異世界生活は堅実的に

@Tokeinotoki

第1話 異世界を堅実的に生きていく

会社からの帰り道、ここ十年程で帰り慣れた人通りの少ない夜道を歩いていた。


(今日の晩飯は何にしようか)


なんでもない普通の事を考えながら歩いていると前から悲鳴に近い叫び声が聞こえてきた


「きゃー、誰か私のバックを取り返して!」


その声に続いて目に入ってきたのは

女性物のバックを脇に抱え全身黒のいかにもといったところの窃盗犯が俺のいる道へと曲がって来た所だった。


「おいそこのやつ!どかないと殺すぞ!」


武道とか護身術とかそんなものは中学の頃授業でやっていた柔道くらいなもので

争いごととは無縁といった生活をしている俺は普通ならすぐに道を譲りその後警察に連絡をするといった行動をとるはずなのだが、窃盗版の後ろにバックを取られた女性が姿を現し


「お願い!その男を止めて!」


その言葉を聞き咄嗟に窃盗犯の前へと出てしまった。

反射的に出てしまったのだ。

焦った俺はなんとかして窃盗犯を止めようと腕を広げた。


「邪魔だ!」


窃盗犯が俺に向かって叫んできた。


もう出てしまっている俺は既に退く事はできない、

こうなったら絶対に止めてやると自分の中で決心をしたその時、窃盗犯が懐から刃渡り10cmはあるでろうナイフを出した。


窃盗犯と俺の間はすでに2メートルもない

窃盗犯は走ってきているのでかなりのスピードになっている為

俺が逃げる隙はもうない

しかし今まで争いごともなく平和に生きてきた俺は咄嗟にこのナイフから逃げようと体を男の正面からそらしてしまったのだ。


冷静に考えて逃げられないはずなのに、

ここで窃盗犯の男も俺を避けていけばいいのにバックを盗んだということをしたためか気分が高揚しておりそのまま手に持ったナイフを目の前にいる俺の胸元につきたてた。


なんの抵抗もなくスッと胸元に入ってきたナイフはあっという間に心臓に至り、心臓に突き刺さり、その後すぐナイフは抜かれた。


突然のことにナイフを刺された時は何の痛みもなかったのに抜かれた直後胸が焼けるほど熱くなり段々と周りの音が小さくなり消えていった。


倒れる直前、バックを取られた女性が多分悲鳴をあげているのを聞きながら


(だってこっちはもう何も聞こえないからね)


俺は地面に倒れていった。あーこれって俺死ぬのかな?

やりたいことができない人生だったな。そこで俺は力尽きた。


目を開けるとそこは一面が真っ白だった。


(知らない天井だ)


人生で一度は言ってみたかったことを思い浮かべながら俺は一体どこにいるのだろうと考え始めた。


(まー心臓を一突きだし生きてはいないかな)


不思議と死んだかもしれないと思っても取り乱したりはしなかった。

仲の良い両親や兄弟はいたが結婚していたわけでもなかったし、恋人もいなかった俺は死んでしまったのならしょうがないと考えていた。


(こういう時はなんで俺は死んでしまったんだ!

って結構取り乱すもんだと思ったのに割と冷静でいられるな。

とりあえず死んだかもしれないってことは分かったけどここはどこなんだろ?死んだ人が来るところ?それともまさか神の住むところみたいな?)


「んー死んだ人が来る所っていうのが正解かな?」


「!!!」


突然後ろから声がかかった。


「ごめんごめん、驚かせちゃったかな?」


後ろを振り返るとそこには絶世の美女ならぬ絶世の美少年がいらした。


「えーと、君がもう死んでしまっているというのは理解できているかな?」


(やっぱり俺は死んでしまっているのか、こう人?神?から言われると何かくるものがあるな)


死んでしまっていることはなんとなく分かっていたので肯定を表す意味で俺は一回頷いた。


「そっか、理解が早いみたいで助かったよ。

理解してない人はまず結構取り乱したりするから、まずそれを抑える所から始まるってなったら大変だから」


(そりゃー死んだって突然言われたら、もし元の世界に愛してる人とか大事な人がいたら取り乱したりもするよな)


「そうだ、まず自己紹介からさせてもらおうかな?

