第22話 アーク

「それにしても木剣は軽すぎるよな、こんなの持ってないも同然だろ」


目の前で向き合っているアークがそう呟いた。


「しょうがないでしょ、本物の剣でやったら殺しちゃうかもしれないじゃない」


「もちろん分かってはいるけどよ?まー早いとこ決着をつけさせてもらう。それにしてもケイは短剣でいいのか?お前の得意なのは片手剣と盾のスタイルだろ?」


「いつもならそうなんだけど、今日はせっかくの実践だし、色々と試したいことがあるんだよ」


「まっケイがいいんならいいけどよ。訓練なんて新しいことを試したりする絶好の場だしな。

それじゃ始めるか、じゃあトルーヤ審判をしてくれ」


「ああ、審判は任せろ。もう一度ルールの確認をするぞ。決着はどちらかが降参するか、再起不能になったらとする。また殺傷能力の高い攻撃や魔法は禁止だ。他になにかあるか?」


「俺はないぜ」


「俺もありません」


「それじゃ双方構え!」


アークは片手剣を両手に持ち身を低くする体勢をとった。俺もそれに伴い右手で短剣を持ち胸の前に、左手もそれに合わせて胸の前にするようにして構えた。


「はじめ!」


その言葉と同時にアークが迫ってきた。


(っ!速い!!)


AGIにポイントを振るごとに良くなっていた動体視力を持ってしてもアークさんの速さはなんとか認識できる位のものだった。


(見えづらいなら、前に出てアークの攻撃から選択肢を奪ってやる)


俺はここで引かずにあえて前に出ることによってアークの攻撃から多様性を奪うことにした。


「!!、おもしれー!」


前に出てくるとは思っていなかったのだろう、アークは一瞬驚いた顔をしたのち笑みを浮かべていた。


アークは前に出てきた俺に向かって構えている2つの剣を途中で交差するように横になぎ払った。


前に出たことによってアークの攻撃が縦に振り下ろされるか横に薙ぎ払うかの2つの選択肢に絞っていた俺にとってこの攻撃を避けることはたやすく、突っ込んだ勢いのまま足に力を入れて上に飛びアークの背中に思いっきり短剣を突き刺した。


と思った次の瞬間アークが体をひねり背中を地面に向け真上にいたはずの俺に体を向けた。


(どういう身体能力をしてるんだよ!)


その人ならざる動きに動揺しつつも行動は止めず短剣をアークに突き刺そうとした。だが短剣はアークには届かなかった。アークは体をひねった勢いのまま左足で蹴りを入れてきたのだ。


突き刺すことに全部の集中を向けていた俺に避けられるはずもなくそのまま壁に向かって吹き飛ばされた。10mほど吹き飛ばされた俺は地面に当たる直前に腕を使い勢いを殺しながら着地した。地面に叩きつけられることによるダメージは回避することに成功したが、アークによって蹴られた体の右側の側面には折れてはいないが鋭い痛みが走っていた。


(ッ痛!一発蹴りをもらっただけでこのダメージとか流石A級って感じだけど、向き合ってる今の状況を考えたら恐怖しかないな)


この痛みのままでは試合の続行はできないと判断した俺はマジックボックスから下級ポーションを取り出して中身を一気に飲み干した。


「へーマジックボックス持ちか、それにしてもよく今の受け身とれたな。普通のやつだったら俺の蹴りで大体一発なんだけどな。それはケイを蹴ったときの違和感と何か関係あるのか?」


ここでどうしてA級という人外の蹴りを受けてダメージはでかかったものの骨が折れずにすんだのか、それにはもちろんからくりがある。


それは蹴られる直前、蹴られる箇所に体内の魔力を集め魔力のクッションを作り威力を緩和させたのだ。


(まだ使い慣れてないせいでダメージをもらったが、これを使いこなせたらある程度の攻撃なら無傷ですむな)


「さすがに戦ってる最中なのに種は明かせないよ」


「それもそうだな、それじゃあ早いとこ終わらせるぜ」


今度はアークが動く前に俺から動くことにした。突っ込んでくる俺にアークはその場から動かず受けの構えを取った。


(A級相手に正攻法でいくにはまだまだ実力が足りない、なら正攻法で攻めなければいいんだよ)


俺は構えているアークの顔に向かって短剣を思いっきり投げつけた。


「!!」


アークが驚いている隙に俺は目をつぶり、大体アークの真後ろに着地できるほどの力を足に込めて跳ぶ準備をした。アークは驚いていたので俺が目をつぶったことには気づいていない。ここで俺は無詠唱で光魔法である光球を丸く出すのではなくアークの目の前で爆発するイメージを持って魔法を発動させたと同時に跳んだ。


光球は俺の思ったとおり弾け飛び周囲は強烈な光によって覆われた。


これによって完璧に背後を取ったと思った俺は時空魔法で短剣を手元に引き寄せ、地面に足がつくと同時に短剣を目の見ない状態で突き刺すのは危険だと判断して拳をアークの首元めがけて放った。


(ん?感触がない、距離を間違えたか?)


光が収まった頃合いで目を開くとそこにアークはいなかった。


(えっアークはど、、)


アークを探そうと周囲を探ろうとした次の瞬間にはケイの意識は既に闇へと落ちていった。


ーーーーーーーーーーーーーーーー


マジックバック

銀貨10枚 大銅貨1枚 銅貨3枚

(10万1300円)


下級ポーション×1


中級ポーション×1


石剣 鉄剣 名も無き剣

銀の小盾



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