初めての夜

「雪奈の手料理美味しそう」


 夜ご飯の時間になり、雪奈が料理を作ってくれた。

 今日から料理は雪奈が作ってくれるとのことで、とても楽しみだ。

 セフレという深い関係ではあるが、恋人同士になりたいと思っているだろうし、料理で胃袋を掴みにいく作戦らしい。

 昼ご飯は荷物の片付けがあったために作らせないで出前にしたので、夜が雪奈の手料理を初めて食べる。

 昼も作ろうとしたのだが、健斗が作るの止めさせた。


「私が食べさせてあげますから、健斗くんは私の肩に手を置いてくっついてください」

「イチャイチャしながらじゃ食べにくくない?」


 雪奈からイチャイチャしてほしいと言うのは珍しいので少し驚きだ。

 なるべく沢山触れ合っていたいということだろうが、肩を抱いたまま食べるのは少し無理がある。


「大丈夫です。私の隣に座ってください」


 きちんと食べれるなら問題ないので、健斗は頷いて雪奈の横に座り、彼女の肩に手を置く。

 ギューッと引き寄せ、これ以上ないくらいに密着する。

 足も密着させるべく絡めると、閉じていた雪奈の足が少しだけ開く。

 左手で肩を抱くのには雪奈の右側にいるしかなく、右利き彼女はどうやって食べさせてくれるのか不思議だ。


「ん……」


 病院でしてくれたあーんではなく、雪奈はおかずである唐揚げを端で摘まんで健斗の口ではなくて自分で咥えた。

 ゆっくりと顔を近づけてくるし、口移しで食べさてあげたいということだろう。


「んん……」


 唐揚げが大きくなかったため、食べたついでに軽くキスをしといた。

 頬を赤くしながらも、雪奈は食べさせられて嬉しかったのか笑みを浮かべている。

 本当に可愛く、今日から毎日ずっと一緒にいれると思うと嬉しい。


「口移しは別のも食べたくなっちゃうよ」

「あ、んん……」


 食べたいのを求め、健斗は雪奈にキスをする。

 ご飯の時間だが雪奈は一切抵抗することもなく、むしろこちらに体重を預けてきた。

 好きな人にならいつどこでも求められるのは構わない、と思っていそうな顔だ。


「健斗くんは本当にエッチですね。でも、エッチになるのは私の前だけ、ですよ?」

「わかってるよ」


 悶々とした気持ちのまま、健斗は口移しでご飯を食べた。


☆ ☆ ☆


「んん、んちゅ……」


 ご飯を食べ終わってすぐに、健斗はソファーに雪奈を押し倒してキスをした。

 せっかく作ってくれた料理を冷まさないために先ほどはキスで我慢したが、今は理性を働かせなくても大丈夫だ。


「キスしてる時も俺のこと見ててよ」

「はい。んん……」


 今までは瞼を閉じてキスしていた雪奈であるが、健斗に言われて見つめながらのキス。

 顔が近いから物凄く恥ずかしいのか、雪奈の顔が見たのとがないくらいに真っ赤に染まっている。

 雪奈の口から漏れる甘い声と吐息のせいで、キスを止めることが出来ない。

 もっとキスをして脳まで蕩けさせたい気持ちでいっぱいだ。


「健斗、くん……」


 いっぱいキスをされた雪奈の瞳は、少し視点が定まっていないようだった。

 ここ数日キスを沢山したからテクニックが磨かれたのか、本当に雪奈を蕩けさせてしまったらしい。

 蕩けている雪奈も可愛く思う。


「健斗くんはキスが上手い、です」

「良かった。下手なままだと雪奈が嫌だろうし」


 これからも沢山するのだし、上手くなってもっとキスをしたい。


「私のことを想ってくれているのですね。嬉しいです。でも、私は健斗くんが下手であっても離れませんから」


 頬を赤らめてギュッと胸元辺りの服を掴んでくる雪奈は本当に可愛く、まるで天使のようだ。

 今から純粋な雪奈を汚すことになるが、本人が抱かれてもいい、と言っているのだし、何もしないなんて無理な話。

 たまに読むラブコメ漫画の主人公は、ヒロインと二人きりでいても手を出すことがないから本当に不思議に思う。

 現実の男なら可愛い女の子と二人きりでいたら手を出すのが普通だ。

 女の子は気になる異性じゃないと二人きりになることなんて滅多にないだろうし、むしろ男性から手を出さなかったら自分に魅力がないじゃないか? と思わせてしまう可能性がある。

 相手に好意があるとわかっているので、手を出すのは当たり前のことだ。

 一緒にいる人が既婚者だったり彼氏がいる、という場合は話が別になるが。


「キス以外も上手くなるさ」

「ふふ。はい」


 セフレの関係である以上、テクニックがないと退屈させてしまうかもしれない。

 雪奈とセフレになってからスマホで色々と体験談を調べたのだが、下手だと好きな気持ちはあっても飽きられてしまうようだ。

 好きだから付き合っているだけで、テクニックがないとエッチなことはノーサンキューらしい。

 下手のままなら破局、ということもあるとのことなので、出来ることなら上手くなった方がいいだろう。


「そろそろベッドに行こうか」

「ま、まだお風呂に入っていませんよ」


 匂いが気になるのか、雪奈はお風呂に入りたいようだ。


「だーめ。我慢出来ないから」

「きゃ……」


 華奢な体である雪奈を抱き上げ、健斗は寝室に向かう。

 いわゆるお姫様抱っこというやつだ。


「骨折してるのに大丈夫ですか?」

「大丈夫。お風呂はした後ね」

「はい」


 本当は右手首に痛みはあるが、今さら下ろしたらカッコ悪いので我慢する。

 相手の好意を利用してセフレを作っている時点でカッコつけても意味はないかもしれないが。

 寝室の扉は雪奈に開けてもらい、ベッドに押し倒して彼女にキスをした。

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