僕は下神のアルテミスだよ。下神って言うのは上神の下僕?んー家来みたいな感じでそれぞれの下神によって割り振られてる役割が違うんだよ。

で僕は主に亡くなってしまった人を出迎えて記憶を消し輪廻の輪の中に入れてあげるのが仕事だよ」


(なるほどね、てことは俺はこれから記憶を消されて輪廻の輪、つまりもう一回生まれ変わったりする為の準備をするみたいな感じか。

うわー記憶を消されちゃうのか、当たり前のことなんだろうけどなんかすごい残念だな)


「やっぱり記憶を消されるのは嫌みたいだね?」


俺は思わずびっくりしてしまう。


(これって考えてることバレてる?)


「もちろん、なんて言ったって下でも神だからね。

何でもお見通しだよ。ところで話を戻すけど、記憶を消されるのは嫌?」


(記憶を消さなきゃもう一度生きていけないってなるならしょうがないって思うけど、できるなら記憶は消したくないものだよね)


「普通はそうだよね、そんな君にうまい話があるんだけど、どうする?」


(神からの上手い話ってなんか裏がありそうで怖いんだよね)


「そんなに心配しなくてもいいよ、裏なんてないから。

長く説明しても時間がもったいないから簡単に説明すると、僕の管理しているこことは異なる異世界アルテミア、僕の名前がアルテミスだから少し変えただけだね。

その世界が少し魔力の流れ方がずれてしまってこのままいくと1段階魔物の強さが強くなってしまう恐れがあるだよ。

そこで異世界人である君を送り込むことによって魔力の流れを正常に戻し、世界の安全を戻そうって話なんだけどどう?

引き受けてくれたお礼に記憶は消さないでいてあげるよ。」


(なるほど、俺が行くことによってアルテミス様の世界は正常になり、俺は記憶を消されずに済むと、魔王を倒せ!とか危ないことをさせられなければいいかな?)


「ほんと?良かったー、一応これも適正のある人が行かなきゃ駄目だから君がだめならまた一から探すことになるから助かったよ。

アルテミアに行ってくれるなら特にやる事もないからあとは自由に生きていいよ。」


(そっか、良かった。自由に生きられるならあとは大丈夫かな?あっあとは俺の他に異世界の人はいるのかってことかな?)


「この魔力の流れがずれるのは300年に一回ほどは起こるからその度に異世界の人に行ってもらってから君で62人目だよ。

だからアルテミアでは基本的に食べ物とかは日本の物があったりするよ。

あっでもこれは一つ注意なんだけど、アルテミアに行ったらそういう食べ物的なものは広めていいけど技術とかを持ち込むのはやめてね。

突然な技術の発展は良いこともあるけど悪いこともあるから。

もし君がこれを破った時は天罰を与えるからその点に関しては注意してほしいかな?」


(天罰とかすごい怖いな。

まーでも俺は別に食べ物とかも広める気はないし、技術に関しては全くっていいほど知らないからそこら辺のことは大丈夫そうだな。)


「なら安心だね。あと質問がないなら最後にギフト、簡単に言うと能力をあげるよ。

僕の世界アルテミアはいわゆる剣と魔法の世界でさっきも言ったみたいに魔物もいるから流石に平和な世界で生きてきた君を何も持たせずに行かせたら簡単に死んでしまうからね。

とは言っても君が生前何をして、何を得たかによって能力を得るためのポイントが割り振られてるから、君たちの世界で言う所のチート?みたいなものはないから堅実に生きることをオススメするよ」


(そっか、さっきは流していたけど魔物もいるのに能力をもらえなかったらせっかく別の世界に生けるのにすぐ死ぬことになってたのか、危ない危ない。

簡単にチートなんて貰わるわけないし、俺はチートなんて貰っても困るだけだから堅実に生きていくことに何も問題はないな)


「いいね、何事も堅実にだよ。それじゃあギフト選びに行こうか」

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