そう考えたと同時に後ろに体を向けると目の前にはそれなりに体格はいいがすごく太っていて、

お世辞にもいい顔とは言えないザ雑魚キャラといった風貌の男性が俺に向けて拳を放っていた。

その人の拳がちょうど顔に届くかどうかといったタイミングで思いっきり後ろに向けて飛びさもすごく殴られましたの図を完成させた俺は受付カウンターの少し前までかなり吹っ飛んでいった。


すると冒険者ギルドに併設されている酒場兼食事処の様な所にいる冒険者たちが


「うわ、ゲッソのやつまた新人にちょっかい出してるよ」


「えっゲッソの野郎あんなに力あったのか?相手が新人とはいえあんなに殴り飛ばされるものか?」


「おいおい、あんな勢いで殴られたなんて、殴られた新人死んだんじゃねーか?」


とざわざわし始めた。それと同時に他の冒険者の相手をしていた美人な受付嬢が吹っ飛ばされた俺を見て、可愛い顔が台無しになる勢いでげっそに向かって


「あなた!新人相手に一体なにをしているんですか!!」


と声を荒げた。それに続いてその声を聞きつけたのか2階からそれなりにベテランそうな風格のある冒険者が降りてきてすごい勢いでゲッソに


「おい!ゲッソ!おめぇまた新人に手を上げたのか!!」


と言いながらゲッソの頭を思いっきり殴り

一瞬でゲッソの意識を刈り取ってた。


(うわ、すげー早いな。あれが上級冒険者ってやつか?)


なんてことを思っていると。


「あなた!大丈夫ですか!?」


「おい坊主、平気か?」


俺のことを心配する声が聞こえ始めたので、

俺は演技するのをやめてすっと立ち上がり


「ええ、この通り何ともないですよ」


と一言言うと。受付嬢が驚いた顔をして、

上級冒険者風の男はほうっと感心した顔を見せながら


「あなた、あんなに吹っ飛ばされたのに怪我の1つもないんですか!?」


「なるほど、さしずめ拳を受けるタイミングで後ろに飛んで殴られた威力を軽減し、いかにも殴られましたよっていう感じにしたのか。やるじゃねぇーか坊主」


「はい、受けて立ってもめんどくさそうだったので、誰か助けが来ないかなって思ってわざと受けた風を装ってみました、助けに来ていただきありがとうございます」


と説明すると受付嬢はなるほどといった顔をした。すると上級冒険者風の男が


「いや、大したことはしてねーよ。本当ならああいう下級の冒険者の礼儀とかをしっかり指導しなきゃいけねぇーのは俺たち上級たちの役割だからな。むしろ変な風に巻き込んじまってすまんな坊主」


(うわ、何この人。かっこよすぎないだろか?

こう滲み出るワイルドさがまた一段とかっこよさを引き出していている。こういう人がモテるんだろうな)


などと馬鹿なことを考えながらも


「いえ、実際そんなに被害はなかったのでいいですよ。むしろあのゲッソとかいう男が殴られるのを見てスッキリしましたから」


と返すと


「へぇーこりゃ見どころがありそうだ!わっはっはっはっ!」


と大声で笑い出した。


「すまんすまん、こんなに生きの良い坊主に会ったから俺は嬉しくてよ。

俺はザック、一応冒険者ギルドのA級だ。俺に対してそんなかしこまった口調なんて使わなんでいいぞ」


と言われたので遠慮なく


「そっか、なら素でいかせてもらうよ。ザック。

ついでに俺の名前はケイ、まだ登録してないけど冒険者になる予定だ」


「へー見かけたことがねぇーと思ったが新人か、こりゃ期待できるな。もしなんかあったら何でも相談にきな。時間があるときなら相談に乗ってやるからよ」


そう言ってザックはまた2階へと上がっていった。すると後ろから


「えーと、それじゃあ今から登録する?」


と受付嬢が言うので


「もちろん、お願いしてもいいですか?」


受付カウンターに移動した俺と受付嬢は早速登録に関する手続きを始めた。

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