同棲開始とキスマーク

「ここが健斗くんの家……」


 ゴールデンウィーク最終日の今日、退院したために健斗は雪奈を連れて自分の家に帰ってきた。

 間取りは1LDKで、バス、トイレ別、オートロックにオール電化のマンションに高校に入学した時から住んでいる。

 異性の部屋には初めて訪れたのか、雪奈はキョロキョロと辺りを見回す。

 一応、きちんと掃除などはしているので、誰かに見られても問題はない。

 この部屋にある家具、家電は事前から使っていた物が多いため、引っ越しの時に買い足したのは僅かだ。


「自分の家はいいな」


 病院と違って周りを気にせずにイチャイチャすることが出来る。

 早速リビングにあるソファーに雪奈を座らせてイチャイチャを開始。

 左手でギュッと引き寄せると、雪奈は頭を健斗の肩に乗せる。


「今日から一緒に暮らせる気分はどう?」


 春奈の一言により同棲することになった恥ずかしさからか、雪奈は病院からずっと顔が赤い。

 恥ずかしがっているのは肩の部分が透けている白いブラウスに、ハイウエストのミニスカートだから、という可能性がある。

 お見舞いに来た時は肌の露出はあまりなかったのに、今日は白くて綺麗な生足が見えており、もしかしたら春奈に言われて着たのかもしれない。

 結構周りの視線を気にしていたので、タクシーで家まで来た。

 雪奈を他の人に見られたくない、という健斗の気持ちもあったためだが。


「嬉しい、ですよ。いっぱい二人でイチャイチャ出来ますから」


(可愛い)


 肩に頭を乗せたままだから上目遣いになっているので、今の雪奈はあり得ないほど可愛く、セフレにした甲斐があった。

 雪奈の言うように二人きりの環境で好きなだけイチャイチャ出来るのだから。


「そういえば荷物はどうするの?」


 小さいバッグを一つ持っているだけで、今日からここで暮らしていくための荷物がない。

 食器などはあるのだが、服や化粧品などは買わないといけないだろう。


「大丈夫ですよ。そろそろ……」


 雪奈が話している最中に来客を知らせるインターホンが鳴った。

 一人暮らしだからたまに友達が遊びに来るのだが、今日からは雪奈がいるから帰ってもらおう。


「荷物が多くて大変なので、宅配にしたんですよ」

「そうか。俺が持てればいいんだけど……」


 右手首の骨折のため、荷物を受け取っても運ぶことが出来ない。

 服や日用品、化粧品などが入ってるのであれば大きな段ボールだろう。


「私が受け取って来ますよ」


 ニコッと笑みを浮かべ、雪奈は荷物を受け取りに玄関に向かった。




「俺も手伝った方がいいか?」


 大きな段ボールが三箱もあり、女の子一人で取り出して整理するのは大変だろう。


「健斗くんは骨折しているので大人しくしててください」

「ええー。俺の手伝いたい。どんな下着があるか見たいし」


 自分の欲求のために手伝いたいだけだ。

 手伝わなくても見ようと思えば今日の夜にでも雪奈のはいているのを見れるのだが、何となく気になってしまった。


「もう……健斗くんはエッチです。でも、健斗くんが見たいのであれば、私がはいてるのを見せても、いいですよ?」


 耳まで真っ赤にして恥ずかしがっている雪奈であるが、健斗の望んだことを全て叶えてあげたいらしく、スカートの裾を指で摘まむ。


「今、雪奈がはいてるのを見たら理性が吹っ飛ぶから」


 物凄く見たいが、今見たら確実に止まらなくなる。

 これから荷物を片付けないといけないので、雪奈に襲いかかりたくない。

 病院でイチャイチャしていた時は人が来るかもしれないから多少は自重出来ていたが、誰も訪れない家なら自分を抑えるのは間違いなく無理だ。


「そうですね。でも、いつでもしていいんですよ? もし、断って他の人の元に行かれたら嫌ですし」

「行かないさ」


 スカートの裾を掴んでいる雪奈の手に優しく自分の手を重ねた。

 いくらセフレの関係であっても、健斗は雪奈のことを大切にしたいと思っている。

 抱くだけではその内愛想を尽かれるかもしれないからだ。


「嬉しいです。私も他の人の元に行きませんから。私は健斗くんだけのセフレ、です。他の人に体を許すことはないのはもちろんのこと、触らす気もありません」


 胸の奥がカーっと熱くなったような気がした。

 他の人のとこに行かないということは、健斗が雪奈を独占することが出来る。


「雪奈……」

「あ、んん……」


 これから荷物を片付けないといけないのにの関わらず、健斗は雪奈を引き寄せてキスをした。

 一緒に住むから一切自重しなくれいい、と思ってしまったら理性が働かなくなってしまったのだ。


「健斗くんにキスされると、頭がボーッとします」


 キスを気持ちいいと思ってくれているらしい。


「雪奈は俺が独占出来るんだよな?」

「はい」

「なら独占出来るという証をつけるから」

「え? ひゃ……」


 首筋に唇と当てると、雪奈の口から驚いたような声を出した。

 いきなりだったので驚くのが普通だろう。


「じっとしててね」

「はい。でも唇を当てたまま喋られるとくすぐった、ひゃん……」


 唇を当てたまま吸い付くと、今度は甘い声を出した。

 でも止めることはしないで、さらに強く吸い付く。

 まるで吸血鬼が美少女の血を飲んでいるかのようだが、今は周りに人がいないので気にしいない。


「ふう……しっかりと痕が出来た」


 雪奈の首筋には赤い痣──つまりキスマークがついた。


「制服を着ててもきちんと見えるから、雪奈は俺のものだってわかるな」

「ふふ。そうですね」


 キスマークが出来た箇所を触っている雪奈は、声だけは冷静だが口元がニヤけてしまっている。

 好きな人に独占されるというのが嬉しいのだろう。


「これ以上は本気で俺の理性がもたないから片付けしちゃおう」

「はい」


 届いた荷物の片付けを開始した雪奈の顔は終始笑みが零れていた。

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